学術研究・専門・技術サービス業で2.95、製造業で2.41。従業員エンゲージメントを4段階で聞いた2026年3月の調査で、業種の上と下にはこれだけの差がついた。回答したのは全国の1万576人。全体の平均は2.58で、尺度の中間値は2.5だった。
16業種を集計して、数値が出ているのは3つ
報道発表に載っているのは上位2業種と下位1業種だけである。
| 業種 | 従業員エンゲージメント |
|---|---|
| 学術研究・専門・技術サービス業 | 2.95 |
| 農業・林業・漁業ほか第一次産業 | 2.80 |
| 全体 | 2.58 |
| 製造業 | 2.41 |
残る13業種の値は、詳細レポートを取り寄せないと分からない。製造業が下位に来たのは3年続けてで、この点だけは経年で書かれている。表の4行から読めるのは、上位2業種が全体平均を0.22から0.37ポイント上回り、製造業が0.17ポイント下回った、というところまで。
本文の内容を自分の職場に当てはめるなら、設問に答えたほうが早く済みます。
設問に答える0.54という差は、4点の物差しの上で見る
尺度は4件法。「4:そうだ/3:ややそうだ/2:ややちがう/1:ちがう」の4段階で、中間値は2.5と説明されている。2.41は中間値をわずかに下回る位置にあり、2.95は中間値と上限の4のあいだのちょうど半分あたりに来る。目盛りの幅が3しかない物差しなので、0.54を100点満点の54点ぶんの差として読むと、実際の3倍ほどに膨らむ。
指標の作りも見ておきたい。この調査で従業員エンゲージメントと呼ばれているのは、ワークエンゲージメントと組織コミットメントの2つを合わせた値で、全体ではそれぞれ2.67と2.49だった。前者は仕事そのものへの向き合い方を、後者は勤め先との結びつきを聞いている。2つを1つの数にまとめているぶん、業種の順位が入れ替わった理由が仕事の側にあるのか会社の側にあるのかは、合成後のスコアからは取り出せない。
ワークエンゲージメントの内訳は、活力2.54、熱意2.79、没頭2.69。3つのうち活力がいちばん低い。
電気・ガス・熱供給・水道業は、前年から0.14下がった
業種の順位より、同じ業種の前年差のほうが動く。電気・ガス・熱供給・水道業のワークエンゲージメントは前年から0.14ポイント下がり、内訳では経営層との信頼関係が0.27、キャリア形成が0.30の下げ幅だった。
全体では逆方向に動いている。活力の平均は2025年の2.47から2026年の2.54へ0.07上がった。同じ年に一方が下がり他方が上がっているので、業種の平均を全体の動きから推し量ることはできない。
業種以外の区分でも、同じくらいの幅が出る
勤め先の従業員規模で切ると、2023年から2026年の4年でこう動いた。50人未満は2.72から2.87へ0.15上がり、3,000人以上は2.60から2.68へ0.08上がり、50〜99人は2.61から2.56へ0.05下がっている。いちばん上と下の差は0.31。業種で見えた0.54には及ばないものの、無視できる幅ではない。
年代でも動く。30歳代は会社レベルの資源が前年から0.44落ちた。逆に20歳代以下では、キャリア形成が2023年の2.41から2026年の2.68へ、公正な人事評価が2025年の2.49から2026年の2.73へ上がっている。雇用形態で見ると、派遣で働く人の「個人の尊重」は2023年の2.29から2026年の2.19まで、4年かけて下がり続けた。
業種を1つ選んで比べるより、規模・年代・雇用形態のどれで切るかのほうが、値の大きさを左右している。
この0.54で言えないこと
業種ごとのサンプルサイズが公表されていない。1万576人を16業種に均等に割れば1業種あたり660人ほどになる計算だが、実際の配分は書かれていないので、就業者の少ない第一次産業のような区分で母数が小さくなっている可能性がある。ここは推定。
対象はインターネット調査のモニター登録者で、全国の15歳から79歳の男女である。実際に働いている人だけを抜き出した集計かどうかも、報道発表からは読み取れない。
区分は勤め先の業種であって、職種ではない。製造業の会社で経理をしている人も、研究をしている人も、同じ製造業の1票として数えられる。だから2.41を「ものづくりの現場の値」と読むと、指しているものが変わる。
そして、この調査の「エンゲージメント」は複数の設問から作られた合成スコアで、他社の調査が同じ名前で出している率とは別のものを測っている。日本のエンゲージメント推移で扱ったギャラップの8%は「エンゲージしている人の割合」で、単位からして違う。並べて引き算はできない。
業種の平均は、自分の職場の値ではない
2.95も2.41も、業種にいる人たちの平均である。自分がいる職場が業種の平均のどちら側にあるかは、この表を眺めても分からない。分かるのは、業種の違いで説明がつく幅がせいぜい0.5ポイントぶんだった、ということだけ。
手元で数えられるものに割ったほうが早い。この1か月で、仕事のやり方について意見を求められた回数。担当範囲が変わる決定を、何日前に知らされたか。困ったときに相談した相手の人数。3つとも業種の平均には出てこない値で、4週ぶん書き留めると自分の職場の輪郭が出る。
業種で説明できるのは、ここまで。