顧客等からの著しい迷惑行為について相談があった企業は、医療・福祉で53.9%、卸売業・小売業で40.6%。全体では27.9%だった。厚生労働省の委託で2023年12月に7,780社が答えた調査の値である。業種の幅は13.3ポイント。
業種別ハラスメント相談は53.9%
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53.9%はカスハラの数字で、種類を変えると先頭も変わる
同じ調査は、ハラスメントの種類ごとに相談の有無を聞いている。過去3年間に相談があったと答えた企業の割合は、パワハラが64.2%、セクハラが39.5%、顧客等からの著しい迷惑行為が27.9%。同じ7,780社に同じ形式で聞いて、この開き。冒頭の53.9%は、いちばん下の27.9%を業種で割ったときの医療・福祉の値である。
先頭に立つ業種も入れ替わる。パワハラでは金融業・保険業の76.9%が最も高く、セクハラでも同じ業種が68.6%で最も高い。医療・福祉が先に来るのは、顧客等からの著しい迷惑行為だけ。業種別の並びはパワハラ相談、業種別で76.9%で扱った。
「ハラスメントの多い業種」という一語が指す先は、どの種類を数えたかで動く。自分の職場で起きていることがどれに当たるのかを先に決めないと、どの表を見ればいいかも決まらない。
業種別に数値が出ているのは、上から7つ
| 業種 | 相談があった企業の割合 |
|---|---|
| 医療、福祉 | 53.9% |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 46.4% |
| 不動産業、物品賃貸業 | 43.4% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 42.3% |
| 複合サービス事業 | 41.1% |
| 金融業、保険業 | 41.0% |
| 卸売業、小売業 | 40.6% |
| 全体 | 27.9% |
7業種すべてが全体の27.9%を上回っていて、上から順に並べると、客や利用者と直接やりとりする時間の長い仕事がひとまとまりになって出てくる。医療・福祉だけが5割を超えた。2位以下は40%台に固まっている。
働く人に聞くと、順位が入れ替わる
同じ調査は、企業とは別に労働者8,000人にも聞いている。過去3年に顧客等からの著しい迷惑行為を受けたと答えた人は、全体で10.8%。
| 業種 | 受けたと答えた人の割合 |
|---|---|
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 16.6% |
| 卸売業、小売業 | 16.0% |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 16.0% |
| 複合サービス事業 | 15.5% |
| 医療、福祉 | 15.1% |
| 全体 | 10.8% |
企業側で53.9%と突出していた医療・福祉が、労働者側では15.1%で5番目に下がり、代わりに企業側で6番目だった生活関連サービス業・娯楽業が先頭に来る。金融業・保険業にいたっては、企業側で41.0%あるのに労働者側の上位5業種に顔を出さない。
2つの表は別のことを数えている。企業側の割合が示すのは、相談窓口に相談が届いたかどうか。労働者側は、本人が経験したかどうか。あいだに、窓口があるか、あることを知っているか、使う気になるか、という3つの関門が挟まっているので、企業側の高さを被害の多さとしてそのまま読むと、窓口が機能している職場ほど数字が悪く見えることになる。
業種の差より、従業員規模の差のほうが大きい
同じ「相談があった企業の割合」を規模で切ると、99人以下が13.5%、1,000人以上が43.9%だった。30.4ポイントの開き。業種でついた13.3ポイントの2倍以上になる。
予防・解決に向けた取り組みを実施していると答えた企業は全体で64.5%あり、これも99人以下の57.5%から1,000人以上の69.8%まで規模で動く。業種を選ぶより、規模で切るほうが値は動く。
起きていることと、相談されることのあいだ
該当事例があったと答えた企業は86.8%にのぼる。相談があったと答えたのは27.9%。差は58.9ポイント。
内容の内訳を企業側の集計で見ると、継続的・執拗な言動が72.1%、威圧的な言動が52.2%、精神的な攻撃が44.7%で、行為者と被害者の関係は顧客等から自社の従業員へというものが91.6%を占めた。企業が挙げた被害は、通常業務の遂行への悪影響が63.4%、労働者の意欲やエンゲージメントの低下が61.3%。
受けた側の行動も聞かれている。何もしなかった人が35.2%。その理由でいちばん多かったのは「解決にならないと思った」で56.1%だった。勤務先が認識していたと答えた人は59.2%いて、そのうち認識したあとに特に何もしなかったという回答が29.8%ある。
この数値は、カスハラ対策が義務になる前に取られた
2025年6月11日に改正労働施策総合推進法が公布され、顧客等の言動に起因する問題について、事業主が雇用管理上の措置を講じることが義務づけられた。施行は2026年10月1日。措置の中身を定めた指針は2026年2月26日に告示されている。労働者を1人でも雇っていれば、業種も規模も問わず対象に入る。方針の明確化と周知、相談窓口をあらかじめ定めて知らせること、相談があったときの事実確認と被害を受けた人への配慮が、その柱になっている。
この記事の数値は2023年12月から2024年1月にかけて集められたもので、義務化より前の時点。顧客等からの著しい迷惑行為の相談があった企業が、99人以下で13.5%、1,000人以上で43.9%と、規模で割れていた状態を写している。施行後に同じ質問をすれば、相談があったと答える企業の割合は上がる方向に動く。ここは推定。
窓口に何を持ち込むかを先に整理しておきたいなら、社内と社外の相談先をハラスメントを誰に相談するかに並べてある。
この業種別で言えないこと
企業側の割合は相談窓口の運用に左右される。窓口が無い職場では、何が起きていても相談件数は0になる。53.9%と40.6%の差のうち、どこまでが起きた量の差で、どこまでが相談経路の差なのかは、この集計からは分けられない。
業種ごとに何社が答えたのかも分からない。7,780社を業種に割った内訳が公表資料から読み取れないため、母数の小さい業種で値が振れている可能性は残る。ここは推定。
企業調査は郵送で2万5,000社に送って7,780社が答えた回答率31.1%の調査なので、ハラスメント対策に関心のある企業ほど答えやすかったとすれば、取り組みの実施率は上振れしやすい。労働者調査のほうはインターネット。対象は20歳から64歳の男女で、経営者・役員・公務員は入っていない。
区分は勤め先の業種であって、職種ではない。医療・福祉の53.9%には、窓口で患者や利用者に接する人も、事務室で経理をしている人も、同じ1社の中に数えられている。
報告書には2025年8月15日付の正誤表が別ファイルで出ている。個別の数値を引くときは、そちらを先に。
業種で説明できる幅は、思ったより狭い
53.9%も10.8%も、業種や全国の平均である。自分の職場がその平均のどちら側にあるかは、この表を眺めても出てこない。分かるのは、業種の違いで説明がつく幅がせいぜい13ポイントぶんで、規模の違いのほうが倍近く効いていた、というところまで。
手元で数えられるものは、もっと近くにある。この3か月で、客や取引先とのやりとりで対応に困った場面が何回あったか。そのうち上司に伝えたのは何回か。伝えたあと、勤め先が何をしたか、あるいは何もしなかったか。
3つとも業種の平均には出てこない値で、書き留めておくと、次に相談するときに「よくあることです」で流されにくくなる。





