全国の労働局に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」の相談は、2025年度に5万5,614件。前の年度から1.1%増えて、14年連続で相談内容の最多だった。ただし、この件数を10年ぶん並べて右肩下がりだと読むことはできない。2022年度に、数え方そのものが変わっているから。
年度別の件数と、内訳に占める割合
| 年度 | いじめ・嫌がらせ | 内訳延べ件数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 87,570件 | 342,966件 | 25.5% |
| 2020年度 | 79,190件 | 347,546件 | 22.8% |
| 2021年度 | 86,034件 | 352,914件 | 24.4% |
| 2022年度 | 69,932件 | 316,815件 | 22.1% |
| 2023年度 | 60,125件 | 314,049件 | 19.1% |
| 2024年度 | 54,987件 | 316,072件 | 17.4% |
| 2025年度 | 55,614件 | 327,359件 | 17.0% |
2019年度の8万7,570件から2024年度の5万4,987件まで、6年で3万件以上減った形になっている。減り方がいちばん大きいのは2021年度から2022年度で、1年で1万6,102件。
本文の内容を自分の職場に当てはめるなら、設問に答えたほうが早く済みます。
設問に答える2022年度の落差は、法律が変わった跡
厚生労働省の統計には注記が付いている。2022年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴って、同法に規定する職場におけるパワーハラスメントに関する相談は同法に基づいて対応されることになり、「民事上の個別労働紛争」のいじめ・嫌がらせの相談件数には計上されなくなった。
つまり2021年度の8万6,034件と2022年度の6万9,932件は、同じものを数えた値ではない。件数が減ったのは、パワハラの相談が減ったからではなく、一部が別の枠で受けられるようになったから。ここは、この統計を引くときにいちばん間違えやすいところ。
同じ年度に、助言・指導の申出とあっせんの申請も落ちている。
| 年度 | 助言・指導の申出 | あっせんの申請 |
|---|---|---|
| 2019年度 | 2,592件 | 1,837件 |
| 2020年度 | 1,831件 | 1,261件 |
| 2021年度 | 1,689件 | 1,172件 |
| 2022年度 | 983件 | 859件 |
| 2023年度 | 960件 | 800件 |
| 2024年度 | 960件 | 716件 |
| 2025年度 | 1,163件 | 868件 |
助言・指導は1年で706件、あっせんは313件減った。3つが同じ年度に揃って落ちるのは、相談する人が減ったときの動き方というより、数える枠が変わったときの動き方に近い。
2025年度は、3つとも増えた
相談が627件、助言・指導の申出が203件、あっせんの申請が152件。制度が変わった2022年度以降で、3つが揃って増えたのは2025年度が初めてになる。
とはいえ、比べられるのは2022年度からの4年ぶんしかない。1年の増加を傾向と呼ぶには短い。
相談の総数のほうは、動いていない
総合労働相談の件数は、2020年度が129万782件、2021年度が124万2,579件、2022年度が124万8,368件、2023年度が121万412件、2024年度が120万1,881件、2025年度が119万8,010件。18年連続で100万件を超えている。
このうち民事上の個別労働紛争にあたる相談は、2025年度で27万7,053件だった。相談そのものの量は高止まりしていて、内訳の並び順が入れ替わっている、という読み方になる。
この推移で言えないこと
数えているのは、労働局の窓口に届いた相談の件数である。職場で起きた件数ではない。窓口の存在を知っていて、そこまで行った人だけが、この数字に入る。
1回の相談が複数の内容にまたがる場合、内容ごとに件数が計上される。だから内訳の延べ件数は、相談した人の数より多くなる。2025年度でいえば、民事上の相談27万7,053件に対して内訳の延べは32万7,359件。
2022年度からは、パワーハラスメントの相談が労働施策総合推進法の枠で扱われている。この記事が追っているのは、そこから外れた側の数字だけ。全体を見るには、同法に基づく相談の集計を別に当たる必要がある。
相談したあとどうなったかも、件数からは出てこない。あっせんを申請した868件のうち、話がまとまったのが何件かは、別の集計を見ることになる。
自分の職場で数えられるもの
5万5,614件は全国の合計で、自分の職場の状態を表す値ではない。窓口に届いた数である以上、届かなかったぶんは、どの年度の数字にも入っていない。
手元では、もっと近いところを数えられる。この3か月で、言われ方が気になった場面が何回あったか。そのとき同席していた人は何人いたか。誰かに話したのは何回で、話したあと何が変わったか。
日付と一緒に書き留めておくと、あとで相談するときに「いつ、何回」で説明できる。件数の話は、そこから始まる。