通勤手当の平均11.7千円の読み方

通勤手当などの1人平均支給額は11.7千円。令和元年11月分の数字で、常用労働者30人以上の企業を対象にした厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」による。1か月を超える期間を対象に支給されている場合は1か月分に換算した額で数えているので、6か月定期で受け取っている人も同じ尺度に乗っている。

ただしこの11.7千円から、自分の額が高いか低いかは決まらない。通勤手当の額は通勤距離と経路で動くもので、平均の近くに人が集まっているとは限らない。

11.7千円は「支給された人」の平均

この数字は、支給された労働者1人当たりの平均である。通勤手当を支給していない企業で働く人は、分母に入っていない。定期乗車券や回数券などによる現物支給も含む。

支給した企業の割合は諸手当の中でいちばん高く、その数字は通勤手当とは、支給義務のない賃金に書いた。義務が無いにもかかわらず多くの企業が配っている手当で、1人当たりの額はこの11.7千円。

企業規模で3千円の幅

企業規模別の1人平均支給額は、1,000人以上が13.3千円、300〜999人が11.4千円、100〜299人が10.8千円、30〜99人が10.3千円。大きい企業のほうが高く、いちばん上といちばん下で3.0千円の差。

この差をどう読むかは、簡単ではない。大企業は都市部に事業所が多く、遠くから通う人の割合も違う。規模そのものが額を決めているのか、通勤距離の分布が違うのか、この調査だけでは分けられない。従業員30人の会社が都心の駅前にあって全員が自転車で通っていれば平均は下がるし、1,000人の会社が郊外の工場で片道30キロの車通勤が多ければ平均は上がるわけで、規模の列に並んだ数字の差には、立地と通勤手段の違いが混ざっている。

手当の中では、額の小さいほう

同じ表には他の手当の1人平均支給額も並んでいる(いずれも令和元年11月分、単位は千円)。

手当の種類 1人平均支給額
業績手当など(個人、部門・グループ、会社別) 52.2
役付手当など 41.6
特殊勤務手当など 25.0
技能手当、技術(資格)手当など 18.8
特殊作業手当など 14.4
通勤手当など(1か月分に換算) 11.7
精皆勤手当、出勤手当など 9.0

7区分のうち下から2番目。配っている企業がいちばん多い手当が、金額ではこの位置にある。支給する企業の数と、1人当たりの額は、別の話。

5年で0.2千円

前回の調査(平成27年調査、平成26年11月分)の1人平均支給額は11.5千円だった。令和元年11月分で11.7千円。5年で0.2千円、2%ほどの上昇である。

運賃の改定や通勤距離の変化を考えると、ほとんど動いていないと読むのが素直なところ。少なくとも、この5年で通勤手当が大きく増えた形跡は、この調査には出ていない。

平均の次に知りたい数字は、公表されていない

この調査の公表表で通勤手当の1人平均支給額が分かれるのは、企業規模までである。産業別の集計は出ていない。分布も出ていない。だから次のような問いには、この統計では答えられない。

  • 月8,000円は下から何番目くらいか(分位の情報が無い)
  • 製造業と情報通信業でどちらが高いか(産業別の集計が無い)
  • 支給額が0円の人を含めた平均はいくらか(支給された人だけの平均である)

平均が1つ分かっても、自分の位置は分からない。分かるのは、自分の額が全国の平均と比べて上か下かという1ビットの情報だけ。それでも、規程を読む前の目安としては使える。もし自分の額が平均の半分で、片道の通勤距離が30キロを超えているなら、規程の上限に当たっているか、支給の基礎が距離の区分で決まっている可能性があるので、次に開くのは統計ではなく自社の賃金規程である。

もう1つの「平均」。平均賃金には通勤手当が入る

通勤手当の平均を調べている人の一部は、別の問いを持っている。労働基準法12条の平均賃金に通勤手当を含めるのか、という問い。

含める。平均賃金は算定事由の発生した日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割って出す。賃金締切日がある場合は締切日ごとに、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み、税金や社会保険料などを控除する前の賃金の総額で計算すると厚生労働省の労働局が説明している。

ここが残業代の計算と逆になる。割増賃金の基礎となる賃金からは、通勤手当を除外できると労働基準法37条で定められていて、家族手当や住宅手当などと並んで除外できる7つの賃金のひとつに通勤手当が挙がっている。いっぽう解雇予告手当や休業手当の基礎になる平均賃金には、通勤手当が入る。同じ手当が、計算の目的によって入ったり出たりする。

どう測るか

自分の通勤手当を平均と比べるなら、並べる前に3つ揃えておく。

  1. 自分の額を1か月分に換算する(6か月定期なら6で割る)
  2. 現物支給の分を金額に直す(定期券そのものを渡されている場合)
  3. 片道の通勤距離と使っている交通手段を書き出す

3つめが要るのは、平均との差が距離で説明できるかを見るためである。片道3キロの自転車通勤で11.7千円を下回っているのは、距離のとおり。片道40キロで平均を下回っているなら、規程の上限か計算の基礎を確かめる番。

自分の職場で確かめられること

比べる相手は全国平均よりも、同じ職場の規程である。規程に書かれた支給の基礎と上限を読み、自分の経路での額を計算して、支給額と合っているかを見る。合っていないなら届出の内容が古い可能性がある。

通勤にかかっている時間も、金額とは別に記録しておきたい。平均額に届いていても片道90分なら、負担の中身は金額では表せていない。4週ぶん記録すると、自分に合う通勤の条件を金額と時間の両方で言える。

出典

  1. 令和2年就労条件総合調査の概況(厚生労働省、令和元年11月分、常用労働者30人以上の企業。諸手当の種類別1人平均支給額、主な用語の定義)
  2. 同 統計表 第19表 諸手当の種類別支給された労働者1人平均支給額(令和元年11月分。企業規模別、平成27年調査との比較)
  3. 平均賃金の計算方法(厚生労働省 宮城労働局。労働基準法12条の賃金の総額に含めるもの)
  4. 労働条件相談Q&A 割増賃金の基礎となる賃金(厚生労働省 宮崎労働局 労働基準部)