通勤手当の上限は3つある

通勤手当の「上限」は、少なくとも3つある。所得税がかからなくなる額の上限、勤務先の賃金規程が決めている支給額の上限、そして通勤手段ごとに定められた定額の上限。検索して最初に出てくる15万円は1つめの話で、自分の口座に入る額の天井ではない。

15万円は税の上限。支給額の上限ではない

電車やバスなどの交通機関だけで通勤する場合、非課税になるのは最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額で、それが1か月15万円を超えるときの限度額が15万円(令和8年4月1日現在の法令等)。交通機関と自動車などを併用する場合も、合計で1か月15万円までが非課税の範囲になる。

この15万円は、支給する側に「ここまで出しなさい」と求める数字ではない。通勤手当に支給義務が無いのだから、額にも上限にも法律上の決まりは無い。義務が無いのに支給企業割合が9割を超える理由は通勤手当とは、支給義務のない賃金に書いた。

自動車や自転車の上限は距離で動く

交通用具を使う人の非課税限度額は、片道の通勤距離の区分で決まる。片道2キロメートル未満は非課税の部分が無く全額課税、2キロメートル以上10キロメートル未満で4,200円、いちばん遠い95キロメートル以上の区分で66,400円。駐車場を使う場合は、一定の要件を満たすものについて駐車場料金相当額を加算でき、その加算の上限は月5,000円。

上限を超えた分は、2つの道に分かれる

どちらの上限を超えたのかで、起きることが違う。

税の上限を超えた場合、超えた部分は給与として課税される。通勤手当などを支給した月の給与に上乗せして、所得税および復興特別所得税が源泉徴収される。手当そのものは減らない。減るのは手取り。

規程の上限を超えた場合は、差額が自分の負担になる。月の定期代が3万円で規程の上限が2万円なら、1万円を自分で払う。この1万円は給与明細のどこにも出てこないので、気づけるのは自分の口座の側だけである。年にすると12万円の支出が、通勤という名目でどこにも記録されずに通勤定期券の代金として出ていき、転居や異動の判断材料からも落ちていく。

公の勤め先の上限は、1箇月150,000円

勤務先の規程を読むとき、比べる相手があったほうが位置が分かる。国家公務員の通勤手当は、交通機関等の利用者には6箇月定期券等の価額により支給され、自動車等の交通用具使用者には通勤距離に応じた月額2,000円から66,400円が毎月支給される(令和8年4月現在)。駐車場等の利用者には、利用料金等の価額が上限5,000円で加わる。

そして支給限度額は1箇月当たり150,000円。所得税の非課税限度額と同じ額である。支給の対象になるのは、通勤のため交通機関等を利用または自動車等を使用することを常例とする職員で、片道2キロメートル以上という条件が付く。

ここから読み取れることが2つある。1つは、交通用具の距離区分の額が所得税の非課税限度額とそろえられていること。もう1つは、上限を定めている制度でも、片道2キロメートル未満は対象にしていないこと。

「上限いくらが普通か」は、統計から出てこない

通勤手当の支給企業割合や1人平均の支給額は公的統計にある。いっぽう、規程に書かれた上限額の分布を集めた公的統計は見つからない。平均支給額が分かっても、それは実際に支給された額の平均で、規程の天井の高さではない。

だから「上限2万円は低いほうか」という問いには、統計では答えられない。答えられるのは、自分の実費がその上限に収まっているかどうかだけ。収まっていないなら、その差額は毎月出ていく。

どう測るか

自分の職場の上限は、賃金規程の5か所を見れば分かる。

  • 上限額と、その単位(1か月か、6か月定期の総額か)
  • 上限が適用される雇用形態(正社員だけか、有期やパートも同じ上限か)
  • 通勤手段ごとの上限の違い(交通機関、自動車、自転車、併用)
  • 上限を超えた分の扱い(自己負担か、別の手当で補われるか)
  • 上限額の改定の時期と、住所が変わったときの届出の期限

上限額だけを覚えても足りない。単位を確かめないと、6か月で33万円と月5万5千円を同じ額だと思い込む。とくに6か月定期での支給は、支給月だけ手取りが大きく動くため、月単位の家計で見ている人が自分の通勤にかかっている額を実際より低く見積もる原因になり、上限との距離も見えなくなる。確かめるのは単位から。

自分の職場で確かめられること

給与明細の通勤手当の額と、自分が実際に払っている定期代やガソリン代を並べる。差がゼロなら上限に当たっていない。差があるなら、その額が毎月の自己負担。

もう1つ測れるのは、上限に当たるまでの余白である。引越しや異動で経路が変わったとき、どこまでなら自己負担が出ないか。その境目を先に知っておくと、住む場所の選択肢を金額で絞れる。通勤の時間も4週ぶん記録しておくと、金額と時間の両方で条件を比べられる。

出典

  1. No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当(国税庁タックスアンサー、令和8年4月1日現在法令等)
  2. No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当(国税庁タックスアンサー、令和8年4月1日現在法令等。片道の通勤距離別の非課税限度額と駐車場料金の加算)
  3. 国家公務員の諸手当の概要(人事院、令和8年4月現在。通勤手当の支給額と支給限度額)