出向期間の上限を定めた条文は無い。何年までと決めているのは法律の側ではなく、会社の就業規則の出向規程と、会社どうしが結ぶ出向契約だ。だから「どのくらい」の答えは、自分の会社の書面にある。
厚生労働省の「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック」第2版が載せた事例では、出向期間は2か月から24か月に散っていた。
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出向期間の上限を定めた条文は無い。何年までと決めているのは法律の側ではなく、会社の就業規則の出向規程と、会社どうしが結ぶ出向契約だ。だから「どのくらい」の答えは、自分の会社の書面にある。
厚生労働省の「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック」第2版が載せた事例では、出向期間は2か月から24か月に散っていた。
ハンドブックが載せた出向規程の参考例は、出向期間をこう定めている。出向者の出向期間は、●年を超えない範囲で当社が個別に決定した期間とする。ただし、出向目的の達成状況や業務上の必要に応じ、出向期間を短縮又は延長することがある。
●の欄は空白のまま示されている。ここを埋めるのは各社だ。自分の会社の出向規程を開いて、この欄に何年と書かれているかを見る。年数の記載が無い規程もある。
期間が書かれているかどうかは、出向を命じる根拠の話にもつながっている。ハンドブックは、在籍型出向を命じるには労働者の個別的な同意を得るか、または出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが就業規則や労働協約等によって労働者の利益に配慮して整備されている必要があるとされている、と書く。期間と復帰の仕方は、この「整備されている」の中身に並んで出てくる項目だ。
同じハンドブックが紹介したコロナ禍の出向事例8件の出向期間を並べると、次のようになる。
| 出向期間 | 件数 |
|---|---|
| 2か月 | 1件 |
| 6か月 | 1件 |
| 12か月 | 4件 |
| 24か月 | 2件 |
最も多いのは12か月。事例は、雇用維持を目的とした出向から選ばれたもので、人材育成やグループ内の人事交流を目的とした出向は入っていない。8件という数も、分布として読むには少ない。
24か月が上限のように見えるのには理由がある。当時の産業雇用安定助成金は、出向中に必要な経費の一部を最長2年まで助成する設計だった。助成制度を活用する場合に締結する労使協定では、各出向労働者の出向期間を1か月以上2年以内に限って定めることとされていた。助成の枠が、期間の設定に効いていたという推定が立つ。助成制度は改廃されるので、いまの扱いは労働局で確かめることになる。
出向契約書の参考例は、期間が動くときの手順を書いている。出向期間の短縮又は延長をしようとする場合は、甲乙協議の上、書面による合意により決定し、甲は決定内容を出向者に通知するものとする。甲が出向元、乙が出向先だ。
読む順に並べると、決めるのは会社2社で、本人には通知が届く。本人の同意を取る手順は、この参考例には入っていない。だから、出向先での仕事が区切りを迎えたかどうかとは別の事情で期間が延びることがあり、延長の可能性と、延長するときに誰がどの順で判断するのかは、打診の段階で出向元に聞いておく項目になる。聞く相手は出向元だ。
契約で定めておくことが考えられる事項として、ハンドブックは「途中解約」も挙げている。期間の途中で出向が終わる経路も、契約の側に用意されている。
出向契約に明確な定めがない場合、権利義務はどう振り分けられるか。ハンドブックは、出向元に残るものと出向先に移るものを分けて示している。
復帰命令については参考として判例が引かれている。出向時に復帰はないという合意が成立したといえる特段の事由がない限り、出向元企業は、労働者の同意なく出向元企業への復帰を命じることができるとされている(昭和60年4月5日の判決、民集39巻3号675頁)。
戻る時期を決めるのも出向元の側、ということになる。出向先での仕事が途中でも、復帰の命令は本人の同意なしに出せる。期間を聞くときに合わせて確かめるなら、復帰後の職務と賃金がどうなるかのほうだ。助成制度を活用する場合の労使協定では、出向終了後に出向元事業所へ復帰する予定であることと、復帰した際の職務や賃金等について定めることとされていた。
参考例の出向契約書は、出向者を出向元で休職扱いとしたうえで、出向者の出向期間は甲の勤続年数に通算すると書いている。出向規程の参考例も同じ扱いで、昇進及び昇給については当社に勤務した場合と同等に取り扱うとしている。
年次有給休暇は出向元の勤続年数に基づいて付与され、労働基準法第39条第7項による時季指定義務は出向先が履行する。出向規程の参考例にはそう書かれている。有給の残日数が出向で切れるわけではない、という意味になる。
いずれも参考例で、各社の規程がこの形とは限らない。通算の記載が無い規程なら、出向期間が長いほど差が出る。退職金や昇給の計算に勤続年数を使う会社では、ここが効く。
参考例の出向契約書には、乙は、出向者を乙以外の会社へ出向させてはならないという条項がある(第5条、二重出向の禁止)。出向先からさらに別の会社へ回されることを、契約の側で止めている。
出向契約の有効期間は、出向期間が終了するまで。期間が終われば契約も終わる形だ。
期間の数字だけでは、戻ったときに何が変わったかは分からない。動くのは指示の出方、確認の頻度、裁量の広さ、人と接する量。会社をまたぐと、これらがまとめて動く。
いまの職場の条件を12の軸で記録しておくと、出向先の条件と並べて見られる。出向が1年でも2年でも、前の状態を残しておけば、戻ったあとに差を読める。異動の種類ごとの違いは人事異動の拒否、異動の種類で変わるに書いた。
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