出向の種類は、契約と目的で分かれる

出向の種類を分ける軸は、雇用契約がいくつ残るかだ。元の会社との契約が残って出向先とも結ぶ形が在籍型出向、元の契約が終わって出向先と結び直す形が転籍(移籍型出向)。社内で同じ「出向」と呼ばれていても、この2つは戻る先の有無から違う。

そのうえで、目的による区分、出向先との資本関係による区分、業種が同じかどうかの区分が重なる。辞令に書かれた言葉だけでは、どの区分に入るかは決まらない。

雇用契約の数で、まず2つに分かれる

厚生労働省の「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック」第2版は、在籍型出向を、出向元企業と出向先企業との間の出向契約によって、労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結び、出向先企業に一定期間継続して勤務することと定義している。契約は2本。

転籍のほうは、広島県の労働相談Q&Aが、今までの会社との雇用関係を終了させ、新たに別の会社と雇用関係を結ぶことと説明している。契約は1本に戻る。

同意の要件も、この2つで分かれる。埼玉県の労働相談の解説は、出向を命じるには労働者の個別的な同意か、就業規則や労働協約上の根拠が必要とし、転籍については原則として個別の同意が必要で、就業規則や労働協約を根拠に命じることはできないとしている。自分の雇用契約が残るかどうかを辞令で確かめるだけで、断れる余地の広さが変わる。

目的の区分は、法律の判断に使われている

出向の目的は、上位の解説記事では人材育成・雇用調整・人事交流などと並べられる。ハンドブックの区分は、もう少し手前の役割を持っている。

在籍型出向は、形としては労働者供給に該当する。労働者供給を業として行うことは職業安定法第44条が禁じているが、ハンドブックは次のいずれかの目的があるもの等は基本的に「業として行う」ものではないと判断されるとしている。

  1. 労働者を離職させずに関係会社で雇用機会を確保する
  2. 経営指導、技術指導を実施する
  3. 職業能力開発の一環として行う
  4. 企業グループ内の人事交流の一環として行う

コロナ禍で事業を一時的に縮小した企業が雇用維持のために行う出向は、基本的に1に類するものとして扱われるとも書かれている。つまりこの4つは、ただの分類ではない。適法に行える出向の輪郭でもある。

打診の場で「この出向の目的は何か」を聞く意味は、ここにある。答えが4つのどれにも寄らないとき、確かめる先は労働局だ。

出向先との資本関係で、もう一段

グループ内かグループ外かという区分は、助成制度の設計に出ていた。ハンドブックが載せた産業雇用安定助成金では、出向初期経費の助成は企業グループ内出向の場合は支給されず、出向運営経費の助成率も企業グループ内出向では2/3(中小企業以外は1/2)と、それ以外の場合より低く置かれていた。

事例の側にもこの区分がある。ハンドブックの事例7は、道路旅客運送業から道路旅客運送業への企業グループ内(子会社間)出向だった。観光バスの運転業務が減った会社から、路線バスの会社へ。グループ内の人事交流として行う出向は、上の4区分の4番にあたる。

助成制度は改廃されるので、いまの扱いは労働局で確かめる。区分そのものは残る。

同業種か異業種か、それと会社の規模

ハンドブックは事例の傾向を3つ書いている。新型コロナウイルスが同業種の企業の景況に影響を与えていることから、異業種の企業へ出向している事例が見られること。異業種であっても、仕事の内容に親和性があることが多いこと。大企業だけでなく、規模の小さな企業でも出向に取り組んでいる事例が少なくないこと。

事例に添えられた企業規模は、29人以下から1万人以上まで散っている。飲食サービス業から警備業へ、宿泊業から飲食料品小売業へ、旅行業から児童福祉事業へ、鉄道業から老人福祉・介護事業へ。業種の組み合わせは、親和性のほうで選ばれていた。

異業種への出向なら、出向先で求められる技能が変わる。同業種なら、仕事の進め方の違いが残る。どちらに当たるかは、出向先の事業の種類を聞けば分かる。

休職扱いにしない形も、想定されている

在籍型出向では、出向期間中に出向元で休職扱いになるのが基本の形だ。ハンドブックの出向契約書の参考例も、出向者は出向期間中、出向元において休職扱いとすると書いている。

ただし助成制度の記載には、休職扱いとすることが定められているもの(部分出向である場合を除く)という括弧が付いている。出向元の仕事を一部続ける形も、制度の文面の中にはある。ハンドブックに部分出向の定義は載っていない。自分の出向がこの形に当たるかは、休職扱いになるかどうかで確かめられる。

二重出向については、参考例の出向契約書に条項がある。出向先は、出向者を出向先以外の会社へ出向させてはならない(第5条)。出向先からさらに回されることは、契約で止める形だ。

似ているが、出向の種類には入らないもの

ハンドブックのQ&Aは2つを分けている。

労働者派遣との違いは、雇用契約の相手だ。在籍型出向する労働者は、出向元企業と出向先企業の双方と雇用契約を結んでおり、出向先企業の指揮命令を受ける。派遣労働者は、派遣元事業主のみと雇用契約を結び、派遣先は派遣労働者とは雇用契約を結ばず、指揮命令のみ行う。

副業・兼業との違いは、誰が決めるかだ。副業・兼業は、労働者個人の判断で実施するもので、会社から命令するものではない。在籍型出向は、会社が労働者に命令して行うもの。同じ「2社と関わる」状態でも、始まり方が逆になる。

社内の異動との区別は人事異動の拒否、異動の種類で変わるに書いた。配置転換・転勤・出向で、根拠になる書面が変わる。

自分の職場で、辞令の前の条件を記録する

どの種類の出向でも、動くのは勤務地と仕事の内容だけではない。指示の出方、確認の頻度、裁量の広さ、人と接する量。会社をまたぐと、これらがまとめて動く。

いまの職場の条件を12の軸で記録しておくと、出向先の条件と並べて見られる。種類が分かったあとに残る問いは、自分の働き方のどこが変わるのかだ。辞令を受け取った段階の記録が、その比較の土台になる。

出典

  1. 在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック 第2版(在籍型出向の定義、労働者供給と職業安定法第44条の関係、出向事例の業種と企業規模、出向契約書の参考例、派遣・副業兼業との違いのQ&A)/厚生労働省/2022年9月
  2. 労働相談Q&A 4 出向・配置転換(出向命令の有効性の要件、出向と転籍の違い)/埼玉県
  3. 労働相談Q&A 7-4 転籍命令には応じなければならないか(転籍の定義と個別の合意)/広島県