変化が速すぎると感じたとき、速さそのものは測れない。測れるのは2つある。変更と変更のあいだが何日空いたか、そして変わると知らされてから実際に変わるまで何日あったか。この2つを4週間ぶん書き出すと、追いつけていない原因が間隔の短さなのか予告の短さなのかで分かれる。覚え直しの時間をどこから出しているかも、同じ記録から見える。
職場の変化が速すぎると感じたら
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速さは、間隔と予告の2つに割れている
「速い」と感じる場面には、性質の違う2つが混ざっている。ひとつは頻度。3か月に一度だった手順の変更が、月に一度になれば間隔は3分の1に縮む。もうひとつは予告の長さで、変更が決まってから適用されるまでに何日あるかを指す。
同じ月1回でも、2週間前に告げられる場合と前日に告げられる場合では、手元でやることがまるで違う。前者なら並行して覚えられる。後者は当日の作業を止めて覚え直すことになり、その時間はどこかから借りるしかない。
記録の形は単純でいい。変更が適用された日付、それを知った日付、この2列だけ。差が予告日数になる。4週間続けてみると、予告日数については平均よりも分布のほうがはるかに効いてくるので、日付をならして1つの数字にしてしまう前に、生の並びのまま眺めておきたい。0日が3回あって14日が1回ある職場と、毎回きっちり7日の職場は、平均を出すとどちらも同じ7日前後に落ち着くが、手元で起きていることは別物。
変わったのは手順か、体制か、道具か、人か
覚え直しの量は、何が変わったかで桁が違う。書き出すときは4つに分けておく。
手順の変更は、承認の経路や書類の書式が動くもの。体制の変更は、部署の区切りや報告先が動くもの。道具の変更は、使うシステムやファイルの置き場が動くもので、覚え直しの量がいちばん読みにくく、前の画面で30秒だった操作が新しい画面では5分かかることも、その逆もある。人の変更は、上司や担当窓口が代わるもの。当日の作業が止まるのは、たいてい道具と人。
体制が変わる周期は、会社ごとにほぼ固まっている。企業に人事異動の頻度を聞いた調査では3年が最多で27.9%だった(体制が変わるのは何年ごとかに分布を整理してある)。自分の体感が速いかどうかは、この分布のどこに自分の職場が載るかで見当がつく。方針そのものが短い間隔で動いている場合は、会社の方針が変わるとき、何を数えるかのほうが近い。
覚え直しに使った時間は、どこにも計上されていない
変化についていく作業には時間がかかる。その時間は、担当業務の工数にも研修の時間にも入っていないことが多い。
厚生労働省の能力開発基本調査(令和6年度、2024年10〜12月実施、個人調査21,334人)では、自己啓発を行ううえで何らかの問題があるとした正社員が82.9%。問題の内訳で最も多かったのは「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」で、正社員の55.9%、正社員以外の35.3%が挙げた。費用がかかりすぎる(正社員25.7%)を大きく上回る。
覚え直しは自己啓発と同じものではない。それでも時間の出どころは同じで、業務時間が埋まっていれば、どちらも業務時間の外に押し出される。だから記録するのは所要時間そのものにする。新しい手順を通しで1回できるまでに何分かかったか。それを変更1件ごとに書く。月に3件あって1件40分なら、2時間が業務工数の外に出ている計算になる。
ストレスの内容は、量と質で別の数字になる
同じ「きつい」でも、量がきついのか中身がきついのかで打ち手が分かれる。
厚生労働省の労働安全衛生調査(令和6年、個人調査)で、強い不安・悩み・ストレスと感じる事柄がある労働者にその内容を3つ以内で聞くと、「仕事の量」が43.2%で最も多く、「仕事の失敗、責任の発生等」が36.2%、「仕事の質」が26.4%だった。量のほうが質より17ポイント近く高い。ただし同じ調査は、令和6年に設問の形式を変えたため前年との比較に注意が要ると書いている。
変化が速い職場で質の側の割合が上がるかどうかは、この調査からは分からない。就業形態別の内訳はあるが、変化の頻度で切った集計が無いため。仮説として置いておき、自分の記録で確かめるほうが早い。覚え直しの件数が多い週に、量と質のどちらがきつかったかを一言ずつ添えておく。
合う速さは、人によって1つに決まらない
変化が遅いほど楽とは限らない。手順が5年変わらない職場では、覚えることが少ない代わりに、身につく技能も5年前のままになる。速い側にも遅い側にも、合う人と合わない人がいる。
自分の最適点を探る材料は3つ。覚え直しに時間がかかるほど疲れが残るタイプか、逆に同じ作業が3か月も続くと手が止まり、変更が入ったときにかえって調子が戻るタイプか。予告さえあれば頻度は気にならないのか、予告があっても件数そのものが負担なのかも、記録の左右の列を見比べれば自分で判定がつく。3つめは相談先で、変更のたびに聞ける相手が部署内にいるかどうかで、同じ件数でも消える時間が変わる。速さの好みではなく条件の話。
今週から4週間、3列だけ埋める
紙でも表計算でもいい。列は3つに絞る。
- 変更が起きた日と、それを知った日(差が予告日数)
- 変わったもの(手順・体制・道具・人のどれか)と、覚え直しに使った分数
- その変更でやり直しになった作業と、消えた時間
4週間で何行たまるかは、やってみないと分からない。0行なら、しんどさの原因は変化の速さの外にある。10行を超えるなら、予告日数の分布と覚え直しの合計分数を持って面談に行ける。数字は感想と違って、相手と同じものを見られる。
続けるか動くかを決めるのは、そのあとでいい。





