考え方

このサービスが何を測り、何を測らないかを書いておきます。判断の根拠を先に出しておかないと、出てきた結果の読み方が決まりません。

なぜ望みを聞かないのか

人は「どんな職場がいいか」と聞かれると、その瞬間に頭に浮かんだことを過大に評価します。心理学ではこれを焦点化幻想と呼びます。カリフォルニアに住めば幸せかと問われた人が、気候ばかりを思い浮かべて過大評価する、という研究が知られています。

だから望みは聞きません。実際に集中できた場面と、消耗した場面。二つの事実を聞いて、その差から条件を出します。

12の項目はどこから来たか

下敷きにしたのは、仕事の要求と裁量の関係を扱う研究(Job Demands-Control)と、仕事そのものの特性を扱う研究(職務特性モデル)です。

ただし、そのまま使っていません。「回数や段階で答えられるもの」だけに絞りました。「風通しが良いか」は聞けません。評価だからです。「承認が何段階か」なら聞けます。

12項目と、目盛りの両端。両端は、いまの職場を聞く設問の選択肢の両端と同じ言い方にしてあります。 印のない項目は「人によって最適な点が違う」ものです。
項目目盛りの左目盛りの右
変化の速さ体制変更なし年3回以上
裁量ほぼ指示どおりほぼ自分で決める
手順の明確さ文書で決まっている決まっていない
人と接する量会議 週5時間未満週20時間以上
暗黙の型の強さ暗黙の型なし5つとも
人からの反応年1回以下週1回以上
結果が見えるまで月単位年以上
仕事の完結性担当しない常に担当する
学ぶことの量新しく覚えたもの なし6つ以上
仕事が誰に届くか受け手と接しない日常的に接する
時間と場所の自由度どちらも選べない時間も場所も選べる
確認の頻度職場の慣行毎日確認が入るほとんどない

なぜ点数をつけないのか

項目には二種類あります。誰にとっても向きが同じもの(労働時間、ハラスメントの処理)と、人によって最適な点が違うもの(裁量、変化の速さ、人と接する量)。

後者を平均すると、その職場の事実が消えて、答えた人との相性だけが残ります。だから平均しません。距離だけを示します。

合計して一つの点数にすることもしません。点数にした瞬間、「78点の職場」という読み方になり、評価に戻ってしまうからです。

なぜ人を測らないのか

測るのは、あなたの性格や能力ではありません。あなたが力を出せる環境の条件です。

個人の適性をAIで判定する試みは、規制と訴訟に晒されてきました。ある採用面接ツールは、表情の分析をやめたと2021年に公表しています。回答の言葉の分析に比べて、予測への上乗せがほとんど無かったことと、偏りへの懸念が理由でした。

環境を測る側から、同じ「合うかどうか」に到達できます。それがこのサービスの立ち位置です。

どう集計するか

記録に名前は紐づきません。あなたの回答と、職場の記録は、別々に保存され、互いを参照しません。

  1. 1会社単位で集める職場の記録を、勤務先ごとにまとめます。
  2. 210件未満は表示しない同じ会社の記録が10件に満たないうちは、会社ごとの集計を出しません。
  3. 3平均してはいけない項目は、平均せず分布で出す人によって最適な点が違う項目は、平均すると事実が消えます。更新は月に一度。

何を測らないか

仕事の量そのもの(締切の圧、認知的な負荷)。人間関係の質。報酬の公正さ。物理環境。そして上司との相性。

上司は会社の性質ではなく配属先の性質で、入社前には分からず、入ってからも異動で変わります。1on1の頻度や決裁の範囲といった「慣行」で近似するだけで、本体は測れません。

これは仮説です

12の項目が正しいと決まっているわけではありません。記録が溜まる中で、「距離が出たのに実感と合わない」項目が見つかれば削ります。足りない項目が見つかれば足します。

変更したときは、このページに履歴を残します。

参照した研究

ここまでに出てきた話には、それぞれ元になった研究があります。挙げるのは出典で、結論を保証するものではありません。

  • 焦点化幻想 — Schkade, D. A. & Kahneman, D.(1998)Does Living in California Make People Happy? A Focusing Illusion in Judgments of Life Satisfaction. Psychological Science.
  • 仕事の要求と裁量 — Karasek, R. A.(1979)Job Demands, Job Decision Latitude, and Mental Strain: Implications for Job Redesign. Administrative Science Quarterly.
  • 職務特性モデル — Hackman, J. R. & Oldham, G. R.(1976)Motivation through the Design of Work: Test of a Theory. Organizational Behavior and Human Performance.