同調圧力とは、明文化された決まりが無いのに、周りと同じようにするよう働く力のこと。就業規則にも業務手順にも書かれていないのに、服装や帰る時刻や休みの取り方が揃っている状態を作る側の力を指す。だから「規則が厳しい職場」とは別物で、規則が少ない職場でも強く働く。診断では、これを「暗黙の型の強さ」という変数で扱っている。
同調圧力とは、暗黙の型の強さ
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含むもの、含まないもの
含むのは、明文化されていない期待。「そういうものだから」と説明される行動、誰も指示していないのに全員がそうしている手順、外れた人が後から言われること。
含まないのは3つ。第一に、就業規則や業務マニュアルに書かれた決まりへの準拠で、これは明文の規則を守っているだけなので、暗黙の型とは別に数える。第二に、上司からの明示的な指示や命令。第三に、自分で合わせることを選んだ場合の協調。ただし3つ目の境界は見えにくく、自発的に合わせているのか、外れたときに起きることを避けているのか、本人にも区別しにくい。
見分ける手がかりは1つ。外れた人に何が起きたかを思い出せるかどうか。
似た語との関係も整理しておく。同調行動は、合わせた側の行動そのもの。協調性は、合わせることを選ぶ性向として個人に帰される語。忖度は、相手の意向を推測して先に合わせる動き。同調圧力はこれらと違って、場の側にある力を指す。
社風、組織の規範、暗黙のルール、同調圧力
4つの語は入れ子になっている。
- 社風 — 日常語。職場の雰囲気から人事制度まで、話す人によって含む範囲が変わる。測定の単位にならない
- 組織の規範 — 集団の中で共有された「こうするもの」という期待。明文の規則と暗黙の型の両方を含む
- 暗黙のルール — 規範のうち、明文化されていない部分
- 同調圧力 — その暗黙の型に合わせるよう働く力
「社風が合わない」という言い方のままでは、次に何を確かめればいいか決まらない。4つの層に割れば、就業規則や業務マニュアルを読んで確かめられるのが2層目までで、3層目と4層目については人の動きを見るしかないところまで、作業が分かれる。規則だけ読んでも足りない。
測り方は、決まりが無いのに揃っているものを数える
診断では、感じ方を聞かずに、揃っているものの数を聞いている。第2章「いまの職場」の設問がこれ。
決まりはないのに「みんなそうしている」ものは、どれですか(当てはまるものをすべて)
- 服装
- 始業・退勤の時刻
- 会議での発言の仕方
- 休みの取り方
- 飲み会などの付き合い
- どれもない
選んだ数が多いほど、暗黙の型が強い職場。5つとも当てはまる職場と、どれも当てはまらない職場では、同じ業務内容でも1日の動かし方が変わる。
「圧力を感じますか」と直接聞かない理由は、感じ方の閾値が人によって大きく違うから。同じ職場にいる2人でも、一方は毎日窮屈だと言い、もう一方は同じ環境について何も感じないと答えることがあり、その2つの回答を並べても職場の側の性質は出てこない。数えられる形にしておけば、2人の答えは近づく。
タイト文化とルーズ文化という枠組み
規範の強さを国単位で比べた研究がある。33か国のデータを使って、規範が多く強くて逸脱への寛容度が低い文化を「タイト」、規範が弱くて寛容度が高い文化を「ルーズ」と分けたもの(ゲルファンドら、Science 332巻、2011年、1100〜1104ページ)。
この枠組みで大事なのは、強弱が連続量として扱われている点。「日本は同調圧力が強い」という言い方は国全体の平均的な位置を指すもので、同じ国の中でも会社ごと、部署ごと、さらには同じ部署の中でもチームごとに位置は違い、転職や異動で自分の置かれる位置が大きく動くのもそのためだと説明できる。
つまり自分の職場の強さは、国の話からは分からない。数えるしかない。
強さの最適点は、人によって違う
暗黙の型が強い職場を、全員が窮屈と感じるわけではない。型が決まっているほうが迷わず動ける人にとっては、いちいち判断せずに済む場面が増えるぶん、1日の負荷はむしろ下がる。何をどう進めるか自分で組み立てたい人には、同じ型が制約になる。どちらが合うかは、その人が何で消耗するかで変わる。
だから診断では、この変数に「高いほうがいい」という向きを置いていない。置いているのは、自分が集中できた場面での強さと、いまの職場の強さの差。
強さが自分に合っていないときに何が起きるかは、はっきりしている。自分のやり方を持っている人が強い型の職場にいれば、型に合わせる分の手間が毎日かかる。逆に、型が無い職場で判断の基準を欲しい人は、毎回ゼロから決めることになる。どちらも消耗の理由になるが、原因は反対。
自分で決められる範囲そのものについては、裁量権とは、何を自分で決められるかで扱った。発言したときに何が返ってくるかは、心理的安全性とは何を測る言葉かのほう。暗黙の型の強さとは別の変数で、片方が強くても片方が弱いことがある。
今週やるなら、2つだけ
上の5項目のうち、自分の職場でいくつ当てはまるかを数える。それから、決まりから外れた人に何が起きたかを1件だけ思い出して書く。指摘されて終わったのか、評価の場で持ち出されたのか。
この2つが揃うと、「社風が合わない」が「暗黙の型が5項目で、外れると評価に反映される職場」に変わる。面談で話すときも、次を考えるときも、後者のほうが扱える。





