タスク完結性は、ひとまとまりの、それと分かる一片の仕事を最初から最後まで担当しているかどうかを指します。ハックマンとオルダムが職務特性モデルで定義した5つの中核的職務特性の1つで、原文は Task Identity。「仕事の完結性」「タスク・アイデンティティ」と訳し分けられることがありますが、指しているものは同じです。
工程のどこか一部分だけを受け持ち、結果が他の人や機械の手で仕上がる。この状態が、完結性の低い側にあたります。
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タスク完結性は、ひとまとまりの、それと分かる一片の仕事を最初から最後まで担当しているかどうかを指します。ハックマンとオルダムが職務特性モデルで定義した5つの中核的職務特性の1つで、原文は Task Identity。「仕事の完結性」「タスク・アイデンティティ」と訳し分けられることがありますが、指しているものは同じです。
工程のどこか一部分だけを受け持ち、結果が他の人や機械の手で仕上がる。この状態が、完結性の低い側にあたります。
原典の定義は「ひとまとまりの、それと分かる一片の仕事を完成させることを、その職務がどの程度要求するか。すなわち、目に見える結果を伴って、仕事を始めから終わりまで行うこと」です(Hackman & Oldham, 1974)。
要素は3つ。始まりと終わりがはっきりしていること、ひとまとまりとして区切れること、結果が目に見えること。 どれか1つが欠ければ、完結性は下がる。設計から納品まで通しで担当していても、最終的な成果物が自分の手を離れたあとで誰かの判断で差し替えられ、何がどう変わったのかも知らされないままなら、3つめの条件が欠けていることになります。
「一気通貫」という言い方は、この3つが揃った状態を日常語で指したものです。ただし一気通貫は工程の連続性を強調する語で、結果が見えるかどうかまでは含みません。
分業が進んだ職場でも、完結性が高いことはあります。自分の担当が「請求書の発行」だけだとしても、その仕事に始まりと終わりがあり、発行された請求書という結果が見えるなら、その単位では完結している。
反対に、複数の工程を受け持っていても完結性が低い場合がある。設計の前半だけを3案件ぶん並行して進め、後半は別の担当に渡すといった配分では、工程の数は多くても、どれ1つとして終わりまで見ていません。
違いは、担当する工程の数ではなく、自分に割り当てられた範囲が、それ自体で1つのまとまりになっているかどうかにあります。
職務特性モデルは、仕事の側の特性が、働く人の心理状態を経由して成果に結びつくという筋道で組まれています。中核的職務特性は、技能多様性、タスク完結性、タスク重要性、自律性、フィードバックの5つ。
このうち最初の3つが「仕事の有意味感」に、自律性が「結果への責任の自覚」に、フィードバックが「結果の知識」に効くとされます。タスク完結性は、有意味感を作る3つのうちの1つという位置づけ。
モデルには動機づけ潜在力スコア(MPS)という合成値があり、(技能多様性+タスク完結性+タスク重要性)÷3 × 自律性 × フィードバック で計算します。掛け算なので、完結性だけが高くても自律性かフィードバックがゼロに近ければ、全体はゼロに近づく。完結性を単独で追いかけても動かない、という構造がここに出ています。
職務診断調査(Job Diagnostic Survey, JDS)では、タスク完結性を3つの項目の平均で測ります。7段階。うち1つは逆転項目で、回答した数値を8から引いて計算します。
代表的な項目は「あなたの職務は、ひとまとまりの、それと分かる一片の仕事をどの程度含んでいますか。始まりと終わりがはっきりした完結した仕事ですか。それとも、他の人や自動機械が仕上げる全体のごく一部ですか」というもの。逆転項目のほうは「この職務は、一片の仕事を始めから終わりまで行う機会が自分に無いように組まれている」と聞きます。
この尺度は、5つの中核的職務特性の中で内的整合性がいちばん低い。 報告されている係数は.59で、技能多様性の.71やタスク重要性の.66を下回ります(Hackman & Oldham, 1974)。同じ人の回答が項目間でばらつきやすいということなので、1つの数字として扱うときは幅を見込んでおいたほうが安全です。
環境の診断(第2章)の「いまの職場」では、仕事の完結性をこの設問で測っています。
ひとつの仕事を最初から最後まで担当することは、どのくらいありますか
- ない
- まれにある
- 半分くらい
- 常に
頻度を聞いている点が、JDS の項目と違います。JDS は職務の性質を7段階で評価してもらう形ですが、こちらは「先月どうだったか」を思い出して答えられる形にしてあります。
完結性が高い仕事は、始まりから終わりまでの責任を1人が持つということでもあります。工程が長ければ、1件が終わるまでの期間も長くなる。結果が出るまで何か月もかかる仕事を続けるのが向く人もいれば、短い区切りで手離れしていくほうが向く人もいます。
技能の伸び方も変わります。通しで担当すると全体の段取りが身につき、一部分に絞ると、その工程の深さが出る。どちらが要るか。いま何を積みたいかで変わります。
だから、この変数は高い低いで評価しません。測るのは、いまの職場の値と、自分に合う値との距離です。
先月に手がけた仕事を3つ思い出して、それぞれ「始まりと終わりがあったか」「ひとまとまりとして区切れたか」「結果が目に見えたか」の3つに当てはめてみてください。3つとも当てはまるものが1つも無ければ、完結性の低い側で働いている月だったことになります。
1か月ぶんでは、その月がたまたまそうだっただけかもしれません。4か月ぶん並べて、はじめて職場の性質として読めます。
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