フレックスタイム制で会社が決めるのは、働く時間の総量と、それを数える期間の2つだけ。始業と終業の時刻は、働く人が日ごとに決める。労働基準法32条の3にある制度で、2019年4月の改正で、時間を調整できる期間が最長3か月まで延びた。厚生労働省の手引きは「一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度」と定義している。
フレックスタイム制、決まるのは総量だけ
公開 約 6 分

決まっているのは総量と期間
清算期間は3か月以内。その期間に働く総労働時間を労使協定で先に決めておき、あとは枠を使い切るまでのあいだ、どの日に長く働いてどの日を短くするかを本人が組み立てていく。
この制度の下では、時間の数え方が通常の勤務と変わる。厚生労働省の手引きによると、1日8時間・週40時間を超えて働いても、ただちに時間外労働にはならない。逆に、1日の標準の労働時間に届かない日があっても、それだけで欠勤の扱いにはならない。判定が出るのは清算期間の終わり。
総労働時間の例は、手引きの就業規則例に出ている。清算期間1か月、総労働時間154時間、標準となる1日の労働時間7時間。154時間を22日で割れば1日7時間ちょうどだが、8時間働く日を20日続けて160時間に達した時点で、その月に働く時間は残っていない。
コアタイムの長さが、自由度の幅を決める
勤務が義務づけられている時間帯をコアタイム、その前後の出退勤を自由にできる時間帯をフレキシブルタイムと呼ぶ。どちらも置かなくてかまわない。コアタイムを設けない形にすれば、総労働時間の枠を守るかぎり、働く日そのものを自分で選べるところまで裁量が広がる。
手引きの就業規則例では、始業を午前6時から午前10時までの間、終業を午後3時から午後7時までの間で決められるようにし、午前10時から午後3時までをコアタイムにしている。フレキシブルタイムの途中で抜けることもできる。
ただし、コアタイムが1日の大半を占め、フレキシブルタイムが極端に短い場合は、始業・終業の決定を働く人に委ねたことにならず、フレックスタイム制とは認められない。厚生労働省がそう注意している。自分の職場の条項を読むときは、コアタイムの長さとフレキシブルタイムの幅を分けて数えるとよい。
導入している企業の割合は8.3%(フレックスタイム制の導入率は8.3%)。
残業の有無は、清算期間の終わりに決まる
清算期間の法定労働時間の総枠は、暦日数で変わる。手引きの表では、31日の月が177.1時間、30日が171.4時間、29日が165.7時間。実際に働いた時間の合計がこの総枠を超えれば、超えた分が時間外労働となり、割増賃金の支払いが要る。
足りなかったときの扱いは2つある。不足時間分の賃金を控除して支払うか、不足時間を次の清算期間の総労働時間に合算して繰り越すか。どちらになるかは労使協定の定め方しだいで、繰り越せるのは次の清算期間の法定労働時間の範囲内まで。超過した時間は繰り越せず、その清算期間の賃金として精算される。
完全週休2日制の職場では、総枠をめぐる逆転が起きることがある。手引きが挙げている例では、1日7時間45分×23日=178時間15分、つまり178.25時間になり、31日の月の総枠177.1時間を超えてしまう。残業をしていないのに時間外労働が出る計算。この場合に労使協定で総枠の決め方を変える特例が用意されている。
清算期間が1か月を超えるときは、条件が1つ増える。期間全体の労働時間が週平均40時間以内であることに加えて、1か月ごとの労働時間が週平均50時間以内であること。どちらかを超えた時間は時間外労働になる。繁忙月に偏らせることはできない仕組み。清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を労働基準監督署長に届け出る義務もある。
時間外労働そのものの数え方は残業時間の計算、2つの線を分けて数えるに書いた。
裁量労働制や変形労働時間制との線引き
フレックスタイム制は、実際に働いた時間を数える。総量が先に決まっていて、配分を本人が決める制度。
裁量労働制は、実際に働いた時間の長短にかかわらず、労使協定で定めた時間を働いたものとみなす。たとえば1日のみなし時間を8時間と定めていれば、6時間で終えた日も10時間かかった日も記録の上では同じ8時間として扱われ、差は賃金に出てこない。設計が違う。
1か月単位の変形労働時間制では、各日・各週の労働時間を会社があらかじめ決める。日ごとの長さが一定でない点は似ていても、決めるのが会社か本人かという違いは大きい。
短時間勤務制度は、所定労働時間そのものを短くする(時短勤務とは、原則6時間への短縮)。総量を減らす制度と、総量を保ったまま配分を動かす制度。並べると性格が分かれる。
自分の条件は、労使協定の6項目に書いてある
勤め先にこの制度があるかどうかは、2か所を見れば分かる。就業規則に「始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる」旨の定めがあること。そして労使協定に次の6項目が書かれていること。
- 対象となる労働者の範囲
- 清算期間
- 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
- 標準となる1日の労働時間
- コアタイム(任意)
- フレキシブルタイム(任意)
4の「標準となる1日の労働時間」は、年次有給休暇を取った日に何時間働いたものとして数えるかの基準になる。休憩の与え方は通常の勤務と同じ決まりが続く。制度が動かすのは始業と終業の時刻であって、休憩や有給の権利そのものではない。
制度の有無と、決められている範囲は別に数える
就業規則にフレックスタイム制と書いてあっても、取引先の時間に合わせる日が続けば、始業を自分で動かせる日は月に数日しかない。診断では、制度の名前ではなく実際の裁量を測っている。
いつ・どこで働くかを、自分で決められますか(当てはまるものをすべて)
- 働く時間を自分で調整できる(フレックス・裁量労働など)
- 働く場所を選べる(在宅・サテライトなど)
- どちらもできない
当てはまるものをすべて選ぶ形にしているのは、時間と場所が別々に動くため。出社の義務はないのに会議が9時台に固まっていて時間だけ動かせない職場もあれば、始業時刻は自由でも全員が同じ場所に集まる職場もあり、2つをまとめて1つの自由度として数えると、どちらが効いているのか分からなくなる。
自由度の最適点は、人によって違う
出勤時刻を自分で決められる状態が、全員にとって同じ意味を持つわけではない。開始時刻が固定されているほうが生活のリズムを保ちやすい人もいれば、コアタイムが無いと予定を組めない人もいる。子どもの送り迎えや通院の時間を優先したい時期には、同じ制度の価値が変わる。
自分にとっての最適点を言葉にするには、いまの職場で何が動かせて何が動かせないかを記録するところから。清算期間、コアタイムの長さ、実際に始業を変えた日数。この3つを4週ぶん書き出すと、制度の名前では見えない幅が出てくる。





