裁量とは、仕事の進め方や順番を自分の判断で決められる範囲のこと。裁量権はその範囲を権利として言ったもので、指している中身は同じ。求人票や面談で「裁量が大きい」と言われるとき、その多くは、やることの中身までを含まず、どう進めるかを任される度合いを指している。
裁量権とは、何を自分で決められるか
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決めているのが誰かで分かれる
裁量が含むのは、手段の選択、作業の順番、時間の配分、そして方針に自分の意見が届くかどうか。含まないものもはっきりしている。何を担当するかの割り当て、予算や契約の決裁、人事の決定。これらは権限の話で、組織が正式に誰に渡すかを決めてある。
権限と裁量は重なるが、同じではない。権限は「何を決めてよいか」を役職や規程で線引きしたもの。裁量は、その線の内側で「どう進めるかを自分で決められる度合い」を指す。決裁権を持たない人にも裁量はあるし、部長の肩書きを持っていても、進め方が細かく指示される職場なら裁量は小さい。
だから「裁量が欲しい」と言うとき、何を指しているのかを分けておくと話が進みやすい。順番を組み替えたいのか、手段を選びたいのか、そもそも何をやるかに意見を届けたいのか。三つは別のものとして交渉できる。
裁量は4つの対象に分けて見る
| 対象 | 決められる状態の例 |
|---|---|
| 手段 | 使う道具や方法を自分で選べる |
| 順番 | タスクの優先順位を自分で組み替えられる |
| 時間配分 | どの作業に何時間かけるかを自分で決められる |
| 方針 | 何をやるかの決定に、自分の意見が反映される |
4つは連動しない。順番は自由に組めるのに使う道具は指定されている職場もあれば、方針を決める場には呼ばれるのに日々の進め方には細かく確認が入る職場もあって、どちらも「裁量が大きい」とも「小さい」とも言える状態になる。ひとまとめにすると、この食い違いが消える。
測り方には、公開されているものさしがある
厚生労働省がストレスチェックに使う職業性ストレス簡易調査票(57項目)には、「仕事のコントロール」を測る3つの項目が入っている。
| 項目番号 | 設問文 |
|---|---|
| 8 | 自分のペースで仕事ができる |
| 9 | 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる |
| 10 | 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる |
答えるのは4段階。上の2つが手段と順番を、3つめが方針への関与を見ている。職場ごとの集計に使う尺度として作られているので、1人ぶんの答えを他人の答えと並べて高い低いを言うための道具ではないけれど、この3行を読んで自分がどこに丸をつけるかを考えること自体が、裁量を言葉にする手がかりになる。
workprevu の診断では、第2章「いまの職場」で次の設問を置いている。
いまの職場では、仕事の進め方や優先順位を、どこまで自分で決められますか
- ほぼ自分で決められる
- 大枠は決まっていて、細部は自分で決める
- 多くは上の判断を仰ぐ
- ほぼ指示どおりに進める
選択肢を4つに切ったのは、真ん中の「大枠は決まっていて、細部は自分で決める」が、実際にはいちばん人数の多い状態だからだ。ここを「裁量あり」と「裁量なし」の二択にすると、大半の人が答えられなくなる。
裁量労働制は、時間の数え方を決める制度
名前が似ているので混ざりやすい。裁量労働制は労働基準法に基づく制度で、実際に働いた時間の長さにかかわらず、労使協定や労使委員会の決議で定めた時間を働いたものとみなす仕組みを指す。専門業務型と企画業務型の2つがあり、専門業務型の対象は厚生労働省令と告示で定められた20の業務に限られる。
制度の要件として、業務の遂行方法や時間配分について使用者が具体的な指示をしないことが定められている。ただし、制度が適用されているかどうかと、日々の進め方をどこまで自分で決められているかは、それぞれ別に確かめる。制度の適用は労使協定の届出で決まるもので、毎日の指示の出方はその協定に書かれていない。
自分に適用されているかは、就業規則と労働条件通知書で確かめられる。みなし労働時間が何時間と書かれているかも、そこに載っている。
大きいほど合うとは限らない
裁量は、大きいほど誰にでも合うという性質のものではない。決める回数が増えれば、そのたびに前提を集めて判断する負荷がかかり、手順があらかじめ決まっているほうが速く進められる人にとっては、任されること自体が作業を遅らせる要因になる。決めた結果を引き受ける重さが、疲れとして出る人もいる。
逆に、指示どおりに進める時間が長い職場では、自分のやり方を試す機会が減っていく。どちらに寄ると消耗するかは人によって違う。同じ職場でも、隣の席の人と自分とでは合う点がずれている。
だから裁量は、高いほど良いという目盛りでは測らない。自分が楽に動ける点がどこにあって、いまの職場がそこからどちらへどれだけ離れているか。見るのはその距離のほう。
1週間の記録で、大きさを見る
いまの裁量が大きいのか小さいのかは、感覚では揺れる。1週間だけ、仕事のなかで決めたことを書き出して、決めた人ごとに三つに分けてみる。
- 自分で決めた
- 上司や先輩に確認してから決めた
- 自分が関わる前に決まっていた
3つめが多ければ、方針の裁量が小さい。2つめが多ければ、手段と順番の裁量が小さい。件数の比は、次の面談で使える。「確認が要る判断が週に12件ありました」と言えるかどうかで、話の進み方が変わる。
面談でこのあたりを持ち出す組み立ては1on1で何を話すかに、転職の面接で相手の職場の裁量を確かめる聞き方は上司のことを面接で聞く質問にまとめた。
自分の合う点を知る
裁量は、職場を測る12の軸のひとつ。手順の明確さや確認の頻度といった別の軸と組み合わせると、いまの働きにくさがどこから来ているかを切り分けられる。
診断では、いまの職場の裁量と、自分が楽に動ける裁量の両方を聞いている。二つの差が、動かす余地のある距離になる。





