会社都合退職の条件は雇用保険が決める

「会社都合退職」に、法令上の定義はない。条件として機能しているのは、雇用保険の「特定受給資格者」の範囲で、倒産等による離職4項目と、解雇等による離職13項目が厚生労働省の基準として公開されている。ハローワークがこの表に当てはめて判定する。

だから、自分から退職を申し出ても会社都合の側に入ることがある。離職前6か月のうち連続3か月で45時間を超える時間外労働があった、賃金の3分の1を超える額が支払日に支払われなかった、上司や同僚からの嫌がらせを会社が放置した。どれも解雇等による離職の項目に並んでいる。

判定の実体は、特定受給資格者の範囲

会社都合・自己都合という言い方は、離職票や履歴書の上での呼び方だ。雇用保険の手続きでは、特定受給資格者(倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた人)と、特定理由離職者、それ以外の離職者という3つに分かれる。給付の扱いが変わるのはこの区分で、退職届に何と書いたかではない。

判定するのは会社ではなくハローワークで、会社が離職票に書いた離職理由と、本人が同じ用紙の欄に書いた申し立て、そして双方が出した資料を突き合わせたうえで、どの区分に当たるかが決まる。会社の記載が結論ではない。

倒産等による離職は4項目

  1. 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て、または手形取引の停止等)に伴う離職
  2. 事業所において大量雇用変動の届出(1か月に30人以上の離職)がされたため、または被保険者の3分の1を超える者が離職したための離職
  3. 事業所の廃止(事業活動停止後、再開の見込みのない場合を含む)に伴う離職
  4. 事業所の移転により、通勤することが困難となったための離職

会社がなくなる場合だけでなく、人が大量に抜けた場合と、事業所が遠くへ移った場合が入っている。

解雇等による離職は13項目

項目 内容
1 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)
2 労働契約の締結に際し明示された労働条件が、実際と著しく相違したための離職
3 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったための離職
4 賃金が、離職前6か月のうちいずれかの月に、従前の85%未満に低下した(低下することとなった)ための離職
5 離職前6か月のうちいずれか連続3か月で45時間、いずれか1か月で100時間、またはいずれか連続2か月以上の期間の平均で1か月80時間を超える時間外労働が行われたための離職
6 妊娠・出産・育児休業・介護休業等の申出や取得を理由とする不利益取扱い、または法令違反のための離職
7 職種転換等に際して、職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないための離職
8 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合に、更新されないこととなったための離職
9 契約更新が明示されていた有期労働契約が、更新されないこととなったための離職(8に該当する場合を除く)
10 上司・同僚等からの故意の排斥、著しい冷遇または嫌がらせを受けたことによる離職、事業主がセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関する言動による就業環境の悪化を把握しながら雇用管理上の措置を講じなかったための離職
11 事業主から退職するよう勧奨を受けたことによる離職(恒常的に設けられている早期退職優遇制度等に応募して離職した場合を除く)
12 使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が、引き続き3か月以上となったための離職
13 事業所の業務が法令に違反したための離職

退職勧奨は11番。数値で線が引かれているのは3・4・5の3つで、時間外労働の基準として挙がっている45時間・80時間・100時間という水準は、労災認定で使われている目安と重なっている。残業の記録、給与明細、相談した記録が、そのまま判定の材料になる。

特定理由離職者という中間

有期契約の期間が満了し、更新を希望したのに合意に至らなかった場合は、特定理由離職者にあたる(8・9に該当する場合を除く)。契約書に「更新する場合がある」と書かれていて、確約まではなかったケースだ。

このほか、正当な理由のある自己都合離職も特定理由離職者に入る。体力の不足や心身の障害、疾病、負傷。父母の死亡や疾病による扶養の必要、常時看護を要する親族の疾病。配偶者や扶養すべき親族との別居の継続が困難になったこと。結婚に伴う住所の変更、事業所の通勤困難な地への移転、配偶者の転勤に伴う別居の回避などで、通勤が不可能または困難になったこと。企業整備による人員整理で希望退職に応じた場合も、11番に当たらない形ならここに入る。

転勤に伴う別居がここに入っているのは、勤務地の変更が離職の理由として扱われているため。勤務地の範囲がどこまでかは転勤とはで整理した。

給付で変わるのは、3か所

受給資格の要件。 原則は離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上。特定受給資格者と特定理由離職者は、離職の日以前1年間に通算6か月以上で足りる。被保険者期間は、賃金支払の基礎日数が11日以上、または基礎時間数が80時間以上ある月を1か月と数える。勤続が短い人ほど、この差が効く。

給付制限。 2025年4月1日以降に離職した場合、正当な理由のない自己都合退職の給付制限期間は原則1か月。2025年3月31日以前の離職は原則2か月だった。過去5年間に正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を2回以上受けている場合と、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)の場合は3か月になる。特定受給資格者には給付制限がない。

所定給付日数。 特定受給資格者と一部の特定理由離職者は、年齢と被保険者であった期間に応じて90日から330日。それ以外の離職者は90日から150日。同じ勤続年数でも、区分が変わると日数が倍近く動く。

なお給付制限は、解除される道もある。雇用の安定や再就職に資する教育訓練を自ら受けた場合で、2025年4月1日以降に受講を開始した対象訓練を離職前1年以内に受けたか、離職後に受けている場合が対象。途中退校は該当しない。

離職票が自己都合になっていたら

離職票(雇用保険被保険者離職票-2)には、会社が記入した離職理由と、本人が異議の有無を書く欄がある。会社の記載と自分の認識が違うなら、異議ありとして事実を書き、ハローワークに資料を出す。判定するのはハローワークなので、会社の記載がそのまま確定するわけではない。

資料になるのは、タイムカードや勤怠記録、給与明細、退職勧奨の場でのやりとりの記録、相談窓口への相談履歴。いずれも在職中なら自分の手で写しを取れるものばかりで、退職後に会社へ請求して応じてもらえるかどうかは、辞め方と担当者によって変わる。辞める前に残す。

退職の理由が何だったかを、全国の統計で見ると離職理由ランキングのようになる。会社側の都合として集計される区分は、個人的理由より小さい。

自分の職場で確かめる

条件に当たるかどうかを見るなら、手元に揃えるのは4つ。直近6か月の時間外労働の記録、直近6か月の給与明細、労働条件通知書と実際の勤務条件の差、相談した日付と相手の記録。どれも在職中のほうが集めやすい。

workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。労働時間や決まり方の透明さも、そのうちに入る。自分の答えと同じ職場の人の答えを並べて、どこがずれているかを見る形にしてある。

出典

  1. 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要/厚生労働省(ハローワークインターネットサービス)
  2. 基本手当について(受給資格要件・被保険者期間の数え方・特定受給資格者等の例外)/厚生労働省(ハローワークインターネットサービス)
  3. 基本手当の所定給付日数(特定受給資格者等は90日〜330日、それ以外は90日〜150日)/厚生労働省(ハローワークインターネットサービス)
  4. 令和7年4月1日以降に離職された方は、正当な理由がない自己都合により退職した場合、給付制限期間が原則1か月となります(教育訓練による解除、3か月となる場合)/群馬労働局・ハローワーク/2025年