令和4年3月に大学を出て就職した449,012人のうち、3年後も最初の勤め先に残っていたのは66.2%だった。厚生労働省が2025年10月24日に公表した「新規学卒就職者の離職状況」で就職後3年以内の離職率が33.8%と出ていて、定着率はそれを100から引いて作った値であり、統計表に定着率という欄が立っているわけではない。
産業で割ると、この66.2%は44.6%から87.6%まで動く。開きは43.0ポイント。ただし就職者が2,000人ほどしかいない区分も混じっているので、率だけを取り出さず人数と並べて読むことになる。
産業で43.0ポイント開く
産業大分類ごとに、就職者数と3年以内の離職者数を並べ、100から離職率を引いた値を定着率とした。いずれも令和4年3月卒の大学卒。
| 産業 |
就職者数 |
3年以内離職者数 |
3年定着率 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 |
2,213人 |
274人 |
87.6% |
| 鉱業、採石業、砂利採取業 |
188人 |
36人 |
80.9% |
| 製造業 |
62,755人 |
13,273人 |
78.8% |
| 金融業、保険業 |
23,018人 |
5,753人 |
75.0% |
| 情報通信業 |
50,819人 |
13,833人 |
72.8% |
| 複合サービス事業 |
3,465人 |
997人 |
71.2% |
| 卸売業 |
30,720人 |
9,212人 |
70.0% |
| 建設業 |
23,156人 |
7,065人 |
69.5% |
| 運輸業、郵便業 |
10,575人 |
3,328人 |
68.5% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 |
33,492人 |
11,350人 |
66.1% |
| 不動産業、物品賃貸業 |
14,591人 |
5,332人 |
63.5% |
| サービス業(他に分類されないもの) |
34,813人 |
13,511人 |
61.2% |
| 小売業 |
48,344人 |
19,552人 |
59.6% |
| 医療、福祉 |
70,678人 |
28,812人 |
59.2% |
| 教育、学習支援業 |
20,518人 |
9,070人 |
55.8% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 |
6,176人 |
3,376人 |
45.3% |
| 宿泊業、飲食サービス業 |
9,027人 |
5,001人 |
44.6% |
上下の端は電気・ガス・熱供給・水道業の87.6%と、宿泊業・飲食サービス業の44.6%。前者は10人に1人強しか3年以内に抜けず、後者は半分以上が抜けている。全体の66.2%という数字は、この幅のまんなかあたりに置かれた平均にすぎない。
就職者の半分は、平均より下の産業に入っている
人数の多い順に4つ取ると、医療・福祉70,678人、製造業62,755人、情報通信業50,819人、小売業48,344人となり、合計した232,596人は大学卒就職者449,012人の51.8%にあたる。半分。この4つのうち医療・福祉59.2%と小売業59.6%が、全体の66.2%より下にある。
定着率の低い産業が、小さな区分に固まっているわけではない。人数の多い4つのうち2つが平均より下にあり、そのぶん全体の66.2%は下へ引かれている。産業別の表を上から順に眺めるだけだと、この重みは見えてこない。
1年目で抜ける割合も、産業でそろわない
3年ぶんの合計だけでは、いつ抜けたかが見えない。1年目までの離職者数を同じ表から拾うと、全体で53,840人、就職者に対して12.0%。産業別では宿泊業・飲食サービス業が2,066人で22.9%、電気・ガス・熱供給・水道業が121人で5.5%だった。
4.2倍の開き。3年ぶんで見たときの倍率(55.4%対12.4%で4.5倍)とほとんど変わらず、産業による差は最初の1年でだいたい付いている。宿泊業・飲食サービス業で3年以内に抜けた5,001人のうち、2,066人は1年目に抜けた人だった。入社から12か月のあいだに何が起きたのかを、この統計は記録していない。人数だけ。
定着率がいちばん高い区分は、就職者が2,213人
電気・ガス・熱供給・水道業の87.6%は、2,213人を分母にした値。鉱業、採石業、砂利採取業にいたっては就職者が188人しかおらず、1人離職するかどうかで0.5ポイント動く区分なので、順位表の上のほうを見るときは率より先に分母の桁を確かめたほうが速い。
人数が1万人を超える区分に限ると、上は製造業の78.8%、下は宿泊業・飲食サービス業の44.6%で、幅は34.2ポイントまで縮む。
定着率は公表されていない指標
この統計が公表しているのは離職率で、定着率は100から引いて作る。分母の置き方や期間の取り方で値が変わる仕組みは、定着率とは何をどう数えた割合かで整理した。事業所の規模で割った数字は規模別の定着率は42%から73%に、学歴別と年次別の内訳は3年以内離職率は大卒33.8%にある。
新卒以外も含めた1年あたりの業種別の値は、調査そのものが別になる(雇用動向調査)。そちらは定着率、業種別で17.1ポイント差。この記事の数字と直接は比べられない。
数えているのは雇用保険の加入と喪失
就職者は、令和4年3月1日から6月30日までに新規学卒として雇用保険に加入した人。そこから生年月日で学歴を推定している。離職者は、そのうち令和7年3月31日までに離職した人で、離職の理由も、辞めたあとどうなったかも区別していない。
転職しても、家庭の事情で辞めても、同じ1件として数えられる。雇用保険に入らない働き方で就職した人は、最初から母数に入っていない。
この66.2%で言えないこと
産業ごとの定着率は、その産業の仕事の中身を説明しない。給与、労働時間、配属の決まり方、どれもこの集計には入っていないため、44.6%と87.6%の差が何から来ているのかは、この表からは出てこない。
事業所の産業分類であることにも注意がいる。製造業の会社に入って、システムの部署で働いている人は製造業に数えられる。自分の職種が属する産業とは限らない。
それから、残った66.2%の中身も分からない。異動したのか、同じ仕事を続けているのか、辞めるつもりで在籍しているのか。残存は状態の記録であって、納得の記録ではない。
自分の職場を、産業の列に置いてみる
まず、自分の勤め先が上の表のどの行に当たるかを確かめる。次に、同期入社が何人いて、いま何人残っているかを数える。この2つを並べれば、全国の割合と自分の周りの割合の差がポイントで出る。
差が出たとき、原因を1つに決める必要はない。配属、残業の量、相談できる相手の数。条件を分けて4週間ぶん記録しておくと、全国の率を眺めるだけでは出てこない自分の職場の輪郭が、数字のかたちで残る。