離職率の計算、式は1つではない

離職率の式は、離職者数を1月1日現在の常用労働者数で割って100を掛けた値である。厚生労働省の雇用動向調査が置いている定義で、令和7年の調査では全国で13.7%だった。ただし分母をどこに置くかは調査ごとに違い、新卒の3年以内離職率では分母が就職者数に入れ替わる。同じ言葉で、数えている人も期間も別物になる。

だから求人票や社内資料で率を見たときは、式を先に確かめることになる。

分母は、年の初めにいた人数

雇用動向調査の算出式はこうなっている。

離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100

年初に100人いた事業所で1年のあいだに14人が辞めれば14.0%。20人の部署で3人なら15%。手元で出すぶんには、この掛け算と割り算だけで足りる。

引っかかるのは、期中に入った人が分母に入らないところ。年初に30人いた部署が1年で20人を採用し、その新しい20人のうち5人が辞めたとすると、分子は5、分母は30のままなので16.7%になる。採用を増やした年は、同じ辞め方でも率が高く出る。

離職者として数えるのは、調査対象期間中に事業所を退職した人と解雇された人である。他企業への出向者と出向復帰者は含み、同一企業内の他事業所への転出者は除く。つまり部署を移った人は分子に入らず、グループ会社への出向は入る。

分母に入るのは「常用労働者」

常用労働者は、期間を定めずに雇われている人と、1か月以上の期間を定めて雇われている人を指す。試用または見習い期間中の人、出向者も含む。1か月未満の契約で働く人は入らない。

パートタイム労働者も分母に入っている。1日の所定労働時間がその事業所の一般の労働者より短い人、あるいは所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない人という定義で、令和7年の離職率は一般労働者が11.4%、パートタイム労働者が19.9%。8.5ポイントの差がある。

ここが読むときの効きどころになる。パート比率の高い職場は、辞め方が同じでも全体の率が上に動く。 業種ごとの値を並べるときも同じことが起きていて、数値は16業種の入職率と離職率のほうに置いた。

年齢階級別だけ、分母の時点が動く

同じ概況の中で、1か所だけ分母の日付が違う。年齢階級別の入職率・離職率は、1月1日現在ではなく6月末日現在の常用労働者数で割っている。用語の定義に但し書きとして入っている扱いで、延べ労働移動率と転職入職率も年齢階級別では同じ日付に揃えられている。

年齢は、どの時点で数えるかを決めないと区分に割れない。そのための処理である。注意が要るのは、年齢階級別の表と全体の表を引き算して差を読むとき。分母の日付が半年ずれているぶんが、その差に混ざる。

新卒の3年以内離職率は、別の式で作られている

新規学卒就職者の離職状況は、雇用動向調査とは作りが違う。分母に置くのは、その年に就職した人の数。年初の在籍者数は使わない。

令和4年3月新規大卒就職者なら、生年月日が平成12年4月1日以前で、令和4年3月1日から6月30日までに新規学卒として雇用保険に加入した人を分母に置く。分子は、そのうち令和7年3月31日までに離職した人。割った値が33.8%。

標本調査ではない。事業所からハローワークに出された雇用保険の加入届から、生年月日と資格取得日・資格取得理由をもとに学歴ごとの新規学卒者と推定される就職者数を出し、その離職日から分子を数えている。離職理由も、辞めたあとの就業の状態も問わない集計である。

学歴別の値と1年目・2年目・3年目の内訳は、3年以内離職率は大卒33.8%にまとめた。

期間を1年から変えるとき、何が起きるか

年度で数えたい場合は、分母を4月1日現在の在籍者数に置き替え、分子を翌年3月末までの離職者にする。式の形は変わらない。失われるのは、公表値と横に並べられることのほうである。新卒が4月に入る職場では年度で切ったほうが人の動きと合うのに、全国の13.7%と比べる段で基準がずれてしまうという、この取り替えにはどちらを選んでも残るものがある。

月ごとに出す使い方も実務ではあるが、1か月ぶんの率を12倍しても年の率にはならない。辞める月は3月と9月に寄るので、その月だけ切り取れば高く出る。年計に対して季節性は消えている。

この値が答えていないこと

理由が入っていない。自分の意思で辞めた人、定年に達した人、契約期間が満了した人、解雇された人が、同じ1件として分子に数えられる。理由別の内訳は離職率の平均13.7%、男女で2.6ポイント差のほうにある。

辞めた人が次にどうなったかも入らない。同業への転職、別の業種への移動、学校に戻った人、働くのをやめた人が、どれも1件の離職として同じ重さで数えられている。

母数が小さいときの振れ幅も見えない。20人の部署では1人の増減が5ポイント動くので、全国平均との1〜2ポイントの差を、職場の違いとして読むことはできない。

100から引いた値を定着率と呼ぶ扱いについては、定着率とは何をどう数えた割合かに書いた。

自分の部署で出すなら、3つ決める

計算そのものは割り算ひとつで終わる。先に決めることが3つある。

  1. 誰を分母に入れるか。年初の在籍者数を使い、パートや契約の人を含めるかどうかを決めて、翌年も同じ扱いにする
  2. どの時点を基準にするか。1月1日か、年度始めの4月1日か
  3. 何を離職と数えるか。部署異動は入れない。出向と定年を入れるかは決めておく

去年1年に辞めた人数を年初の在籍者数で割れば、公表値と同じ形の数字が出る。20人の部署で3人なら15%。全国の13.7%との差は1.3ポイントだが、この母数では1人分の重みのほうが大きい。

率に出てこないものが、同じ職場に3つ残る。後任が入るまでの週数。引き継ぎに使えた日数。辞める理由を聞けたかどうか。離職率が同じ2つの職場でも、この3つはそれぞれ違った値をとるので、記録が4週ぶん貯まれば、割合の外側にあるものを自分の職場で起きたこととして並べられる。

出典

  1. 令和7年 雇用動向調査結果の概況 全体版(主な用語の定義、入職率・離職率の算出式、表1 常用労働者の動き)/厚生労働省/2025年(年計)・常用労働者5人以上の事業所から層化無作為抽出した約1万5,000事業所
  2. 令和7年 雇用動向調査結果の概況(結果の概要のページ)/厚生労働省/2026年8月31日公表
  3. 新規学卒就職者の離職状況 資料出所及び離職率の集計の考え方(雇用保険被保険者記録に基づく集計方法)/厚生労働省
  4. 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者。大学卒の3年以内離職率33.8%)/厚生労働省/2025年10月24日公表