従業員満足度、業種別に16ポイント差

業種別の満足度を公的統計で見ると、いちばん高い電気・ガス・熱供給・水道業で63.3%、いちばん低い運輸業,郵便業で47.2%。差は16.1ポイント。ただしこれは全年齢の会社員の数字ではない。15〜34歳の若年労働者に限った集計。厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査(個人調査、有効回答13,218人、2023年10月1日時点)の第20表から、職業生活全体について「満足」または「やや満足」と答えた人の割合を並べたもの。

17区分を並べる

在学していない若年労働者の、職業生活全体の満足度。満足計は「満足」と「やや満足」の合計、不満計は「やや不満」と「不満」の合計。

産業 満足 やや満足 満足計 不満計
電気・ガス・熱供給・水道業 14.0% 49.3% 63.3% 9.0%
学術研究,専門・技術サービス業 14.7% 46.7% 61.4% 10.9%
金融業,保険業 15.0% 46.2% 61.2% 11.5%
教育,学習支援業 21.4% 39.8% 61.2% 11.6%
鉱業,採石業,砂利採取業 14.3% 46.8% 61.1% 16.1%
情報通信業 15.7% 45.1% 60.8% 10.3%
不動産業,物品賃貸業 25.3% 34.9% 60.2% 12.8%
宿泊業,飲食サービス業 6.4% 53.0% 59.4% 13.3%
生活関連サービス業,娯楽業 21.6% 34.6% 56.2% 13.0%
卸売業,小売業 16.1% 37.3% 53.4% 14.6%
医療,福祉 13.1% 38.7% 51.8% 15.7%
製造業 12.7% 38.5% 51.2% 16.5%
複合サービス事業 8.7% 41.9% 50.6% 16.1%
建設業 15.4% 34.2% 49.6% 13.9%
サービス業(他に分類されないもの) 14.9% 34.2% 49.1% 16.6%
運輸業,郵便業 8.8% 38.4% 47.2% 18.0%
総数 14.3% 40.0% 54.3% 14.5%

製造業には内訳があって、機械関連製造業は満足15.2%とやや満足40.3%で満足計55.5%、素材関連製造業は9.7%と40.6%で50.3%、消費関連製造業は12.7%と32.9%で45.6%。「製造業」の51.2%は、この3つを束ねた数字。卸売業,小売業も分けると、卸売業61.4%、小売業48.7%で12.7ポイント離れる。

鉱業,採石業,砂利採取業だけは扱いを分けたい。公表されている表は割合だけで産業ごとの回答者数が載っておらず、この産業は母集団の事業所数も小さい。61.1%という値は幅を持って読む。

「満足」と答えるか「やや満足」と答えるか

満足計の順位と、「満足」だけの順位は一致しない。不動産業,物品賃貸業は「満足」が25.3%で全産業の中で最も高く、「やや満足」は34.9%。宿泊業,飲食サービス業は逆で、「満足」が6.4%と最も低いのに「やや満足」が53.0%あり、足すと59.4%まで上がる。

同じ「満足している側」に入っていても、強さが違う。上から2つの選択肢をまとめて1つの割合にすると、この違いは消える。ランキングの形で並べられた数字を見るときは、どこで線を引いた割合なのかを確かめる必要がある。

不満計の順位もまた別。満足計が5番目に高い鉱業,採石業,砂利採取業は、不満計16.1%で、製造業の16.5%や複合サービス事業の16.1%と並ぶ高さにある。満足が61.1%あって、不満も16.1%ある。真ん中の「どちらでもない」が薄いと、こういう分布になる。

事業所規模の差は8.7ポイント

同じ表には事業所規模の行もある。

事業所規模 満足計 不満計
1,000人以上 60.2% 12.2%
300〜999人 58.3% 13.2%
100〜299人 51.5% 15.2%
30〜99人 52.9% 17.4%
5〜29人 53.7% 12.9%

上と下の差は8.7ポイントで、業種の差16.1ポイントの半分ほど。順に下がる形でもなく、100〜299人で51.5%まで落ちたあと、5〜29人では53.7%に戻る。不満計に目を移すと、30〜99人の17.4%が最も高い。

年齢の差のほうが大きい

同じ15〜34歳の中でも、年齢階級で満足計が並びを作る。

年齢階級 満足計 不満計
15〜19歳 69.4% 7.6%
20〜24歳 58.2% 11.2%
25〜29歳 53.3% 15.3%
30〜34歳 51.6% 16.2%

15〜19歳と30〜34歳で17.8ポイント。業種間の16.1ポイントより大きい。

この2つは無関係ではない。産業ごとに若年労働者の年齢構成は違うので、業種の差として見えているものの中に、年齢構成の差が混ざっている。表は年齢と産業を掛け合わせた形では公表されていないため、どちらの効きが大きいかをこの表から分けることはできない。

何を測った数字か

設問は職業生活全体についての満足度で、選択肢は「満足」「やや満足」「どちらでもない」「やや不満」「不満」の5つ。概況ではこれを満足度D.I.(「満足」+「やや満足」の割合から「やや不満」+「不満」の割合を引いた値)として整理している。

項目は11ある。仕事の内容・やりがい、人事評価・処遇のあり方、職場の人間関係・コミュニケーション、賃金、労働時間・休日等の労働条件、職場の環境、雇用の安定性、福利厚生、教育訓練・能力開発のあり方、そして職業生活全体。在学していない若年正社員について概況が示すD.I.は、雇用の安定性が66.4ポイントで最も高く、職場の人間関係、コミュニケーションが57.3ポイント、仕事の内容・やりがいが55.2ポイント。賃金はマイナス5.9ポイントで、11項目の中で唯一マイナス。職業生活全体は37.8ポイントだった。

業種を1つの数字で比べると、この項目ごとの違いは見えなくなる。満足計が60%を超える業種でも、賃金の項目だけは低いという形は起こりうる。

調査の範囲と、この数字で言えないこと

調査対象は日本標準産業分類の16大産業に属し、常用労働者5人以上を雇用する事業所と、そこで働く満15〜34歳の労働者。個人調査は22,958人を対象に配り、13,218人が答えた(有効回答率57.6%)。時点は2023年10月1日。公表は2024年9月25日。

言えないことが3つある。ひとつ、35歳以上は入っていない。業種別に満足度を比べられる公的な表は、今のところ若年層に限られる。ふたつ、業種の平均は会社ごとのばらつきを消す。同じ産業の中に満足計80%の職場と30%の職場があっても、表には1つの数字しか出ない。みっつ、会社が実施するES調査の点数とこの割合は、設問も尺度も別物。会社の調査結果と並べて比べられる数字ではない。満足度の平均という数字をどう読むかは従業員満足度の平均、近い数字は4.92点に書いた。

業種を変える前に見る場所

16.1ポイントの差は、確率の差として読むのが近い。運輸業,郵便業から電気・ガス・熱供給・水道業に移れば満足する、という意味ではない。どちらの業種にも満足していない人が1割以上いて、どちらにも「どちらでもない」が4分の1前後いる。

手元でできるのは、11項目のうち自分がどこで下がっているのかを分けること。賃金なのか、労働時間なのか、評価の決まり方なのか、任される範囲なのか。項目が特定できれば、業種を変えるという大きな移動ではなく、同じ業種の別の職場で確かめるべき条件として書ける。

そのうえで業種を移るなら、移った先で同じ項目がどうなっているかを聞く。面談で確かめる項目が4つに絞れているほうが、業種のランキングを何度読み直すより早い。

出典

  1. 令和5年若年者雇用実態調査 統計表 個人調査 第20表 産業・事業所規模・性、年齢階級別 職業生活の満足度(厚生労働省、2023年10月1日現在、有効回答13,218人)
  2. 令和5年若年者雇用実態調査の概況(厚生労働省、2024年9月25日公表、個人調査22,958人に配付・13,218人が回答)
  3. 令和5年若年者雇用実態調査の概況 結果の概要(厚生労働省)