転職理由の推移、5年で動いた2つ

前職を辞めた理由を令和3年から令和7年まで並べると、本人の事情として答えられた6区分のうち、5年で2ポイント以上動いたのは2つだけだった。男性の「給料等収入が少なかった」が7.7%から9.9%へ2.2ポイント、女性の「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が10.1%から12.9%へ2.8ポイント。厚生労働省の雇用動向調査による。ほかの区分は1ポイント前後の上下で、5年たっても順位はほとんど動いていない。

男性の5年

個人の事情として答えられた6区分を、令和7年の割合が大きい順に並べた。単位は%。

区分 令和3年 令和4年 令和5年 令和6年 令和7年 5年の差
給料等収入が少なかった 7.7 7.6 8.2 10.1 9.9 +2.2
職場の人間関係 8.1 8.3 9.1 9.0 8.9 +0.8
労働時間、休日等の労働条件 8.0 9.1 8.1 8.6 8.5 +0.5
会社の将来が不安だった 6.3 7.1 5.2 7.4 6.9 +0.6
能力・個性・資格を生かせなかった 4.3 4.0 5.1 3.8 5.2 +0.9
仕事の内容に興味を持てなかった 5.0 4.5 7.4 4.4 5.2 +0.2

給料が上がったのは令和5年から令和6年にかけてで、8.2%から10.1%へ1.9ポイント。5年ぶんの動きのほとんどが、この1年に集まっている。人間関係は横ばい。5年を通して8.1%から9.1%のあいだにおさまっていて、順位も2位から動いていない。

女性の5年

区分 令和3年 令和4年 令和5年 令和6年 令和7年 5年の差
労働時間、休日等の労働条件 10.1 10.8 11.1 12.8 12.9 +2.8
職場の人間関係 9.6 10.4 13.0 11.7 11.5 +1.9
給料等収入が少なかった 7.1 6.8 7.1 8.3 8.6 +1.5
仕事の内容に興味を持てなかった 3.8 5.9 5.0 3.6 4.6 +0.8
会社の将来が不安だった 4.5 4.4 4.6 5.1 4.3 -0.2
能力・個性・資格を生かせなかった 4.8 4.3 5.4 3.7 3.9 -0.9

女性の「労働時間、休日等の労働条件」は、この5年で一度も下がっていない。10.1、10.8、11.1、12.8、12.9と、毎年前の年を上回った。6区分のなかで、5年連続して上がり続けたのはこれだけである。

人間関係は令和5年の13.0%が山。そこから11.7%、11.5%と下げてきたものの、令和3年の9.6%よりはまだ高い位置にある。給料は令和4年にいったん6.8%まで下がってから、8.6%まで戻した。

1年だけ跳ねて、翌年戻る区分がある

男性の「仕事の内容に興味を持てなかった」は、令和4年4.5%、令和5年7.4%、令和6年4.4%。1年で2.9ポイント上がって、翌年に3.0ポイント下がった。この区分を令和5年の数字だけで見れば「増えている」と書けるし、令和6年だけで見れば「減っている」と書ける。

女性の人間関係も似た形。令和4年10.4%から令和5年13.0%へ2.6ポイント上がり、その後2年かけて11.5%まで戻っており、山になった1年だけを取り出せば、人間関係を理由にした転職が急に増えた年として説明できてしまう。

区分ごとの割合は数%の水準にあって、抽出調査の誤差もそこに乗る。1年ぶんの上下を傾向として読むと、翌年に反対の結論を書くことになる。5年並べる意味は、そこにある。

減り続けているのは、本人の不満ではない区分

男性の「その他の理由(出向等を含む)」は15.0、14.7、14.0、13.5、12.1と5年続けて下がり、合計で2.9ポイント減った。「会社都合」も7.3%から5.3%へ2.0ポイント減っている。女性の会社都合は7.8%から6.2%。

一方で「定年・契約期間の満了」は男性で16.5、15.2、16.9、14.1、16.1と上下し、方向が定まらない。「その他の個人的理由」も男性19.1%から16.8%のあいだを行き来していて、令和6年の20.2%から令和7年の16.8%へ3.4ポイント下がったのが、この5年で最大の単年の動きだった。

令和3年より前の数字とは、つなげられない

この調査は令和3年から、前職を辞めた理由を「個人的理由」と「その他の理由」に区分し直し、個人的理由に「その他の個人的理由」という区分を新たに置いた。令和3年の概況が、表の注でそう断っている。改定の年。

区分が増えれば、それぞれの割合は変わる。令和2年以前の数字を同じ折れ線に載せた資料を見かけたら、改定をまたいでいないかを確かめたほうがいい。この記事が令和3年からしか並べていないのは、そのためである。

この数字が答えていないこと

理由はひとつだけ選ぶ形式で聞かれている。だから割合が上がったことは、その不満を持つ人が増えたことを意味しない。ほかの理由を選ぶ人が減るだけでも、同じ人数のまま割合は上がる。分母は転職入職者の数。

年齢別・性別の掛け合わせでどう動いたかは、この記事では追っていない。直近1年の年齢別の分布は転職理由ランキング、男女で1位が違うにまとめてある。

なぜ動いたのかも、この調査からは出てこない。景気や賃金の動きと結びつけて説明している資料はあるが、その対応づけを確かめる材料は同じ調査の中にないので、ここでは並べるところまでにとどめる。

自分の推移を、5年ぶん作る

全国の推移が横ばいでも、自分の理由は変わる。去年は労働時間、今年は給料。そういう入れ替わりは、そのときどきの気分として流れていってしまうので、日付をつけて残しておかないと、あとから並べ直すことができない。

やることは1年に1回。いま辞めたいと思う理由をこの6区分のどれかに置いて、日付と一緒に1行書く。3年ぶん貯まると、自分のなかで何が居座っていて何が入れ替わったかが見える。居座っているほうが、面談で持ち出す価値のある材料。

出典

  1. 令和7年雇用動向調査 結果の概況(表5 転職入職者が前職を辞めた理由別割合。令和7年・令和6年の値)/厚生労働省/調査対象14,840事業所・平均有効回答率60.9%・集計入職者数57,896人
  2. 令和5年雇用動向調査 結果の概況(表5。令和5年・令和4年の値)/厚生労働省
  3. 令和3年雇用動向調査 結果の概況(表6。令和3年の値と、令和3年からの区分改定の注記)/厚生労働省
  4. 雇用動向調査 令和7年 結果の概要(一覧ページ)/厚生労働省