面接の逆質問で上司の何を聞くか

面接の逆質問で上司について確かめられるのは、人柄ではなく運用のほうです。面談がどれくらいの頻度で実際に行われているか、どこから承認が要るか、直属の部下が何人いるか。この3つは数えられる形で答えが返ってくるうえ、入社したあとに自分で数え直して照合できるので、聞いた時間が無駄になりにくい。「どんな方ですか」への答えは、誰が答えても好意的な人物像に寄るので、聞いた時間だけが減る。

評価を取りにいく質問と、情報を取る質問

逆質問が志望度やコミュニケーションを見る材料になっているのは、上位の解説記事が書いているとおりです。その前提は変わらない。

ただ、面接は相互に選ぶ場でもある。入社したあとで自分の目で確かめられる情報と、入る前にしか聞けない情報を分けてみると、3つか4つしかない質問の枠をどこに使うべきかは自然に決まってきて、残るのは運用の話だけになる。制度の一覧は求人票と採用ページに書いてある。書いていないほうを聞く。

質問の姿勢が前向きに見えるかどうかは、聞く中身より聞き方で決まる部分が大きい。面談の頻度や決裁の範囲を具体的に聞く人は、入社したあと自分がどう動くかを考えている人として受け取られることのほうが多く、意欲を疑われる場面はまず無い。心配は要らない。

上司について聞けるのは、この5つ

配属先の直属の上司に関して、事実の形で返ってくる質問はだいたい次に収まる。

  • 個別面談の頻度 — 直近半年で、実際に何回ありましたか
  • 決裁の経路 — 自分の判断で進められる範囲と、承認が要る範囲の線はどこですか
  • フィードバックの場 — 評価の面談は年に何回で、その間のすり合わせはどこでやりますか
  • 部下の人数 — その上司が直接見ているのは何人ですか
  • 上司が替わる周期 — 直近3年で、そのポジションは何回替わりましたか

部下の人数は効く。同じ「月に1回」でも、10人を1人で見ている上司と4人を見ている上司とでは、1回に割ける時間も、前回の話をどれだけ覚えていてもらえるかも変わってくる。数字は聞けば出てくる。

「1on1をやっています」という答えが返ってきたら、そこで止めずに直近の回数まで聞く。パーソル総合研究所が2024年6月に行った調査(n=5,773)では、直近半年に1on1を受けた人は55.7%、企業規模別では42.1%から66.4%まで開いていた。制度としてあることと、自分に対して行われることは、同じではありません。詳しくは1on1実施率の記事に書いた。

事実が返る質問の形

主観しか返らない質問には、共通の特徴がある。形容詞で聞いていることです。

「雰囲気はどうですか」「残業は多いですか」「相談しやすい方ですか」。どれも、答える側の基準で返ってくる。代わりに、期間・回数・直近の実例・例外の4つのどれかを入れて聞く。

  • 期間を入れる: 「直近3か月では」「昨年度は」
  • 回数を聞く: 「何回ありましたか」「何人くらいですか」
  • 直近の実例を求める: 「いちばん最近の例を1つ教えてください」
  • 例外の条件を聞く: 「その運用が崩れるのは、どんなときですか」

4つ目が使いやすい。例外の条件を聞くと、平常時の説明では出てこない話が出る。繁忙期、欠員、大口の案件。どんなときに運用が崩れるのかを先に聞いておけば、入社してから同じ状況にぶつかったときに、それが一時的な例外なのか常態なのかを自分で判断できる。

段階ごとに、答えられる人が違う

一次・二次・最終で質問を変える理由は、見られ方の違いだけではない。答えを持っている人が違う。

人事が答えられるのは、制度として決まっていること。有給休暇の取得率、時間外労働の協定の上限、評価制度の仕組み、面談が制度化されているかどうか。現場の責任者が答えられるのは運用で、実際の頻度、直近の実例、例外の起き方はここで聞く。役員に聞くなら、これから変える予定のあること。組織の再編や異動の考え方は、現場の人が答えにくい。人事に現場の運用を聞いても制度としての説明しか返ってこないことが多いのは、答える人が毎日その現場にいるわけではないからで、質問の仕方が悪いわけではありません。

順番も決まってくる。一次で制度の数値を取り、二次でその数値が現場でどう運用されているかを確かめる。最終では、その運用が今後変わる予定があるかを聞く。

残業と評価と裁量の聞き方

先に調べる。すでに公表されている数値を面接で聞き直すのは、3つしかない枠の無駄づかいになる。

年次有給休暇の取得率は、令和7年就労条件総合調査で平均66.9%。この数値を持っていれば、返ってきた答えが平均のどちら側かを自分で判断できる。平均の意味と限界は有給取得率の平均の記事にまとめた。

残業は、平均より分散を聞く。「月平均20時間」と「繁忙期は月45時間、閑散期は5時間」とでは、月の平均が同じでも、保育園の迎えや通院や勉強といった時刻を固定して入れたい予定の組み方がまるで変わるからです。何を労働時間に数えているかも職場によって違うので、実労働時間の記事の定義も見ておいてほしい。

評価については、基準そのものより、基準が本人に開示されるタイミングを聞く。期初に渡されるのか、期末に初めて見るのか。ここで差が出る。裁量は、金額と範囲で線を引いてもらう。

聞いた答えは、記録して持ち越す

面接で聞いた運用は、入社3か月後に自分で数え直せる。

面談の回数、承認が要る場面、時間外労働の実績。手帳の端でいい。面接で出した質問と返ってきた答えをそのまま書き写しておけば、3か月後に同じ項目を数えたときに、どこがどれくらいずれたのかが並べるだけで分かる。差が出た項目は、その職場で運用の崩れやすい場所を指している。

次に転職を考えるときに使えるのは、この差のほうです。印象は3か月で上書きされる。

次にやること

  1. 求人票と採用ページで、制度として公表されている数値を書き出す(有給取得率、時間外労働、面談の制度)
  2. 公表されていない運用を3つに絞る。上の5つの観測点から選ぶ
  3. それぞれを、期間・回数・直近の実例・例外のどれかを入れた形に書き換える
  4. 面接の段階ごとに、誰に聞くかを割り振る
  5. 答えをその日のうちに書き留める

質問は3つあれば足ります。数を増やすより、1つの答えに「直近の例を1つ」と重ねるほうが、返ってくる情報は増える。

それでも、ずれは出る。面接で聞ききれなかったものが入社後のどこに現れやすいのか、何を記録しておけばそれが相性の問題なのか引き継ぎの不足なのかを分けられるのかは、入社後のギャップは何が原因かにまとめた。

出典

  1. 部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査/パーソル総合研究所/2024年6月調査(スクリーニング調査 n=5,773)
  2. 令和7年就労条件総合調査 結果の概況(第5表 年次有給休暇の取得状況)/厚生労働省/調査客体6,448社・有効回答3,820社