転職理由の本音を統計から探すと、同じ年の同じ調査の中で、答える人によって数字が4倍変わる。勤め先が答えた離職理由では72.0%が「その他の個人的理由」に入る。いっぽう、転職した本人が答えた前職を辞めた理由で「その他の個人的理由」を選んだのは、男性16.8%、女性23.8%だった。
どちらも厚生労働省の令和7年雇用動向調査(2025年1年間、調査対象14,840事業所、平均有効回答率60.9%)。会社の記録に残る理由と、本人が答えた理由は、同じ出来事を別の粒度で書き留めている。
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転職理由の本音を統計から探すと、同じ年の同じ調査の中で、答える人によって数字が4倍変わる。勤め先が答えた離職理由では72.0%が「その他の個人的理由」に入る。いっぽう、転職した本人が答えた前職を辞めた理由で「その他の個人的理由」を選んだのは、男性16.8%、女性23.8%だった。
どちらも厚生労働省の令和7年雇用動向調査(2025年1年間、調査対象14,840事業所、平均有効回答率60.9%)。会社の記録に残る理由と、本人が答えた理由は、同じ出来事を別の粒度で書き留めている。
勤め先が答えた離職理由の構成比を見ると、個人的理由が74.3%。その内訳は結婚0.5%、出産・育児1.0%、介護・看護0.9%で、残る72.0%は「その他の個人的理由」にまとめられている。集計された離職者は73,332人。
契約期間の満了12.6%、事業所側の理由6.5%。足しても2割に届かない。残りの大半、つまり辞めた人の7割以上について、会社の手元に残る記録は「個人的な事情で辞めた」という以上のことを何も語らない1行になっている。
転職入職者57,896人に聞いた側の表では、「その他の個人的理由」は男性16.8%、女性23.8%にとどまる。残りは12の区分に割れていく。
男性は「定年・契約期間の満了」16.1%が最も多く、「給料等収入が少なかった」9.9%、「職場の人間関係が好ましくなかった」8.9%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」8.5%、「会社の将来が不安だった」6.9%と続く。女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%が最も多く、「職場の人間関係が好ましくなかった」11.5%、「給料等収入が少なかった」8.6%の順。男女別の順位と年齢ごとの入れ替わりは転職理由ランキング、男女で1位が違うに、5年ぶんの動きは転職理由の推移、5年で動いた2つに表で出した。
本人に聞く票には、人間関係、給料、労働時間、仕事の内容、能力を生かせたかという区分がある。勤め先に聞く票には無い。あるのは契約期間の満了、経営上の都合、出向、出向元への復帰、定年、結婚、出産・育児、介護・看護、その他。
会社の記録で理由が消えるのは、会社が隠しているからではなく、書き込む欄が最初から用意されていないため。人間関係で辞めた人も、給料で辞めた人も、同じ「その他の個人的理由」の箱に落ちる。勤め先が答えた側の順位は、離職理由ランキング、74.3%が個人的理由にまとめた。
比べるときに置いておきたい条件がある。離職者73,332人の集計と、転職入職者57,896人の集計は、母集団が別。前者は辞めた人すべて、後者は辞めて次の勤め先に入った人のうち、調査時点で在籍していた人に限られる。自営業になった人も、辞めたまま働いていない人も、後者には入らない。
だから72.0%と16.8%を引き算して「55.2ポイントの差が本音」とは言えない。言えるのは、理由を記録する仕組みが2つあり、片方では中身が残らないという事実のほう。
退職を申し出るときに会社へ伝えた理由と、心の中の理由。その2つを同じ人に並べて聞いた設問は、雇用動向調査には入っていない。表5が聞いているのは、調査の時点で本人が選んだ区分であって、退職時に会社へ伝えた言葉ではない。
面接で話す理由との差も同じ。建前と本音がどれくらいの比率で食い違っているのかを公的統計から出すことは、調査票にその設問が無い以上、いまのところできない。推定なら書けるけれど、推定は数字にならない。
いま辞めるとしたら、本人票の13区分のどれに丸を付けるか。1つに絞れないなら、順番を付けて2つ3つ書き出す。次に、勤め先が同じ出来事をどう記録するかを考える。おそらく「その他の個人的理由」。
この落差が、転職の面談で言葉に詰まる理由にもなる。区分に丸を付けただけでは、何が起きていたかは残らない。労働時間なら週あたりの残業時間、人間関係なら相談できた回数、給料なら前年との差額。数えられる単位まで割っておくと、理由は自分の手元に記録として残る。
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