時短勤務で1日の所定労働時間が6時間になっているなら、残業代の起算点も6時間。8時間を超えてからではない。ただし6時間を超えて8時間までの2時間は、労働基準法が割増を義務づけていない範囲で、通常の時間単価のまま支払われることがある。割増が法律で義務になるのは、1日8時間または1週40時間を超えた分から。この2段の構造を知らないと、明細の残業手当が少なく見える。
制度そのものの中身は時短勤務とは、原則6時間への短縮に書いた。ここでは残業の時間と賃金の対応だけを追う。
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時短勤務で1日の所定労働時間が6時間になっているなら、残業代の起算点も6時間。8時間を超えてからではない。ただし6時間を超えて8時間までの2時間は、労働基準法が割増を義務づけていない範囲で、通常の時間単価のまま支払われることがある。割増が法律で義務になるのは、1日8時間または1週40時間を超えた分から。この2段の構造を知らないと、明細の残業手当が少なく見える。
制度そのものの中身は時短勤務とは、原則6時間への短縮に書いた。ここでは残業の時間と賃金の対応だけを追う。
残業という語が指すものは2つに分かれる。所定労働時間を超えた時間と、法定労働時間を超えた時間。
所定労働時間は、就業規則や労働条件通知書で会社が定めた時間。短縮して6時間にしたなら、その日の所定労働時間は6時間。これを超えて働いた時間には賃金が発生する。働いた時間に対する賃金なので、ここは短縮していない人と同じ理屈。
法定労働時間は労働基準法第32条の1日8時間・1週40時間で、こちらを超えた分に割増賃金が義務づけられる(第37条)。6時間勤務の人が2時間残業しても、法定労働時間の8時間には届かない。だから割増の義務は生じない。この範囲を法定内残業と呼ぶ。
法定内残業に割増を付けるかどうかは、就業規則の定め方で決まる。1.25倍で払う会社もあれば、1.0倍の会社もある。自分がどちらかは、賃金規程の割増賃金の条文を読めば分かる。読む場所は1か所。「時間外労働に対する割増賃金は」で始まる条文に、所定労働時間を超えた分と法定労働時間を超えた分を分けて書いているか、それとも法定労働時間を超えた分だけに率を定めているかで、6時間から8時間までの2時間の扱いが決まる。
8時間を超えた分からは、労働基準法が定める率が効く。
| 労働の種類 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働(月60時間以下) | 25%以上 |
| 時間外労働(月60時間超) | 50%以上 |
| 法定休日の労働 | 35% |
| 深夜労働(22時〜5時)の加算 | 25%以上 |
| 月60時間超の時間外労働を深夜に行った場合 | 75% |
月60時間を超える部分の50%は、大企業では2010年4月から、中小企業では2023年4月1日から適用されている。月60時間の算定に法定休日の労働時間は入らないが、法定休日以外の休日に働いた時間は入る。
時短勤務で気をつける場所は深夜。6時間勤務の終業が16時だとしても、残業が22時を越えれば深夜の加算が付く。所定労働時間の長さとは関係なく、時刻で決まる。始業を遅らせる形で短縮している人は、1日の労働時間が6時間でも終業が22時を越えることがあるため、深夜の加算と、8時間に届かないので時間外の割増は付かないという組み合わせが起きる。
残業代の額は時間単価で決まる。月給制の時間単価は、月によって定められた賃金を1か月平均所定労働時間数で割って出す(労働基準法施行規則第19条)。1か月平均所定労働時間数は、年間の所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けて12で割る。
数字を入れてみる。年間の所定労働日数が240日で、1日の所定労働時間が6時間なら、240×6÷12=120時間。基本給が18万円なら、18万円÷120時間=1,500円。短縮前が1日8時間で基本給24万円だった人は、240×8÷12=160時間で、24万円÷160時間=1,500円。基本給が所定労働時間に比例して下がっていれば、時間単価は変わらない。
変わるのは、減らない手当がある場合。割増の基礎に入る手当が据え置きのまま所定労働時間だけ短くなれば、分母が小さくなるので時間単価は上がる。
1日2時間の残業をした日の計算は、こうなる。6時間から8時間までの2時間に1,500円×2=3,000円。法定内残業に1.25倍を定めている会社なら3,750円。さらに8時間を超えて1時間働けば、1,500円×1.25×1=1,875円が加わる。
時間単価を計算する元になる賃金から、会社が除外できるものは法律で限定されている。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つ(労働基準法第37条第5項、同法施行規則第21条)。
役職手当や業務手当、資格手当は、この7つに入らない。入っていないのに時間単価の計算から抜けていれば、残業代は本来より低く出る。明細で確かめる順番は、基本給と各手当の額を足した数字を作り、それを1か月平均所定労働時間で割って、明細の残業単価と合うかどうか。
住宅手当も、住宅に要する費用に応じて支給されるものでなければ除外できない。一律定額で支給される住宅手当は、基礎から外せない。名前が同じでも扱いが違う。
残業代の計算より手前に、残業を免除してもらう仕組みがある。所定外労働の制限(育児・介護休業法第16条の8第1項)。小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけない。
令和7(2025)年4月1日に、この対象が3歳未満の子を養育する労働者から小学校就学の始期に達するまでに拡大された。請求は1回につき1か月以上1年以内の期間について、開始の日と終了の日を明らかにして行う。
ここが見落とされやすいところ。所定外労働の制限の請求に係る制限期間は、所定労働時間の短縮措置が適用されている期間と重複して請求できる。つまり6時間への短縮と残業の免除は、同時に使える。短縮だけを申し出て残業が続いている状態なら、請求がもう1本残っている。
除かれるのは日々雇い入れられる者。加えて、継続して雇用された期間が1年に満たない労働者などを請求できないこととする労使協定があれば、対象外になる。介護のほうは第16条の9で、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求でき、回数の制限が無く、介護終了までの期間について請求できる。
「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかどうかは、その労働者が所属する事業所を基準に、担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易等を考慮して客観的に判断される。あらましは、単に所定外労働が事業の運営上必要であるとの理由だけでは拒むことは許されないと書いている。事業主には、請求どおりに制限を受けられるよう通常考えられる相当の努力をすべきものとされている。
反対の向きの決まりもある。労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限や所定労働時間の短縮措置を適用することは、不利益な取扱いに当たる。免除を請求していないのに残業から外される運用も、ここで止まっている。
管理監督者(労働基準法第41条第2号)は、労働時間・休憩・休日の規定の適用を受けないため、所定外労働の制限の対象としない取扱いでも差し支えないとされている。ただし管理監督者に当たるかは、名称ではなく実態で判断される。職場で管理職として扱われていても、同号の管理監督者に当たらないなら、制限の対象。
自分の残業代が合っているかを確かめるのに要るのは、次の4つ。
2を1で割れば時間単価が出る。3で6時間から8時間までの扱いが決まり、4で8時間超と深夜の時間数が出る。あとは掛け算。この4つを並べると、明細の残業手当の額を自分で再現できる。合わないなら、どの項目で差が出ているかまで特定できる。
残業代の計算が合っているかとは別に、記録しておくと条件を話すときに使える数字が3つある。1週間のうち所定を超えた日の数。超えた時間の合計と、そのうち22時以降の時間。残業が発生した理由の区分(自分の担当分か、他者からの依頼か、会議の時刻か)。
4週ぶん貯めると、残業の量ではなく発生の形が見える。たとえば週のうち残業が出る日が水曜と金曜に寄っていて、どちらも他者からの依頼で16時以降に動いているなら、まず話す相手は依頼の出どころになる。発生の形が分かると、免除を請求するのか、業務の分担を変えるのか、始業の時刻を動かすのかの判断が分かれる。
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