厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和4年7月改定)は、労働者側のメリットを4つ、留意点を3つ挙げている。所得の増加はメリットの3番目で、残る3つは収入以外のこと。留意点のほうは、時間と体の管理、3つの義務、そして保険の適用に分かれる。
どちらも公的文書に書かれた並びなので、勤務先の就業規則に付いている条件がどこから来ているかも、同じ文書から追える。
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厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和4年7月改定)は、労働者側のメリットを4つ、留意点を3つ挙げている。所得の増加はメリットの3番目で、残る3つは収入以外のこと。留意点のほうは、時間と体の管理、3つの義務、そして保険の適用に分かれる。
どちらも公的文書に書かれた並びなので、勤務先の就業規則に付いている条件がどこから来ているかも、同じ文書から追える。
1つ目が、離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。2つ目は、本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。3つ目に所得が増加する。4つ目が、本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。
4つのうち3つは、金額の話をしていない。本業を続けたまま次の形を試せること、そこが並びの芯になっている。
ガイドラインは副業・兼業を行う理由も列挙している。収入を増やしたい。1つの仕事だけでは生活できない。自分が活躍できる場を広げる。ほかに、別の分野の人とつながりができる、時間のゆとりがある、現在の仕事で必要な能力を活用・向上させる、といった理由が並ぶ。
就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である、と書かれている。主語が労働者自身になっているのは、会社が全部を把握するわけではないため。
時間の上限のほうは、制度として決まっている。労基法38条1項により、他社に雇われて働く場合の労働時間は本業と通算される。通算して適用されるのは、法定労働時間と、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件。いっぽう36協定で延長できる限度時間は事業場ごとの規制なので、通算の対象から外れる。上限の数え方は残業時間の上限、原則45時間の数え方にある。
ここに段差がある。ガイドラインは、健康確保措置の実施対象者の選定に当たって、副業・兼業先における労働時間の通算をすることとはされていない、と明記している。労働時間は足されるのに、健康診断や面接指導の対象かどうかの判定では足されない。
例外が1つ。使用者の指示により副業・兼業を開始した場合は、原則として副業・兼業先の使用者との情報交換により、それが難しい場合は労働者からの申告により把握し、自らの事業場における労働時間と通算した労働時間に基づき健康確保措置を実施することが適当である、とされている。自分で始めた副業と、会社に言われて始めた副業で、扱いが変わる。
職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要である、という1行。この3つは、会社が副業を制限できる場合の整理と対応している。
ガイドラインがまとめた裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由で、企業が制限できるのは4つの場合に限られる。労務提供上の支障があるとき。業務上の秘密が漏洩するとき。競業により自社の利益が害されること。自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為があるとき。就業規則の条件が、このどれに当たるのかを読める。
1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要である、と書かれている。中身は要件のほうを見ると分かる。雇用保険は、同一の事業主の下で1週間の所定労働時間が20時間未満である者、継続して31日以上雇用されることが見込まれない者を被保険者から外している。
短い雇用を2つ重ねても、それぞれが20時間に届かなければ、どちらでも被保険者にならない形があり得る。65歳以上については、令和4年1月から本人の申出を起点に2つの事業所の労働時間を合算して適用する制度が試行的に始まっている。厚生年金保険と健康保険の適用要件は、事業所ごとの判断。
税のほうは1行で済む。20万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整ではなく個人による確定申告が必要。
企業のメリットとして挙がるのは4つ。労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得すること。労働者の自律性・自主性を促すこと。優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上すること。労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながること。
企業側の留意点は1つにまとめられている。必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要である。届出制を設けておくことが望ましいとされているのは、この把握のため。
副業を希望する人の規模は、統計で数えられている。令和4年就業構造基本調査で、非農林業従事者のうち追加就業希望者は493万人。5年前に比べ93万人の増加。希望を持つ人のほうが、実際に副業がある人(305万人)より多い。
自分の側で測るのは2つ。本業の所定外労働が月に何時間あるか。始業と終業の時刻、働く場所をどこまで自分で決められるか。この2つを4週ぶん記録すると、足せる時間と、足したときに通算の上限へどれだけ近づくかが見える。
会社の側は、公表されているかどうかから見られる。企業は、副業・兼業を許容しているか否か、条件付許容の場合はその条件について、自社のホームページ等において公表することが望ましい、とガイドラインに入った。公表が無ければ、就業規則の条項と届出先を見る。
就業規則の副業の条項を読んで、条件が時間に関わるものか、秘密や競業に関わるものかを分ける。前者なら記録で説明できる。後者なら、副業先の事業内容と業務内容の説明が要る。
もう一つは、本業の側の条件。所定外労働の量と、時間と場所の自由度。どちらも自分で測れる数字で、副業を足すかどうかの判断材料になるだけでなく、異動や配置の相談でそのまま使える。
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