1日8時間の所定労働時間を6時間に短縮すると、基本給は短縮後の所定時間の比で計算される。8時間から6時間なら4分の3。短縮した2時間分を無給として扱う事業所は79.4%を占める(厚生労働省 令和5年度雇用均等基本調査)。ただし動くのは基本給だけではない。賞与、手当、社会保険料、将来の年金記録が、それぞれ別の決まりで下がったり下がらなかったりする。
時短勤務の給料は何割になるか
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短縮した分の賃金は、各社の規定で決まる
働かなかった時間に賃金を支払わない扱いが出発点になる。育児・介護休業法は所定労働時間を短縮する措置を事業主に義務づけているが、短縮した時間分の賃金を支払うことまでは義務づけていない。だから扱いが事業所ごとに分かれる。
令和5年度雇用均等基本調査で、育児のための所定労働時間の短縮措置がある事業所の回答は、短縮時間分の賃金を無給とするが79.4%、一部有給が11.4%、有給が9.1%だった。無給が8割。
無給の場合の計算は比例で、式は「基本給 × 短縮後の所定労働時間 ÷ 短縮前の所定労働時間」になる。1日8時間で月20日働く人の月の所定労働時間は160時間。6時間に短縮すると120時間で、比は0.75。基本給が24万円なら18万円。1日7時間45分の事業所で5時間45分に短縮した場合は、465分に対して345分なので比は約0.74で、短縮する時間が同じ2時間でも比は少し変わる。
誰が短縮を申し出られるかと、いつまで使えるかは時短勤務とは、原則6時間への短縮に書いた。
手当は、支給の条件がどこに掛かっているか
手当が減るかどうかは、名前ではなく支給の条件で決まる。賃金規程を開いて、各手当の支給条件に労働時間が入っているかを見る。
通勤手当の条件は出勤日数や定期券の実費で、所定労働時間を短くしても出勤する日数が変わらなければ金額は動かない。住宅手当や家族手当のように人の属性で支給されるものも、条件に労働時間が入っていなければ短縮では動かない。役職手当は役職に対する支給なので、役職が変わらないかぎり同じ。
逆に、支給条件が時間や実績に掛かっている手当は連動する。精皆勤手当、交替勤務手当、時間外手当。このあたりは勤務の形が変わると金額が変わる。名前では判断できない。たとえば「業務手当」という名前でも、支給条件に「1日の所定労働時間を8時間勤務する者」と書かれていれば6時間勤務では支給の対象から外れるし、逆に「正社員に支給する」とだけ書かれていれば所定労働時間を短縮しても金額は動かない。
賞与の減り方は、算定基礎に何を置いているか
基本給に率を掛けて計算する賞与は、基本給が0.75になれば賞与も0.75になる。算定基礎が基本給なので、そこが下がればそのまま効く。
出勤率や評価点で算定する賞与は、規定の書き方で結果が変わる。所定労働時間の比で按分すると書いてあれば比例し、書いていなければ評価の付け方次第。退職金の算定に短縮期間をどう入れるかも、各社の規定で決まる部分。
自分の会社がどちらかは、賃金規程か退職金規程の「算定の基礎となる賃金」の定義を読むと分かる。
社会保険料は、届け出た月から下がる
標準報酬月額は毎年4月から6月の報酬で決まり、その年の9月から翌年8月まで使われる。時短勤務で報酬が下がっても、この仕組みのままでは保険料が下がるのは次の改定まで待つことになる。手取りが二重に減るのはこの期間。
3歳未満の子を養育している人には、待たずに改定する仕組みがある。育児休業等終了時報酬月額変更届を出すと、育児休業の終了日の翌日が属する月以後3か月間の報酬の平均で標準報酬月額を計算し直し、4か月目から改定される。要件は2つ。改定前と改定後の標準報酬月額に1等級以上の差があること、3か月のうち少なくとも1か月で支払基礎日数が17日以上あること(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)。
育児休業を取らずに時短勤務へ入った場合や、要件に当たらない場合は、通常の随時改定か定時決定を待つことになる。届出は被保険者が申し出て事業主が提出する形なので、申し出ないと始まらない。ここが落とし穴。
年金の記録は、申し出れば従前の水準で残る
標準報酬月額が下がると、将来受け取る厚生年金の額も下がる。これを止める仕組みが、養育期間標準報酬月額特例。3歳未満の子を養育する期間について申し出ると、養育を始める前の高いほうの標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして、年金額を計算する。
対象の期間は、子の養育を始めた月から3歳の誕生日のある月の前月まで。従前の標準報酬月額は、原則として養育開始月の前月の額を使う。申出より前の期間についても、申出日の前月までの2年間はさかのぼって対象になる。
ただし、みなすのは年金額の計算だけ。保険料の負担額と健康保険の給付は、実際の標準報酬月額で計算される。保険料は下がったまま、年金記録は従前のまま、という状態にできる。これも申出が要る手続きで、事業主を経由して出す。
給付は、支払われた賃金の10%
2025年4月に育児時短就業給付金が創設された。2歳未満の子を養育するために1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する雇用保険の被保険者が対象で、支給額は各月に支払われた賃金の10%。
ここで間違えやすいのは、10%が掛かる先。減った金額の10%ではなく、時短勤務中に支払われた賃金の10%。賃金18万円なら1万8千円が目安になる。支払われた賃金が育児時短就業開始時賃金月額の90%を超えて同額までの範囲にあるときは、賃金と給付の合計が開始時の水準を超えないように支給率が調整されるため、短縮の幅が小さい月ほど給付の率は下がる。
受給には、育児休業給付の対象だった育児休業から引き続き同一の子について時短就業を開始したか、開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月あることが要る。短縮の措置であることを示す書類(労働条件通知書、育児短時間勤務申出書、就業規則など)の提出も求められる。
測り方は、明細と規程から5つ拾うこと
自分の給料がどう変わるかを見積もるには、次の5つを書き出す。
- 基本給の額と、短縮前・短縮後の所定労働時間
- 手当ごとの支給条件(労働時間に掛かっているか)
- 賞与の算定基礎に置かれている賃金
- 現在の標準報酬月額と等級
- 給与明細の控除欄にある社会保険料の額
1と2と3で、総支給額がどこまで下がるかが出る。4と5は、その下がり方が保険料にいつ反映されるかを決める。この5つが揃えば、総支給額から社会保険料と所得税を引いた額として、短縮後の手取りを1か月ぶん自分で組み立てられるし、育児時短就業給付金の対象なら支払われた賃金の10%をそこに足して見積もれる。所要は30分ほど。
比例より大きく下がっているとき
育児・介護休業法は、短時間勤務制度の申出や利用を理由とする不利益な取扱いを禁じている。短縮した時間の比で計算した額より実際の支給が低いなら、どの項目で差が出ているかを1つずつ突き合わせる。基本給か、手当か、賞与の算定か。
差の原因が規程に書かれていれば、それは規程の内容の話になる。書かれていないなら、計算の誤りか運用の問題かのどちらか。いずれにしても、比例計算した額と実際の明細を並べた1枚があると、話が数字から始まる。
自分の職場で記録しておくこと
短縮を申し出る前に数えておくと比べやすい数字が3つある。いまの1か月の総支給額と控除額。1日の所定労働時間と月の所定労働日数。手当の内訳と、それぞれの支給条件が書かれた規程の条番号。
この3つを4週ぶん残しておくと、短縮後の明細と並べたときに、どこが比例で下がり、どこが規程の書き方で下がったのかを分けて読める。





