OJTの具体例は、日誌の7欄にある

OJTの具体例として厚生労働省の用語の説明が挙げているのは、教育訓練計画に基づいてライン長などが教育訓練担当者として作業方法を部下に指導する、という一文だけである。短い。ただし助成金の様式まで降りると、1回ぶんのOJTを何で記録するかは7つの欄として決まっている。実施日、指導者、場所、時間数、職務名、指導の内容、身についたこと。業種別の事例集を読むより、この7欄に自分の先週を当てはめるほうが早い。

OJTという言葉そのものの範囲と、計画的なOJTとの線引きはOJTとはに書いた。

1回ぶんは、7つの欄で書ける

人材開発支援助成金の人材育成支援コースには、OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)という様式がある。認定実習併用職業訓練と有期実習型訓練で、実際にOJTをやったことを証明するための紙だ。実施した回ごとに、次の欄を埋める。

欄 書くこと
1 実施日・曜日 その指導を受けた日
2 OJT訓練指導者 その日に指導した人の氏名。複数なら全員
3 訓練場所 その日にOJTを受けた場所
4 支給対象受講時間数 所定労働時間内に受けた時間
5 職務名 事前に提出したOJTカリキュラムから転記する
6 訓練の具体的内容(指導内容) 簡略化せず具体的に
7 訓練により身についたこと 同じく、簡略化せず具体的に

場所の記入例として様式が示しているのは2つ。店舗で訓練を受けた場合は「○○支店」、営業先で訓練を受けた場合は「○○(職務内容)に関する営業先」。現場に出て覚える形が、そのまま記録の単位になっている。

この紙を書くのは受講者本人である。毎回の訓練が終わったら速やかに、6欄と7欄を含む全部の欄を自分で埋める。指導者と所属長は、書かれた内容のとおり実施したことを別の欄で証明する。本人が書いていないと分かった場合、その人の分は訓練全体が適正に行われていないものとして扱われる。

所定労働時間の外は、時間数に入らない

4欄に書けるのは所定労働時間内に受けた時間だけで、時間外に受けた分は除外される。残業は別枠。受講者または指導者のどちらかについて出勤状況を書類で確認できない時間数も、たとえ本人の記憶のうえでは指導を受けていたとしても、支給の対象としては認められないと注意書きに書かれている。

OJTの受講率は、受けた時間を総訓練時間で割って出す。これが80%に満たないと、その人に係る助成は支給されない。残業の中で教わった時間は、この計算の分子に入らないということでもある。

教え方の具体は、実演・説明・やらせる・評価

指導担当者の役割として指導者用マニュアルが並べているのは、課題の意義を理解させること、仕事の模範を実演すること、説明すること、やらせること、評価することの5つ。割り当ての単位は「課題(仕事)」で、課題を割り当てるたびに、最終的な到達目標に照らしてその課題がどこに位置するのかを本人に理解させる、という順序になっている。

課題の難易度や順序、組合せを決めるのは指導責任者で、一般には訓練参加者のライン管理者が兼ねる。日々教えるのが直接の指導担当者。この2つは別の役割として書かれている。誰に何を聞けばいいか分からないときは、この2人が同じ人になっていないかを見ると整理がつく。

「任せる」の中にも段がある

教えた仕事が一定の水準に達したあと、実際の仕事に適用させて習熟度を上げていく段階を、マニュアルは「適用」と呼ぶ。端的には任せること。任せ方は一様ではない。全面的に渡す形もあれば、部分代行と呼ばれる部分的な渡し方もあり、どちらにするかは仕事の重要度と本人の準備状況によって決まる、という整理になっている。

この段階では指導者が常に見ているとは限らないので、ミスをしたら速やかに報告させることを徹底する、と書かれている。報告されたミスの原因と経緯は、本人と一緒に考える。放っておかれていると感じる時期は、設計のうえでは「適用」に当たっていることがある。

最初に入るのは、技術の手前のもの

導入時の指導として挙がっているのは、訓練参加者としての自覚、社会や職場での規律・マナー、それに職場のすべての課題に共通して必要な態度と姿勢である。安全、品質、コスト、責任感、チームワーク、創意工夫。技術そのものより前に置かれている。

安全教育も先だ。OJTに先立って新任者と同様の安全教育を行い、課題を割り当てるたびに、その作業の安全の要点を説明する。何をしてはいけないかだけでなく、なぜしてはいけないかまで理解させる、という書き方になっている。

自分の先週を、7欄で書き出す

具体例を探している人がいちばん早く得られるのは、他社の事例ではなく、自分の1週間を同じ形に落とす作業のほうだと思う。日付、教わった相手の名前、場所、時間、仕事の名前、何を教わったか、何ができるようになったか。

埋まらない欄が、いまのOJTで抜けている部分である。相手の名前が日によって変わるなら指導の線は切れているし、「身についたこと」の欄がどうしても書けないなら、その日にやったのは作業であって、計画に沿った訓練ではなかったことになる。判断は早い。指導の質が人によって動く問題そのものはOJTのデメリットで整理した。

教わる量がどれくらい必要かは、人によって違う。手順を一度に示されたほうが動ける人もいれば、任されてから調べるほうが早い人もいる。7欄の記録は、そのどちらに自分が寄っているかを、あとから読み返せる形にしておくための材料になる。

出典

  1. 令和7年度「能力開発基本調査」用語の説明(厚生労働省)/計画的なOJTの定義と例
  2. 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)OJT実施状況報告書〈OJT訓練日誌〉様式第8号(厚生労働省)/記載欄と記入上の注意、受講率80%の要件
  3. 雇用型訓練 指導者用マニュアル(厚生労働省、ジョブ・カード制度)/訓練日誌の例、指導の進め方、導入時の指導、安全衛生