OJTのデメリットは、人の余力に出る

OJT の弱点は、成果が教える側の余力に左右されるところに出る。厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査では、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとした事業所が80.1%あり、その内訳でもっとも多いのが「指導する人材が不足している」の59.5%、次が「人材を育成しても辞めてしまう」の51.6%、3番目が「人材育成を行う時間がない」の45.5%だった。教わる側から見ると、1番目と3番目は同じ形で現れる。聞ける相手がいない、聞くタイミングがない。

事業所の8割が、育成に問題を抱えている

人材育成に関する問題点(複数回答) 割合
指導する人材が不足している 59.5%
人材を育成しても辞めてしまう 51.6%
人材育成を行う時間がない 45.5%

問題があるとした事業所は80.1%。この数字は、OJT がうまくいかない原因を個々の指導役の姿勢に求める前に、構造として起きていることを示している。手が空かない先輩にあたったのは、配属の運というより、半数以上の事業所が同じ不足を申告している状況のなかで起きたこと。

教える人の余力に依存する

OJT は日常の業務に就きながら行う教育訓練なので、指導役の仕事量がそのまま指導の密度に跳ね返る。繁忙期に配属された人と、落ち着いた時期に配属された人で、同じ計画書を使っていても教わる量が変わる。

ここが、教室に集めて一斉に進める形との構造的な違い。受ける側に調整の余地は少なく、できるのは聞き方と聞く間隔を変えることくらい。フィードバックのもらい方に、質問をためずに出す段取りを書いた。相手の手が空く時間そのものがないなら、上司と話す機会がないときのほうが近い。

計画がないと、覚えた範囲が担当業務の形になる

計画的なOJTの定義は、計画書を作成するなどして教育担当者・対象者・期間・内容を具体的に定め、段階的・継続的に実施するもの。この4項目が埋まっていない OJT では、何をいつまでに覚えるのかが決まらないので、担当した業務に出てきた順で知識が付く。

部署全体の流れや、自分の作業が前後の工程とどうつながっているかは、担当業務の外側にある。だから計画がないと、そこが抜けたまま時間が過ぎる。令和7年度の調査では、計画的なOJTを実施していないと回答した事業所が35.8%あった。3事業所に1つ。

抜けを自分で埋めるなら、任されている範囲の境目を書き出すところから始まる。境目が分からないまま仕事が増える状態については役割が曖昧とはに整理した。

雇用形態で、受けられる量が変わる

正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は60.6%、正社員以外に対しては25.1%。2.4倍の差がある。正社員以外への割合は、長期的に正社員の半分に満たない水準で推移している。

同じ職場で同じ仕事に就いていても、雇用形態の区分で教育訓練の有無が分かれる。この差は本人の希望とは別のところで決まっている。

ノウハウの伝承は、時間のかかる側に問題が出る

同じ調査で技能継承の問題点を見ると、「意欲のある若者・中堅層の確保が難しい」が74.5%、「技術・ノウハウ等の伝承に時間がかかり円滑に進まない」が60.6%、「継承者が習得後に離職してしまう」が28.5%。

伝承に時間がかかるという申告が6割を超えている。短い期間で区切って成果を測る形と、OJT で技能を渡す形は、噛み合いにくい。教わる側が「まだ覚えきれていない」と感じている時点が、教える側の計画では終わりに近いことがある。

自分の職場で、どこが欠けているかを見る

  • 教育担当者が指名されているか。誰に聞くかが決まっていないなら、1つめの弱点がそのまま出る
  • 質問できる時間が業務に組み込まれているか。相手の手が空くのを待つ運用になっていないか
  • 期間と内容が文書になっているか。口頭で「慣れてきたら」と言われただけなら、区切りがない
  • 担当業務の前後の工程を説明されたか

4つのうち欠けているものが、自分が感じている不足の出どころにあたる。欠けを埋める相談を上司に持っていく前に、どの1つが効いているかを決めておくほうが話が短くなる。相談そのものが難しい状況なら上司に相談できないとき、部署を移りながら覚える形との違いはジョブローテーションとはに書いた。

出典

  1. 令和7年度「能力開発基本調査」調査結果の概要(厚生労働省、2026年7月31日公表、事業所規模5人以上)/人材育成に関する問題点の内訳、計画的なOJTの実施状況、技能継承の問題点
  2. 能力開発基本調査 用語の説明(厚生労働省)/計画的なOJT、OFF-JT、正社員以外の定義