休職中の賃金は、原則として出ない。労働政策研究・研修機構が2022年12月に実施した企業調査では、病気休職の期間中に月例賃金が「支給されない」と答えた企業が71.6%、「支給される」が24.4%だった(傷病手当金や会社独自の付加金は除いた質問)。従業員10人以上の企業20,000社に郵送し、有効回答は4,721社。働かなかった分の賃金は発生しないという扱いが、4分の3近くを占める。
休職中の給料、71.6%が無給
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例外は規程の空欄に書かれている
厚生労働省のモデル就業規則は、賃金の条文例に次の1項を置いている。
第9条に定める休職期間中は、原則として賃金を支給しない(□か月までは□割を支給する)。
□を埋めるのは各社だ。無給と決めている会社、最初の数か月だけ一定割合を出す会社、満額を出す会社に分かれる。解説も、休職期間を無給とするか有給とするかは各事業場で決めて就業規則に定めるよう求めている。つまり自分が24.4%の側にいるかどうかは、賃金の条文を開けば分かる。
入ってくるのは傷病手当金
業務外の病気やけがで働けないときは、健康保険から傷病手当金が出る。全国健康保険協会の説明では、支給の条件は次の4つ。
- 業務外の病気やけがの療養のため働くことができない
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった(最初の3日は待期)
- 給与の支払いがない
- 健康保険の被保険者である
金額は、1日あたり「支給開始日以前の継続した12か月間の各標準報酬月額を平均した額」の30分の1に相当する額の、3分の2。協会けんぽが挙げている計算例だと、標準報酬月額が16万円の月が6か月、18万円の月が6か月なら平均は17万円。これを30で割って5,670円、その3分の2が3,780円で、これが1日あたりの額になる。
加入期間が12か月に満たない場合は、直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額と、全被保険者の平均額のいずれか低いほうを使う。全被保険者の平均額は、令和7年3月31日以前が30万円、それ以降が32万円。
支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月。途中で復職して給与が出ていた期間は、この1年6か月に数えないので、同じ傷病で休職と復職を繰り返した場合には、支給された日数を足し合わせて1年6か月に達するまで受け取れる形になる。数え方は通算。
給与が出ると、手当は減る
傷病手当金は、給与の支払いがないことを条件にしている。会社から賃金が出ている期間は原則として支給されないが、支払われた給与が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給される。有給休暇を使った日も、賃金が出る日として同じ扱いになる。
有給を先に使い切るか、早めに休職に入るかで、月ごとに入る額は変わる。手当の計算が標準報酬月額を基準にしている点も効いてきて、残業代が多い月が続いたあとで標準報酬月額が高く決まっていれば日額も上がるし、逆にその改定の前に休職へ入れば、いまの働き方より低い基準で1年6か月を過ごすことになる。
止まらない支出がある
収入が止まっても、休職中に払い続けるものが2つある。
健康保険と厚生年金の被保険者資格は、休職中も続く。保険料の免除があるのは産前産後休業と育児休業等の期間で、日本年金機構はこの2つに限って事業主の申出による免除を案内している。私傷病の休職はここに入らないので、保険料は発生し続け、賃金から引けない分は本人が会社に払う形になる。
住民税も続く。個人住民税の所得割は、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定される(総務省)。だから前年に通常どおり働いて残業代も賞与も受け取っていれば、休職して収入が止まった年にも、その所得をもとに計算された税額が請求される。給与からの天引き(特別徴収)ができなくなると、本人が市区町村に納める普通徴収に切り替わることがある。
出ていく側を数えずに手当の額だけ見ると、見積もりが崩れる。入ってくる3分の2から、保険料の本人負担分と住民税の月割りを引いた残りが、実際に生活に使える額になる。
確かめる順番
家計の見通しを立てるなら、調べる場所は4つ。
- 就業規則の賃金の条文(休職期間中の支給の有無と割合、賞与の算定で休職期間をどう扱うか)
- 自分が加入している健康保険の保険者(協会けんぽか、組合か)と、付加給付の有無
- 直近12か月の標準報酬月額(給与明細や保険料の控除額から追える)
- 住民税の年額と、休職中の納付方法
業務が原因の傷病や通勤災害なら、使う制度が労災保険に変わる。休業(補償)等給付は休業4日目から給付基礎日額の60%で、これに休業特別支給金の20%が加わる。業務外か業務上かの線引きで、入ってくる額の計算式そのものが変わる。
メンタルヘルス不調による休職がどの業種で多いかは、業種別の休職の割合にまとめている。
収入の話の前に、働き方を記録しておく
休職中のお金の計算は、始めてみると数字が揃っていないことに気づく。標準報酬月額、住民税の年額、保険料の控除額。どれも給与明細に載っているのに、休む段になって初めて読む。
このサイトの診断は、職場の環境を12の軸に割って記録する。残業の量そのものは測らないし、収入の見積もりもしない。記録として残るのは、どの軸がいつ動いたかという事実だけ。復職や異動を相談する場面で、その記録が材料になる。
出典
- 治療と仕事の両立に関する実態調査(企業調査)病気休職期間中の月例賃金の支給/独立行政法人 労働政策研究・研修機構/2022年12月実施・従業員10人以上の企業20,000社に郵送し有効回答4,721社(有効回答率23.6%)/2024年3月公表
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金。支給要件・1日あたりの額の計算式と計算例・通算1年6か月・差額支給)/全国健康保険協会
- モデル就業規則(令和7年12月版。休職期間中の賃金の条文例と解説)/厚生労働省労働基準局監督課/2025年12月
- 厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)/日本年金機構
- 地方税制度/個人住民税(所得割は前年の所得で算定。特別徴収と普通徴収)/総務省
- 休業(補償)等給付の計算方法(給付基礎日額の60%と休業特別支給金20%)/厚生労働省





