教員の離職率という数値は、文部科学省の統計に率としては出ていない。公表されているのは離職者数と本務教員数で、令和6年度間に離職した公立小学校の教員は13,840人、令和7年10月1日時点の公立小学校の本務教員数は375,340人。割れば3.7%になる。この13,840人のうち定年を理由とする人は39.8%まで下がり、定年以外が60.2%を占めた。
教員の離職率、定年以外が6割
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調査の形
学校教員統計調査は3年ごとに行われる調査で、令和7年度分の中間報告が2026年7月に公表された。調査期日は令和7年10月1日。教員の性別・年齢・職名・学歴・勤務年数・給料月額はこの日の状態を調べ、採用・転入・離職の異動状況は令和6年度の1年間について調べている。
ここが読むときの注意点になる。本務教員数は令和7年10月1日時点の人数で、離職者数は令和6年度間の人数なので、割り算の分子と分母は同じ日を指しておらず、4月から9月の半年ぶん母集団がずれたまま計算することになる。小数第2位を争う比較には使えない。中間報告なので、確定値はあとから出る。
学校種ごとの人数
| 学校種 | 離職者数(令和6年度間) | 採用者数 | 本務教員数(令和7年10月1日) | 離職者数÷本務教員数 |
|---|---|---|---|---|
| 公立小学校 | 13,840人 | 18,590人 | 375,340人 | 3.7% |
| 公立中学校 | 8,371人 | 10,821人 | 207,525人 | 4.0% |
| 公立高等学校 | 5,325人 | 5,426人 | 147,437人 | 3.6% |
| 公立幼稚園 | 714人 | 637人 | 10,659人 | 6.7% |
右の列は、報告書に載っている数値ではなく、ここで割ったもの。小学校から高校までは3.6%から4.0%の幅に収まり、幼稚園だけ6.7%と高い。ただし公立幼稚園は本務教員数そのものが令和4年度の12,820人から令和7年度の10,659人へ2,161人減っていて、分母が縮むぶん率が上がる方向に働くので、小学校から高校までの3つと同じ目で並べるのは避けたほうがいい。
採用者数と並べると、小学校は離職13,840人に対して採用18,590人で、入ってくる人のほうが4,750人多い。高等学校は離職5,325人・採用5,426人でほぼ同数。幼稚園は離職714人に対して採用637人と、辞める人のほうが多い。
定年以外が、4回で34.0%から60.2%へ
公立小学校の離職者を、定年とそれ以外で割った推移。
| 年度 | 離職者数 | 定年(勧奨を含む) | 定年以外 |
|---|---|---|---|
| 平成27年度間 | 17,649人 | 11,642人(66.0%) | 6,007人(34.0%) |
| 平成30年度間 | 16,619人 | 10,235人(61.6%) | 6,384人(38.4%) |
| 令和3年度間 | 15,030人 | 8,006人(53.3%) | 7,024人(46.7%) |
| 令和6年度間 | 13,840人 | 5,506人(39.8%) | 8,334人(60.2%) |
離職者の総数は17,649人から13,840人へ減っている。減った中身は定年のほうで、11,642人から5,506人へ半分以下になった。いっぽう定年以外は6,007人から8,334人へ、2,327人増えた。
総数だけを見ると離職は落ち着いているように読める。中を割ると逆の動きが出てくる。定年の人数が減るのは、採用が多かった世代が抜けきった後の年齢構成の問題で、本人の選択とは関係がない。
理由の内訳は、転職と家庭の事情が大きい
令和6年度間の離職教員数を、理由の8区分で見る。
| 理由 | 公立小学校 | 公立中学校 | 公立高等学校 |
|---|---|---|---|
| 定年(勧奨を含む) | 5,506人 | 3,620人 | 2,870人 |
| 病気 | 1,040人 | 489人 | 228人 |
| (うち精神疾患) | 801人 | 365人 | 153人 |
| 死亡 | 117人 | 99人 | 87人 |
| 転職 | 2,552人 | 1,745人 | 783人 |
| 大学等入学 | 35人 | 28人 | 22人 |
| 家庭の事情 | 2,269人 | 974人 | 326人 |
| 職務上の問題 | 147人 | 103人 | 60人 |
| その他 | 2,174人 | 1,313人 | 949人 |
| 計 | 13,840人 | 8,371人 | 5,325人 |
小学校では、定年以外でいちばん多いのが転職の2,552人、次が家庭の事情の2,269人。病気は1,040人で、転職の4割ほど。中学校と高等学校でも並び順は同じで、転職が最も多い。
「職務上の問題」は小学校147人、中学校103人、高等学校60人。離職者全体の1%前後にとどまる。ただしこの区分は本人の申告ではない。学校側が提出する調査票に記録された区分なので、同じ事情が「その他」や「家庭の事情」に流れている可能性は残る(推定)。
精神疾患による離職は1,319人
病気による離職のうち精神疾患を理由とするものは、小中高を合わせて1,319人。4回ぶんの並びはこうなる。
| 年度 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 | 計 |
|---|---|---|---|---|
| 平成27年度間 | 331人 | 213人 | 75人 | 619人 |
| 平成30年度間 | 457人 | 242人 | 83人 | 782人 |
| 令和3年度間 | 569人 | 277人 | 104人 | 950人 |
| 令和6年度間 | 801人 | 365人 | 153人 | 1,319人 |
9年で2.1倍。小学校は331人から801人へ増えていて、増加分の半分以上を小学校が占める。本務教員数は同じ期間でほぼ横ばいか減少なので、分母が増えたことによる見かけの増加ではない。
休職の数字は、この調査には入っていない。精神疾患で休職した教員の数は、公立学校教職員の人事行政状況調査という別の調査で毎年公表されている。
この数字が答えていないこと
4つある。
第一に、辞めた人がどこへ行ったかが細かく分からない。転職2,552人の行き先の内訳は、離職の側の表には出ていない。採用の側には「採用前の状況」の区分があるので、他の自治体の学校へ移った人は、別の都道府県では採用者として数えられている可能性がある。
第二に、年齢別の離職者数が公表されていない。若い教員の離職が増えているかどうかは、この表からは出てこない。年齢構成の比率は別の表にあるが、それは在職している人の分布で、辞めた人の年齢ではない。
第三に、私立学校と国立学校がこの集計に入っていない。ここで扱った4つの数字は、すべて公立の学校のもの。
第四に、全産業や他の職種と比べられない。厚生労働省の雇用動向調査は事業所の常用労働者を分母に取る別の調査で、分母の定義も期間も違う。全産業の水準は離職率の平均、業種で切った数字は業種別の離職率にまとめてある。
自分の学校で数えると、何が見えるか
3.7%は、自分の学校で誰が辞めるかを示す数値ではない。学校単位では、教員30人の学校で1人辞めれば3.3%になる。1人の増減で率が大きく動く規模なので、率で自分の職場を測るのは向いていない。
使えるのは、理由の区分のほう。この1年に抜けた人が、定年なのか、転職なのか、家庭の事情なのか、病気なのかを数えておくと、来年度の校務の組み替えがどこから起きるかを先に読める。
そのうえで、自分が続けるかどうかは別の判断になる。全国で定年以外の離職が60.2%になったとしても、自分がいまの持ち時間や校務分担のどこで消耗しているのかは、この統計には書いていない。
このサイトの診断は、職場の環境を12の軸に割って記録する。人と接する量、手順の明確さ、確認の頻度、結果が見えるまでの長さ。自分が集中できた場面の値といまの職場の値を並べると、どの軸がどれだけ離れているかが出てくる。辞めるかどうかの前に、何がずれているのかを言葉にできる。





