業種別の休職、情報通信業が39.2%

情報通信業で39.2%、宿泊業・飲食サービス業で3.4%。メンタルヘルス不調によって連続1か月以上休業した人、または退職した人がいた事業所の割合を業種で切ると、上と下に35.8ポイントの開きが出る。厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査(実態調査)の値で、常用労働者10人以上の民営事業所から無作為に抽出した約14,000事業所のうち、8,304事業所が答えた。全体では12.8%。公表は2025年8月7日。

数えているのは「休職」ではない

調査票が聞いているのは、過去1年間に連続1か月以上の休業をした労働者、または退職した労働者がいたかどうか。休職という制度を使ったかどうかは聞いていない。

だから、就業規則に休職の規定が無い職場で1か月休んだ人も、規定にもとづいて休職した人も、同じ1件として数えられている。逆に、1か月に届かない休みを繰り返した人は入らない。

17業種を並べる

業種 休業または退職があった事業所 うち休業 うち退職
情報通信業 39.2% 33.0% 19.9%
電気・ガス・熱供給・水道業 32.7% 29.9% 7.7%
学術研究,専門・技術サービス業 22.2% 18.8% 10.0%
教育,学習支援業 20.5% 13.7% 11.3%
金融業,保険業 20.1% 15.6% 6.6%
複合サービス事業 19.4% 18.6% 4.9%
製造業 18.6% 15.0% 8.6%
サービス業(他に分類されないもの) 15.4% 12.3% 7.5%
不動産業,物品賃貸業 13.0% 10.1% 4.8%
調査産業計 12.8% 10.2% 6.2%
医療,福祉 12.7% 9.3% 9.0%
卸売業,小売業 10.5% 8.8% 4.6%
生活関連サービス業,娯楽業 9.5% 6.6% 4.5%
運輸業,郵便業 8.8% 8.0% 3.0%
農業,林業(林業に限る。) 8.1% 5.8% 3.5%
建設業 8.0% 6.3% 3.8%
鉱業,採石業,砂利採取業 6.6% 5.4% 1.0%
宿泊業,飲食サービス業 3.4% 3.0% 0.9%

「うち休業」と「うち退職」は複数回答なので、足しても左の値にはならない。

業種の差より、事業所の大きさのほうが効いている

同じ調査を事業所の規模で切ると、幅がまったく変わる。

事業所規模 休業または退職があった事業所
1,000人以上 91.6%
500〜999人 86.9%
300〜499人 76.0%
100〜299人 55.8%
50〜99人 33.1%
30〜49人 14.4%
10〜29人 5.7%

上と下で85.9ポイント。業種でついた35.8ポイントの2倍以上ある。

理屈は単純で、人が多い事業所ほど、1年のあいだに誰か1人が1か月以上休む確率が上がる。この割合を作っている設問は、人数を聞いていない。事業所に1人でもいれば「いた」になるので、規模が大きいほど値は上がる。1,000人以上で91.6%というのは、9割の大規模事業所でメンタルヘルス不調が起きている、というより、9割の大規模事業所に該当者が1人以上いた、と読むほうが近い。

そして業種ごとに、事業所の大きさの分布は違う。情報通信業の39.2%と宿泊業・飲食サービス業の3.4%の差のうち、どこまでが仕事の中身の差で、どこまでが事業所規模の構成の差なのかは、この表からは分けられない。ここは推定になるが、規模の効き方を見るかぎり、後者がかなりを占めていそうに見える。

人の数で数え直すと、0.5%と0.2%

同じ第1表には、労働者を分母にした割合も載っている。常用労働者のうち、メンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した人は0.5%、退職した人は0.2%。おおよそ200人に1人と500人に1人という頻度で、事業所を分母にした12.8%とは、そもそも何を1件と数えているかが違う。

業種で切ると、情報通信業が休業1.3%・退職0.4%で最も高く、宿泊業・飲食サービス業は0.2%と0.0%。差は1.1ポイント。倍率にすると6.5倍で、事業所割合でついた11.5倍より狭い。

規模で切ると、この縮み方はもっとはっきりする。

事業所規模 休業した労働者 退職した労働者
1,000人以上 1.0% 0.2%
500〜999人 0.9% 0.3%
300〜499人 0.8% 0.3%
100〜299人 0.6% 0.2%
50〜99人 0.5% 0.4%
30〜49人 0.4% 0.2%
10〜29人 0.3% 0.2%

事業所割合では91.6%と5.7%で16倍あった開きが、人の数では1.0%と0.3%の3倍ほどに縮む。退職した労働者にいたっては、50〜99人の0.4%がいちばん高い。規模の階段が消える。ひとつ上の節で書いた「該当者が1人以上いた」という読み方は、この2つの表を並べると数字で確かめられる。

数え方に注意がひとつ。1か月以上休業したあとに退職した人は、この労働者割合では「退職した労働者」のほうにだけ数えられていて、休業の0.5%のなかには乗らないので、休んだ人と辞めた人を足しても、影響を受けた人の総数にはならない。同じ人が1年に複数回休んだ場合も1人。事業所割合の「うち休業」「うち退職」が複数回答だったのとは、集計の仕方が違っている。

別の調査になるが、同じ産業の区分で働く時間の長さを並べたのが業種別の残業時間、最長20.6時間。休業や退職の理由をこの調査は聞いていないので、2つの表を因果として結ぶことはできない。

医療・福祉だけ、休業と退職がほぼ並ぶ

業種ごとに「うち休業」と「うち退職」の比を見ると、ほとんどの業種では休業のほうが大きい。情報通信業は33.0%に対して19.9%、電気・ガス・熱供給・水道業は29.9%に対して7.7%、複合サービス事業は18.6%に対して4.9%。

例外が医療・福祉で、休業9.3%に対して退職9.0%。差は0.3ポイントしかない。教育・学習支援業も13.7%と11.3%で近い。

休んで戻る経路と、辞める経路のどちらを通るかが、業種で違っている。医療・福祉と教育・学習支援業では、後者の割合が高い。ただし、この調査は同じ人を追いかけていないので、休業した人がそのまま退職したのか、休業を経ずに辞めたのかは分からない。推定を重ねずに読める範囲は、ここまで。

細分類まで下りると、もっと開く

大分類の下には中分類の集計もある。いちばん高いのは郵便業(信書便事業を含む)の80.4%。情報通信業の中ではインターネット附随サービス業が44.0%、情報サービス業が41.4%。製造業の中では電子部品・デバイス・電子回路製造業が33.6%、化学工業が33.0%で、製造業全体の18.6%を大きく上回る。

低いほうでは、飲食サービス業が2.4%、道路貨物運送業が4.1%。同じ宿泊業・飲食サービス業でも、宿泊業だけ取り出すと11.6%あって、飲食サービス業の2.4%とは9.2ポイント違う。大分類の3.4%は、この2つをならした値。

この35.8ポイントで言えないこと

有効回答は8,304事業所。業種ごとに何事業所が答えたのかは、統計表からは読み取れない。中分類まで下りると1業種あたりの回答数はさらに小さくなるので、郵便業の80.4%のような値は振れ幅を含んで見たほうがいい。ここは推定。

常用労働者10人未満の事業所は、抽出の枠に入っていない。

これは事業所に聞いた調査であって、働く人に聞いた調査ではない。事業所が把握していない休業や退職は、数字に乗らない。メンタルヘルス不調が理由だと事業所が認識できたものだけが数えられている以上、別の理由として届け出られた休みは、この12.8%の外側にある。

産業の区分は勤め先の事業所が何をしているかで決まるもので、職種の区分ではない。製造業の18.6%には、工場のラインにいる人も、事務室で働く人も、同じ1つの事業所の値として入っている。

体調を崩した原因が仕事にあると認められた側の件数は、別の統計に出ている。同じ業種の切り口で並べたのが精神障害の労災、業種別の件数と認定率で、数えているものが違うため、この12.8%と足し合わせることはできない。

39.2%の内側にある、自分の職場の数

39.2%も3.4%も、事業所を全国でならした割合である。自分の職場に該当者がいたかどうかは、この表からは出てこない。

手元で数えられるものなら、いくつかある。この1年で、同じ部署から1か月以上休んだ人が何人いたか。その人が戻ってきたか、戻らなかったか。戻ったとして、仕事の量や担当は変わったか。

3つとも業種の平均には出てこない値で、書き留めておくと、次に自分の働き方を相談するときに、割合ではなく職場で起きたこととして材料になる。職場での言動が関わっている場合、相談の窓口は別の系統になる。業種ごとの広がりは業種別ハラスメント相談は53.9%に置いた。

出典

  1. 令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)/厚生労働省/2024年10月31日現在・常用労働者10人以上の民営事業所から無作為抽出した約14,000事業所のうち8,304事業所が有効回答/2025年8月7日公表
  2. 同 統計表 第01-1表「企業規模・事業所規模・産業、過去1年間におけるメンタルヘルス不調による連続1か月以上の休業をした労働者又は退職者の有無別事業所割合」(政府統計の総合窓口 e-Stat)
  3. 同 報道発表資料(調査の目的・対象・抽出数・有効回答数・公表日)
  4. 同 結果の概況(PDF。第1表 メンタルヘルス不調による連続1か月以上の休業者・退職者がいた事業所割合及び労働者割合)