休職を選ぶと、籍と健康保険の資格は続き、賃金は止まり、期限がつく。この3つが制度上の中身で、残りは会社ごとの規程で決まる。感想としての損得より、続くものと止まるものを並べたほうが、退職と比べるときの材料になる。
休職のメリット・デメリットを数字で
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続くもの
休職は、労働者としての身分を保ったまま、一定期間の就労義務を免除する扱い(厚生労働省のモデル就業規則の解説)。雇用契約が切れないので、社員としての地位、健康保険と厚生年金の被保険者資格、就業規則の適用がそのまま残る。
収入の側では、業務外の病気やけがで働けないとき、健康保険から傷病手当金が出る。1日あたりの額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2で、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月(全国健康保険協会)。退職してしまえば、この「給与の代わり」を会社の在籍を前提に受け取る形は取れない。
止まるもの
賃金は止まる。労働政策研究・研修機構が2022年12月に実施した企業調査では、病気休職の期間中に月例賃金が「支給されない」と答えた企業が71.6%、「支給される」が24.4%だった(有効回答4,721社)。
一方で、社会保険料は発生し続ける。保険料の免除があるのは産前産後休業と育児休業等の期間だけで、日本年金機構はこの2つに限って事業主の申出による免除を案内している。私傷病の休職は対象に入らない。収入が止まり、支出が残る期間ができる。
止まるものはもう1つある。モデル就業規則の退職金の条文例には、「第9条により休職する期間については、会社の都合による場合を除き、前項の勤続年数に算入しない」という項がある。休職した期間を勤続年数から外す規程を置いている会社では、退職金の計算に使う年数がその分だけ伸びない。評価や昇給への影響は予測できないが、この条文があるかどうかは規程を開けば確かめられる。
期限がつく
モデル就業規則の第9条第3項は、業務外の傷病で休職して期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合、休職期間の満了をもって退職とするという条文例を置く。休職は、期限つきの猶予。
この期限が実際に効いていることは、同じ企業調査の数字に出ている。疾患に罹患した社員が退職する場合、どのタイミングが多いかという問いで、「休職期間満了時」を挙げた企業の割合は、肝炎で75.1%、難病で70.8%、脳血管疾患で49.4%、心疾患で46.1%、糖尿病で36.4%、がんで30.3%だった(前例が少なくわからないと無回答を除いた集計)。退職が起きるとすれば、その多くは期間の終わりに起きている。
戻る人の割合
では、休職した人がどれくらい辞めているのか。同じ調査は、過去3年間で疾患に罹患した社員の何割程度が退職したかを企業に尋ねている。どの疾患でも最も多いのは「退職者は1割以下(退職者はほぼゼロ)」で、肝炎91.4%、糖尿病84.8%、難病81.5%、がん76.1%、脳血管疾患62.7%。脳血管疾患では「9割以上退職(ほぼ全員退職)」が18.0%あり、他の疾患より高い。
これは企業単位の回答で、個人が復職できた確率ではない。疾患の種類と、会社の規程の長さによって、分布は動く。
戻ったあとの条件が変わる
復職は、休職前と同じ働き方への復帰を意味しない。がんに罹患した社員が休職から復職する際の配慮措置(複数回答)では、業務量の削減が42.3%、所定内労働時間の短縮が42.0%、仕事内容の変更が33.5%、残業・休日労働の制限や禁止が32.6%、疾患治療についての職場の理解の促進が27.1%。働き方の変更をほとんどしないという回答は16.8%で、糖尿病では46.7%。
戻る職場の側にも事情がある。私傷病等の治療と仕事の両立支援制度の課題として最も多く挙がったのは「休職者の代替要員が難しい」で65.9%。休んでいる間の仕事が誰かに渡っていれば、戻ったときの配置はその結果を引き継ぐ。
メンタルヘルス不調による休職がどの業種で多いかは、業種別の休職の割合で整理している。
比べるときに見る2か所
休職と退職を並べるなら、自分の勤め先について先に確かめる数字が2つある。
- 休職期間の上限(籍が残る期間。規程に書かれている)
- 休職期間中の賃金(無給か、何か月まで何割か)
この2つが決まれば、傷病手当金の通算1年6か月と突き合わせて、何か月後に何が切れるかを並べられる。退職金の勤続年数の条項も同じ場所にある。制度の損得は、ここまで読まないと数えられない。
迷っている段階で記録しておく
休職と退職のどちらを選ぶかは、制度の比較だけでは決まらない。何に耐えられなくなったのかが言葉になっていないと、復職しても同じ条件に戻るだけになる。
このサイトの診断は、職場の環境を12の軸に割って記録する。裁量、人と接する量、確認の頻度、学ぶことの量。どちらを選ぶべきかを判定するものではない。測るのは、自分に合う条件といまの職場の条件の距離だけ。
出典
- 治療と仕事の両立に関する実態調査(企業調査)病気休職期間中の月例賃金の支給・図表8-14 復職の際の配慮措置・図表8-15 3年間の疾患罹患者の退職割合・図表8-16 3年間でみた退職の時期/独立行政法人 労働政策研究・研修機構/2022年12月実施・従業員10人以上の企業20,000社に郵送し有効回答4,721社(有効回答率23.6%)/2024年3月公表
- モデル就業規則(令和7年12月版。第9条 休職の条文例と解説、休職期間中の賃金、退職金の勤続年数の条文例)/厚生労働省労働基準局監督課/2025年12月
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金。1日あたりの額の計算式と通算1年6か月)/全国健康保険協会
- 厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)/日本年金機構





