1on1は、上司と部下がふたりで定期的に向き合う面談の呼び名で、法令にも公的な指針にも定義がない。だから調査や会社ごとに、その都度こういうものだと決めて使われている。同じ語を使っていても、隣の会社で行われているものが同じ中身とは限らない。
定義が置かれている例のひとつが、パーソル総合研究所が2024年6月に行った調査だ。ここでは1on1を「部下の成長支援を目的とした上司と部下の一対一の定期面談」と定義している。
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1on1は、上司と部下がふたりで定期的に向き合う面談の呼び名で、法令にも公的な指針にも定義がない。だから調査や会社ごとに、その都度こういうものだと決めて使われている。同じ語を使っていても、隣の会社で行われているものが同じ中身とは限らない。
定義が置かれている例のひとつが、パーソル総合研究所が2024年6月に行った調査だ。ここでは1on1を「部下の成長支援を目的とした上司と部下の一対一の定期面談」と定義している。
この調査は、定義文だけで済ませていない。面談の中に次の要素が含まれているものを、成長支援を目的とする1on1として数えている。
主語はすべて上司。励ます、聴く、問いを返す、経験を言葉にするのを助ける——この4つが揃っているかどうかで線を引いているので、部下が報告して上司が進捗を確認して終わる一対一の面談は、形式や所要時間が同じでも、この調査では1on1として数えられていない。週次の進捗確認を1on1と呼んでいる職場は多い。名前のほうは自由につけられる。
同じ調査は「成長」も定義している。コルブの経験学習サイクルのうち、部下が「内省的観察」と「抽象的言語化」をできるようになること。起きた出来事を振り返り、次に使える形に言い直す、その2つ。
測り方も公表されている。仕事の成功や失敗の要因について分析できるようになったか、応用のきくノウハウを見つけたか。この2問に5点満点で答えてもらい、合成して10点満点の変数にしている(クロンバックのα係数0.886)。
評価面談との差はここに出る。半期や通期が終わったあとに開かれる評価面談で扱うのは、確定した成果と、それを処遇に結びつけるために人事へ渡す記録のほう。1on1が扱うのは、進行中の仕事をどう解釈しているかのほうで、記録に残す相手が人事ではなく本人になる。
調査は本調査で3,000人(部下1,500人、上司1,500人)に聞いている。部下の成長度と関係が強かった項目を、点数で見ると次のとおり。
| 部下が感じていること | 成長度 |
|---|---|
| 面談時、上司は本音を話してくれている(そう思う) | 7.2点 |
| 同(そう思わない) | 5.2点 |
| 上司は自分のアイデアを尊重してくれている(あてはまる) | 7.3点 |
| 同(あてはまらない) | 6.2点 |
本音の項目では差が2.0点。1on1という枠があるかどうかより、その中で上司が何をしているかのほうが、点数の差として出ている。部下の側にも差があり、傾聴スキルの研修を受けたことがある部下は7.1点、研修も自己研鑽もしていない部下は6.5点だった。
ひとつ注意がいる。これは一時点で聞いた横断調査なので、上司が本音を話したから部下が成長した、という順序までは示せない。成長を実感している部下が、同じ上司の発言を本音と受け取りやすい可能性も残る。
1on1と一緒に検索される語のなかに「意味ない」がある。意味があったかどうかを面談全体に問うと、答えは出しにくい。手がかりは、上の4つの要素のうちいくつが自分の面談に入っていたか。
進捗を報告し、次の指示を受けて終わる30分。励ます、聴く、問いを返す、経験を言葉にするのを助ける——どれも起きていないので、名前が1on1でも、この調査の定義では1on1として数えられない。半分が雑談で埋まった面談のほうが、上司が問いを返して本人が自分の経験を整理できていれば、要素は入っている。中身の判定と、時間の使われ方の印象は、そろわない。
数字の側でも差はそこに出ていた。本音を話してくれていると感じている部下の成長度が7.2点、そう思わない部下が5.2点。枠を置いたかどうかで説明のつく差ではない。
実施頻度の平均は月0.8回で、誰が持ちかけたかによって月0.5回から2.8回まで開く。実施率や規模別の差は1on1実施率55.7%は誰の数字かにまとめた。
何週間おきが適切か、という問いに答える公的な基準はない。この調査でも、月2〜3回以上かつ1回30分以上1時間未満の層で部下の成長度が最も高かったと報告されているが、月2〜3回以上の層は部下1,500人のうち132人しかおらず、1回の時間でさらに割った層はもっと小さい。区分を細かく割るほど母数は小さくなり、たまたま高く出た区分が最大値の位置に来る確率も上がるので、そこを取り出して推奨頻度と呼ぶのは無理がある。決め手にはならない。
入ったばかりの職場で毎週30分もらう人と、3年同じ手順を回している人とでは、話す材料の出てくる速さが違う。前者は1週間で判断に迷う場面が何度も来るし、後者は1か月分ためても議題が2つあるかどうか。同じ頻度を当てはめれば、片方は足りず、もう片方は「話すことがない」と言い合う時間になる(推定)。
だから頻度を決める前に、自分の側で何が溜まっているかを見たほうが早い。2週間に1回で議題が余るなら間隔は足りていないし、毎週30分の枠を埋めるために前日に話題を探しているなら、枠のほうが仕事の変化の速さを追い越している。
「話すことがない」。1on1について繰り返し出てくる訴えで、解説記事の多くが項目を立てて答えている。隔週や毎週で枠が来るのに、話す材料をその場で思い出すものだと考えていると、だいたい尽きる。上司に議題を用意してもらう手もあるけれど、その場合に扱われるのは、上司から見えている範囲の出来事に限られる。
1on1の中身は上司の振る舞いに左右されるが、持ち込む材料のほうは自分で用意できる。数えられるものを3つ挙げる。この4週間で判断に迷った場面の数。迷ったまま進めて手戻りになった回数。相談してから答えが返るまでの日数。
どれも面談の場で思い出そうとすると出てこない。週明けの30分で、先週どこで詰まったかを正確に言える人は少ないし、思い出せた分だけを話すと、面談の議題はいつも直近の出来事に寄る。書いてあれば、議題を決めるのが上司でなくなる。
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