上司と話す機会がないとき何を数えるか

上司と話す機会がないとき、先に分けるべきものが3つある。話す場そのものが無いのか、場はあるのに持ち込む議題が無いのか、持ち込んでも返ってこないのか。どれに当たっているかで自分の側から動かせる範囲が変わり、場が無いまま議題の作り方を工夫しても空振りするので、打ち手を探すより先に、いま月に何回話しているかを数えるところから始めたい。

「機会がない」は3つの状態に分かれる

場が無い。定例の1on1も、自分と上司だけで話す時間も設定されていない状態で、業務連絡はチャットで完結し、上司の声を聞くのは参加者の多い全体会議のときだけ。話題を用意しても置く場所がない。

議題が無い。月1回の面談が入っているのに、5分で終わる。報告する内容は前の日の日報に書いてあって、面談の時間に何を持ち込むのかは誰も決めていないため、場だけが形として残る。

返ってこない。議題を持ち込んでも「考えておく」で止まって次回に持ち越されず、相談した結果が担当や締切や予算の変更として現れてこない状態。自分の準備では動きにくい部分を含む。

3つは重なる。ただし順番があって、下の層を確かめないまま上の層に手を付けると、効いたかどうかが分からない記録だけが残る。

定例の場がある職場は多数派ではない。人事を対象にした調査では1on1を導入している職場は55.7%で、残りの職場では1対1で話す時間がそもそも設計されていないことになる。自分の工夫の前に、職場の条件として先に置いておく数字。

まず4週間、回数を数える

数えるのは3つ。上司と1対1で話した回数、1回あたりの長さ、そのうち自分から持ちかけた回数。週ごとに1行で足りる。

週 1対1で話した回数 合計の長さ 自分から持ちかけた回数
第1週 1 10分 1
第2週 0 0分 0
第3週 2 35分 1
第4週 0 0分 0

4週で0回なら「場が無い」。回数はあるのに1回5分前後で終わっているなら「議題が無い」に寄り、自分から持ちかけた回数が合計と一致しているなら、場の維持をこちらが全部負担している状態で、忙しい時期が来ると回数はそのまま0に落ちる。

数える前に対策を増やすと、何が効いたのか後から切り分けられなくなる。この4週ぶんが基準値になる。話す量そのものを変数として扱うなら、フィードバックの頻度とは何を数えるかに測り方を書いた。

リモートでは、設定された場しか残らない

リモート勤務で減るのは、偶発的な接点のほう。席を立ったときのすれ違い、会議の前後の数分、昼の時間。設定されていない接点は在宅だと発生しないが、カレンダーに入っている定例のほうは在宅でも減らない。

リモート中心の働き方では、「場が無い」状態が隠れずに表に出てくる。出社していた頃は偶発的な接点が月に何度かあって、それで足りているように見えていただけ、という順序。出社は週何回か、働く場所は誰が決めるかで出社日数の決まり方を整理したが、週あたりの出社日数は、上司と同じ時間と場所に居る回数の上限をそのまま決めてしまう。

対処は2方向ある。同期の場を増やすか、非同期で議題を置くか。週報に「相談したいこと」の行を1つ足すのは後者で、新しい場を作らずに議題だけ渡せるうえ、テキストで返事が来るかどうかで「返ってこない」層に当たっているかも同時に確かめられる。

議題が無いなら、3行だけ用意する

場があって中身が無いときは、持ち込む側の準備で変わる余地が大きい。1回の面談に3行。状況、判断に迷っていること、こちらの案。この形は1on1で上司に何を話すか、3行で決めるに書いた。

3行を用意して持ち込んでも5分で終わるなら、準備の問題ではない。場の設計か、上司の側の負荷を見る段階に移る。沈黙が続く面談の読み方は1on1の沈黙は、部下の準備不足かにある。

返ってこないときは、結果の数を見る

相談したあとに何が変わったかを記録する。日付、相談した内容、そのあとに実際に動いたこと。動いていなければ空欄のまま置く。

4週で空欄が全部なら、話す回数を増やしても同じ往復が繰り返されるだけなので、見る対象が、話す機会の量から決定の経路のほうに移る。誰が決めているのか、上司の権限がどこで止まるのか。給与や評価の話なら、給与の決まり方の聞き方と、聞く前に読む書類に、聞く相手と書類の順番を書いた。

上司との関係そのものを切り分けたいなら上司と合わない原因を4つに分ける。原因が人なのか職場の設計なのかで、取れる手が変わる。

増やすなら、数えた結果から1つ選ぶ

打ち手を全部やらない。4週ぶんの記録を見て、該当する層に対応する1つだけを選ぶ。

  • 4週で0回だったら、15分の定例を自分から提案する。頻度は月2回から。「相談の時間を定期で取りたい」と目的だけ伝える
  • 回数はあって短いなら、3行の議題を前日までにテキストで渡す
  • 自分から持ちかけた回数が合計と同じなら、頻度を落として1回を長くする。週1回10分を月2回20分に組み替える
  • 相談の結果が動いていないなら、回数を増やさない。決定の経路を確かめる側に回る

次の評価面談までに何回話せるかは、残りの月数と頻度の掛け算で決まる。月1回の面談が3か月後なら、持てる機会は多くて3回。この制約と4週の記録を並べると、どの層から手を付けるかはだいたい絞れる。

条件として記録しておく

上司と話す頻度は、職種や勤続年数より先に、職場の設計で決まっている部分が大きい。定例があるか、出社日数が何日か、相談が担当の変更として返ってくるか。この3つは自分の努力量とは別の軸にある条件なので、異動や転職の判断材料にするなら、感覚のまま持っておくより回数として残しておきたい。

4週ぶんの記録が1回ぶん。それを3か月続けると、繁忙期の影響を除いた水準が見えてくる。