1on1の沈黙は、部下の準備不足か

1on1で黙ってしまうとき、足りていないのは話題の知識ではありません。手元に材料が無いまま、その場で話を組み立てようとしている。パーソル総合研究所が2024年6月に実施した調査では、部下が受けている1on1の頻度はひと月あたり平均0.8回でした(1on1経験者 n=1,500)。ひと月に1回も無い間隔で「最近どうですか」と聞かれて、前回からの出来事を数秒で取り出せる人のほうが少ない。沈黙は準備の失敗として引き受ける前に、間隔の問題として見たほうが直せます。

黙っている15秒は、3つに分かれる

上司の側からは、どれも同じ「黙っている」に見えます。自分では区別がつく。

材料が無い。先週から今週にかけて自分の手元で何が起きたか、日付と回数のついた形では思い出せていない状態で、話題そのものを知らないこととは別です。話したいことはあるが言えない。評価に響きそう、まだ形になっていない、相手が決めた方針への疑問である。この2つ目は、話題を用意しても消えません。3つ目は、答えを組み立てている最中の数秒。これは沈黙というより作業時間で、待ってもらえれば解けます。

次の1on1で何をするかは、この3つのどれだったかで変わる。材料が無いなら記録を作る、言えないなら話す相手か場所を変える、考えている最中なら「少し考えます」と声に出す。ひとまとめに「話し下手だから」と処理してしまうと、次も同じ15秒が来ます。

ひと月0.8回の間隔では、材料が貯まる前に当日が来る

同じ調査で、1on1の頻度は誰が言い出したかで大きく違っていました。

実施のきっかけ ひと月あたりの回数
部下が上司に提案して実施 2.8回
上司が部下に提案して実施 1.8回
会社の方針・義務として実施 0.5回

全体の平均が0.8回なので、部下回答の多くは会社の方針で動いている枠に近い。0.5回。2か月に1回の勘定です。その間隔だと、前回からの出来事は30〜40営業日ぶんある。全部を思い出してから話すことを選ぶのは無理で、当日に材料を探せば黙ります。

部下側の困りごとの上位3つも、同じ方向を指していました。1位が「面談の効果が感じられない」29.7%、2位が「面談について学ぶ仕組みがない」28.3%、3位が「上司が多忙で、面談のスケジュール設定が難しい」26.3%(n=1,500)。スケジュールが取りにくいことと、間隔が空くことはつながっています。

議題を自分で決めた回のほうが、点数がわずかに高い

この調査は、部下の成長度を10点満点の指標にしています(経験学習の「内省的観察」と「抽象的言語化」を合成したもの)。その点数を、1on1の進み方で分けた結果がこれです。

1on1の進み方 部下の成長度
テーマを部下が設定 6.9点
テーマを上司が設定 6.4点
部下の話す割合が高い 6.8点
上司の話す割合が高い 6.3点

どちらも差は0.5点。小さい。ここから読めるのは「部下がテーマを持ち込んだ回のほうが点数が低くはなかった」という順序だけで、テーマを決めれば成長するという向きの話までは、この集計では出ていない。

それでも、議題を自分で持っていく理由にはなります。持ち込んだ側は、黙る時間が構造的に短い。

話す中身の決め方は1on1で上司に何を話すかに、面談そのものの定義は1on1とは何をする場かに分けて書いています。

話さないと決めた範囲を、先に決めておく

同じ調査では、1on1のときに「上司が本音を話してくれている」と感じる部下ほど成長度が高く、そう思う側が7.2点、そう思わない側が5.2点でした。2.0点の差です。

これは上司の側の数字で、部下に同じ率直さの義務があるという話ではない。家庭の事情、転職を考えているかどうか、健康のこと。話さないと決めていい範囲があります。

範囲を先に決めておくと、当日の沈黙の意味が変わります。「隠している」から「範囲の外だった」に変わるだけで、黙った数秒を自分で説明できる。「その話は今日はやめておきます」と言えば、15秒は5秒で終わります。

上司の側が黙っているときは、向きが逆

自分は準備してきたのに、上司が「特にないなら終わろうか」で切り上げる。この形の沈黙は、こちらの準備を増やしても埋まりません。

さきほどの7.2点と5.2点の差は、上司が率直に話しているかどうかで部下の側に開いた差です。上司が黙る回が続くなら、記録を取る対象は自分の話題ではなく、面談そのものになる。何月何日に何分で終わったか、こちらの依頼にどう返ってきたか。3回ぶん並べると、傾向が見えます。

半年黙ったままなら、それは職場の状態の記録

沈黙が1回なら、その日の調子の問題かもしれない。半年続いたなら、上司との面談以外に仕事の詰まりを持っていける経路が職場に用意されていないことを示している可能性があり、そこは自分の話し方を直しても動きません。

この調査で頻度を3つに分けた内訳は、月2〜3回以上の高頻度が132人、月1回から3か月に1回程度の中頻度が535人、4〜6か月に1回程度の低頻度が833人(n=1,500)。半数以上が、半年に1〜2回の間隔です。この人たちにとって1on1は、日常の相談経路ではありません。

だとすれば、測る対象は1on1の中身にとどまりません。仕事で詰まったとき、直属の上司のほかに話を持っていける先が何本あるか。その本数のほうが、面談の巧拙より効きます。

今週やること

3回ぶんの1on1を思い出して、黙った場面を上の3つに割り振る。材料が無かった回が多いなら、次の面談までに日付と回数だけのメモを3行。言えなかった回が多いなら、話す相手を1人増やせないかを考える。

割り振りが終わったら、いまの職場で相談を持っていける経路が何本あるかも一緒に数えてみてください。

出典

  1. 部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査/パーソル総合研究所/2024年6月調査(部下側 n=1,500)
  2. 同調査 報告書PDF(パーソル総合研究所、2025年2月27日公表)