残業時間の推移、山は2022年

2022年の10.1時間が、この6年でいちばん長い。2025年は9.8時間で、山から0.3時間下。厚生労働省の毎月勤労統計調査が集計した事業所規模5人以上・調査産業計の所定外労働時間(1人あたり月平均)で、2020年の9.2時間を底にして3年かけて上がり、2022年で折り返し、そこからまた3年かけて下りてきた形になっている。

6年で動いた幅は0.9時間

年 就業形態計 一般労働者 パートタイム労働者
2020年 9.2時間 12.4時間 2.1時間
2021年 9.7時間 13.2時間 2.0時間
2022年 10.1時間 13.8時間 2.2時間
2023年 10.0時間 13.8時間 2.2時間
2024年 10.0時間 13.5時間 2.3時間
2025年 9.8時間 13.2時間 2.3時間

就業形態計の最大と最小の差は0.9時間。月にして1時間に届かない。一般労働者の列はもう少し振れていて、12.4時間から13.8時間までの1.4時間の幅があり、2021年と2025年がどちらも13.2時間という同じ値で並ぶ。

パートタイム労働者は2.0時間から2.3時間の間にとどまった。6年で0.3時間。

フルタイムで働いているなら、並べる相手は就業形態計ではなく一般労働者の列になる。常用労働者のおよそ3割を占めるパートタイム労働者の2.3時間が同じ平均のなかに入っているため、就業形態計の9.8時間は一般労働者の13.2時間より3時間以上低いところに落ちていて、この混ざり方については残業時間の平均は月9.8時間に書いた。

底の2020年は、上限規制が全企業に広がった年

時間外労働の上限規制は、大企業に2019年4月、中小企業に2020年4月から適用された。原則は月45時間・年360時間。9.2時間という6年間の最小値は、上限規制が企業規模を問わず行き渡った最初の年と、感染症の拡大で休業や時短が広がった年とが重なった位置に立っている。

その2020年の9.2時間は、前年から13.2%下がった値だった。翌年から3年続けて上がり、2022年に10.1時間まで戻る。制度と景気のどちらがどれだけ効いたのか、この6つの数字の並びだけでは切り分けられない。

製造業は調査産業計の2.8倍ぶれた

年 調査産業計 製造業
2020年 9.2時間 11.9時間
2021年 9.7時間 13.6時間
2022年 10.1時間 14.4時間
2023年 10.0時間 13.6時間
2024年 10.0時間 13.2時間
2025年 9.8時間 13.4時間

製造業の最大と最小の差は2.5時間で、調査産業計の0.9時間の2.8倍にあたる。2021年に1.7時間上がり、2022年にさらに0.8時間。2023年には0.8時間戻している。

調査産業計は、16の大産業をならしたあとの値。ならした時点で、この振れ幅はほとんど消える。自分の職場の残業が年ごとに1時間以上動いていたとしても、0.9時間という全体の幅と比べて大きすぎるとは限らず、どの産業に属しているかで年ごとの振れ方は変わる。産業ごとの水準は、同じ調査の産業別集計のほうにある。

年をまたいだ引き算は、同じ事業所で起きた変化ではない

この調査は毎年1月に標本の一部を入れ替える。2024年に答えた事業所と2025年に答えた事業所は全部が同じではないので、表の縦の並びを引き算して出した0.2時間という差は、どこかの職場で残業がその年に0.2時間短くなったことを意味しない。

2024年の10.0時間から2025年の9.8時間を引くと0.2時間。率に直せば2.0%。ところが公表されている2025年の前年比は−2.5%で、この引き算と一致しない。実数が小数第1位までの丸めだからで、年ごとの実数の差と公表された前年比は、別々に読む。

年に直すと117時間、月の12倍ではない

2025年の年換算値は、常用労働者で総実労働時間1,621時間、所定内1,504時間、所定外117時間。一般労働者は1,926時間、1,768時間、158時間。

作り方が決まっている。総実と所定内は各月の平均値を12倍して小数第1位を四捨五入し、所定外はそうして出した総実から所定内を引いて算出する。月9.8時間の12倍は117.6時間だが、公表される年換算の所定外は117時間。年の系列を追うときは、この引き算が一段はさまっている。

この推移で言えないこと

所定外労働時間は、事業所が記録して報告した時間である。記録に乗らなかった分は、どの年の平均にも入らない。6年の並びが下を向いていても、働いた時間そのものが減ったのか、記録の外に出た時間があるのかを、この表から区別することはできない。

常用労働者5人未満の事業所は対象外。2025年に集計の対象となった常用労働者は推計で5,156万人だった。

平均であって、分布ではない。月45時間を超えて働いた人が各年に何人いたかは出てこないし、10.1時間という平均の下に0時間の人と60時間の人が同時にいても、数字の上では矛盾しない。

パートタイム労働者比率は2025年で31.31%、前年から0.45ポイント上がっている。所定外が2.3時間の層が厚くなれば、一般労働者の残業が同じでも就業形態計は下がる。就業形態計の下降をそのまま残業の減少として読むと、この動きを取り違える。何が労働時間に数えられるかの線引きは実労働時間とは何を数えた時間かにまとめた。

6年の並びと、自分の去年

給与明細の時間外の欄を、去年の12か月ぶん並べて合計する。158時間に近ければ、一般労働者の年換算とほぼ同じ位置。12か月を並べたままにしておけば、合計だけでは消えてしまう山と谷が月の単位で残るので、自分の残業がどの時期に集まっていたのかも同時に読める。

そのうえで、時間数には出てこないものが3つある。残業を頼まれた日のうち、前日までに分かっていた割合。いちばん長い月と短い月の差。担当する仕事が入れ替わった回数。

全体の平均は6年で0.9時間しか動かなかった。自分の職場の年ごとの動きがそれより大きいのか小さいのかは、手元の記録が4週ぶん貯まったところから見えてくる。

出典

  1. 毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報/厚生労働省/事業所規模5人以上・調査産業計・常用労働者5,156万人(推計)
  2. 主要労働統計指標「所定外労働時間」/労働政策研究・研修機構/毎月勤労統計調査をもとにした年平均値(調査産業計・製造業、2020〜2025年)
  3. 月間実労働時間数・年間実労働時間数(一人平均)2025年/労働政策研究・研修機構(毎月勤労統計調査をもとにした年換算値)
  4. 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報(2024年の実数)/厚生労働省