有給取得率、業種別で24.5ポイント差

年次有給休暇の取得率は、いちばん高い「電気・ガス・熱供給・水道業」が75.2%、いちばん低い「宿泊業,飲食サービス業」が50.7%。差は24.5ポイントある。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査が集計した、令和6年1年間の実績である。全体の平均は66.9%だった。ただし取得率だけを並べると見落とすものがあって、付与された日数そのものが産業によって15.9日から19.7日まで違う。

16産業の取得率

産業 付与日数 取得日数 取得率
電気・ガス・熱供給・水道業 19.5日 14.7日 75.2%
鉱業,採石業,砂利採取業 18.2日 13.5日 74.3%
製造業 18.8日 13.7日 72.8%
金融業,保険業 19.6日 14.3日 72.8%
サービス業(他に分類されないもの) 16.4日 11.4日 69.7%
医療,福祉 17.7日 12.1日 68.4%
情報通信業 18.9日 12.7日 66.9%
学術研究,専門・技術サービス業 18.4日 12.3日 66.8%
不動産業,物品賃貸業 17.8日 11.6日 65.5%
運輸業,郵便業 17.4日 11.4日 65.3%
建設業 18.3日 11.1日 60.7%
教育,学習支援業 18.3日 11.1日 60.5%
卸売業,小売業 17.5日 10.5日 59.9%
生活関連サービス業,娯楽業 17.7日 10.6日 59.6%
複合サービス事業 19.7日 11.2日 57.1%
宿泊業,飲食サービス業 15.9日 8.0日 50.7%
計 18.1日 12.1日 66.9%

全体の66.9%を上回るのは6産業。情報通信業がちょうど66.9%で並び、残る9産業は下回る。上位と下位に割れているというより、70%台が4産業、60%台が8産業、50%台が4産業と、なだらかに散らばっていて、どこかに境目を引けるような分布ではない。

付与日数がいちばん多い産業が、取得率では下から2番目

複合サービス事業の付与日数は19.7日で、16産業のなかで最も多い。取得日数は11.2日、取得率57.1%。下から2番目である。同じくらい付与されている金融業,保険業は19.6日に対して取得14.3日で取得率72.8%となっており、付与日数が0.1日しか違わない2つの産業のあいだで、取得率は15.7ポイント離れている。

逆の例もある。サービス業(他に分類されないもの)の付与日数は16.4日で、宿泊業,飲食サービス業に次いで少ない。それでも取得率は69.7%で全体を上回る。分母が小さければ、同じ日数を取っても率は高く出る。取得日数で見ると11.4日で、全体の12.1日を下回っている。

取得日数の順に並べ替えると、順位は入れ替わる。電気・ガス・熱供給・水道業14.7日、金融業,保険業14.3日、製造業13.7日、鉱業ほか13.5日。ここまでが13日台以上。いちばん少ないのは宿泊業,飲食サービス業の8.0日で、これは全体平均の12.1日より4.1日少なく、上の電気・ガス・熱供給・水道業とのあいだには6.7日、およそ1週間分の開きがある。

取得率は、付与された日数を分母にしている

取得率は、取得日数の合計を付与日数の合計で割って100を掛けた値である。分母の付与日数から繰越日数は除かれる。「今年もらった日数のうち、今年どれだけ使ったか」を見た数字であって、繰り越して積み上がった残日数は計算に入らない。手元の残日数とは別のもの。

産業を比べるときは、この分母が産業ごとに違うことを頭に置く。付与日数の少ない産業は率が高めに出やすく、多い産業は低めに出やすいので、取得率と取得日数の両方を並べないと、実際に休めている量までは見えてこない。両方見る。

年5日の取得義務が入った前後で全体がどう動いたかは、有給取得率の推移にまとめてある。企業の規模による差は有給取得率、企業規模別で4.1ポイント差のほう。

自分がどの産業に入るかは、勤め先の主な事業で決まる

この区分は日本標準産業分類の大分類で、自分の職種ではなく勤め先の事業で決まる。同じ経理の仕事でも、勤め先が病院なら「医療,福祉」、メーカーなら「製造業」。人材派遣で働いている人の場合は、派遣元の事業が「サービス業(他に分類されないもの)」に分類されることがあり、日々出勤している派遣先の産業と、統計のうえで自分が入る区分が一致しない。

「複合サービス事業」は郵便局や協同組合を指す区分で、名前から中身を推し量りにくい。「サービス業(他に分類されないもの)」も同様に、ほかの15区分に入らない事業の受け皿になっている。この2つの数字を読むときは、自分の勤め先が本当にそこかを確かめてからにしたほうがいい。

この数字が答えていないこと

産業ごとに何社を集計したのかは、この概況に載っていない。調査全体では常用労働者30人以上の民営企業6,448社を対象に3,820社が回答し、回答率は59.2%。産業別の内訳は公表されている統計表を開かないと分からず、区分によっては母数が小さい可能性がある。

集計の単位は企業で、個人ではない。平均は平均。産業のなかのばらつきは出てこないので、取得率75.2%と書かれた産業に取得率3割の職場が無いという意味にはならないし、50.7%の産業に9割の職場が無いという意味にもならない。

雇用形態別の内訳もない。パートタイム労働者を含む常用労働者をまとめた平均なので、正社員だけの数字ではない。

自分の職場の数字を、業種の行の隣に置く

見るのは2つ。上の表から自分の産業の取得率と取得日数を控えて、勤怠システムか給与明細に出ている自分の付与日数と取得日数を、その隣に書き足す。付与日数から残日数を引けば取得日数が出る。

自分の取得日数が産業の平均より2日少ないのか、5日少ないのか。差を日数で出しておくと、休めていない理由を職場の空気に求めるか、担当している業務量に求めるかを、感覚に頼らずに切り分けられる。1年後に同じ計算をすれば、動いたかどうかも分かる。記録は2行。

出典

  1. 令和7年就労条件総合調査 結果の概況(第5表 労働者1人平均年次有給休暇の取得状況・産業別)/厚生労働省/令和6年1年間(または令和5会計年度)の実績・調査客体6,448社・有効回答3,820社(回答率59.2%)
  2. 同 結果の概況(PDF。調査の概要と産業別の第5表)/厚生労働省/令和7年12月19日公表
  3. 同 統計表(第5表)/厚生労働省