同調圧力の例は、決まりが無いのに揃っているものとして見つかる。服装、始業と退勤の時刻、会議での発言の仕方、休みの取り方、飲み会などの付き合い。この5つの場面で「みんなそうしている」ものを数えると、自分の職場でどれだけ型が働いているかが出てくる。言葉の定義そのものは同調圧力とは、暗黙の型の強さに書いた。ここでは例と、例に見えて例ではないものを分ける。
同調圧力の例を5つの場面で数える
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5つの場面で数える
診断の第2章「いまの職場」では、こう聞いている。
決まりはないのに「みんなそうしている」ものは、どれですか(当てはまるものをすべて)
- 服装
- 始業・退勤の時刻
- 会議での発言の仕方
- 休みの取り方
- 飲み会などの付き合い
- どれもない
場面を5つに絞ったのは、職場で起きることのほとんどがこのどれかに入るから。選んだ数が、そのまま暗黙の型の強さになる。
職場で実際にどう現れるかを、場面ごとに並べる。
服装。 服装規定に「スーツ」と書かれていないのに全員が上着を持って出勤していて、クールビズの期間でも来客のある日には誰かが長袖に戻り、新しく入った人は初日に周囲を見て翌日から服の系統を変える。文書にはどこにも書かれていない。
始業と退勤の時刻。 始業は9時なのに、8時40分には席が埋まっている。定時の17時半に立ち上がる人がいないので帰る人は先に帰ると声をかけることになり、会議が16時台に設定されるのが習わしになっている職場では、終わった時点で残りの作業が定時後に押し出される。
会議での発言の仕方。 反対意見は会議の場では出さず、終わったあとに個別で話す。発言の順番が席順や役職の順で固まっていて、資料への質問は事前に根回しが済んでいるものだけが出るので、議事録を読んだ人には全員が同じ方向を向いていたように見える。
休みの取り方。 有給を2日続けて取る人がいないので、周りと同じように1日ずつ取る。同じ週に2人が休まないよう申請の前に互いに確認し、休む日の前には「ご迷惑をおかけします」と書いたメールを送る。誰が決めたわけでもない手順。
飲み会などの付き合い。 歓送迎会は全員参加が前提になっていて欠席には理由の説明が付き、一次会で帰る人がいないので二次会まで残る時間を最初から空けておく人が多い。日程調整の連絡に返信しないという選択肢は、事実上ない。
例に見えて、例ではないもの
3つは外して数える。この区別をしないと、職場の性質を測るかわりに自分の窮屈さを測ることになる。
第一に、明文の規則への準拠。就業規則、服務規律、業務マニュアル、安全衛生の手順。書かれている決まりを守っているだけなら、暗黙の型ではない。確かめ方は単純で、文書を探して該当する条文があるかを見る。
第二に、上司からの明示的な指示。「この時間に出てください」と言われている場合、そこに働いているのは指示の力。暗黙の型は、誰も指示していないのに揃うところに現れる。
第三に、自分で選んだ協調。朝早く来るのが自分の段取りに合っているなら、揃っているのは結果にすぎない。ここが最も見分けにくい。自発的に合わせているのか、それとも外れたときに起きることを避けているのか、毎日の判断が習慣になってしまったあとでは本人にも区別がつかなくなる。
手がかりは1つだけある。外れた人に何が起きたかを思い出せるかどうか。 思い出せるなら、それは型であって選択ではない。何も起きていないなら、揃っているのはたまたまかもしれない。
休みの取り方には、数値がある
5つの場面のうち、公的な調査で強さが出ているのは休みの取り方だ。厚生労働省の意識調査(2014年)では、年次有給休暇の取得にためらいを感じる人の割合が68.3%。「ためらいを感じる」が24.8%、「ややためらいを感じる」が43.5%で、合わせた数字である。
ためらいの理由は複数回答で、次の順になった。
| 理由 | 2014年 | 2000年 |
|---|---|---|
| みんなに迷惑がかかると感じるから | 74.2% | 58.7% |
| 後で多忙になるから | 44.3% | 42.3% |
| 職場の雰囲気で取得しづらいから | 30.7% | 36.4% |
| 上司がいい顔をしないから | 15.3% | 15.7% |
| 昇格や査定に悪い影響があるから | 9.9% | 8.4% |
14年のあいだに動いたのは上の2行と3行目。「みんなに迷惑がかかると感じる」が58.7%から74.2%へ上がり、「職場の雰囲気で取得しづらい」は36.4%から30.7%へ下がった。外から押される形で語られる割合が減り、自分の側の配慮として語られる割合が増えている。
同調圧力の例が見つけにくいのは、この形で残るから。誰も休むなと言っていないし、雰囲気が悪いわけでもない。それでも休まない理由を本人が持っている。取得率そのものの水準は業種別の有給取得率に、休みにくさへの対処は有給が取りづらいときの対処にまとめた。
発言の例は、別の変数と重なる
会議で反対意見が出ない職場を、暗黙の型だけで説明すると粗い。発言したときに何が返ってくるかは心理的安全性という別の変数で、心理的安全性とは何を測る言葉かで扱っている。型が強くても発言が歓迎される職場はあるし、型が弱くて発言が通らない職場もある。
決める範囲の広さも別。服装や時刻が揃っていても、業務の進め方を自分で決められるなら、裁量権とは、何を自分で決められるかで測る値は高く出る。例を場面で分けておくのは、こうした重なりを解くためでもある。
今週やるなら、2件だけ書く
上の5場面を見て、自分の職場で当てはまる数を数える。それから、決まりから外れた人に何が起きたかを1件、事実のまま書く。指摘されたのか、次から声がかからなくなったのか、評価の面談で持ち出されたのか。
この2つが揃うと、「同調圧力が強い職場」という言い方が「暗黙の型が4場面で、外れた人は次の担当から外れた職場」という記述に変わり、同じ状況について話しているのに相手と確かめられる部分が残る。診断では、この数え方で記録が溜まっていく。面談でも異動の相談でも、扱えるのは後者のほう。





