セクハラの種類、法令にあるのは2つ

セクハラの類型として法令に書かれているのは2つだけ。性的な言動への対応によって労働条件の不利益を受ける対価型と、性的な言動によって就業環境が害される環境型。指針(平成18年厚生労働省告示第615号、令和8年10月1日適用)2(1)がこの2つに分けていて、ほかの呼び名は指針の文言に出てこない。

軸は結果だけではない。言動の形で分ける軸、誰とのあいだで起きたかで分ける軸もある。どの軸で見ても事業主の措置義務の判定は2類型に戻るけれど、受けた言動を書き出して社内の窓口や労働局に渡すときには、形と関係で分けておいたほうが短く伝わる。

法令にある分類は、何が失われたかで分かれる

対価型で失われるのは、解雇・降格・減給・不利益な配置転換といった労働条件上のもの。環境型のほうは、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、就業する上で看過できない程度の支障。指針は型ごとに典型例を3つずつ挙げていて、その中身はセクハラとは、対価型と環境型に整理した。

分かれ目は結果の側にある。性的な発言に抗議した人が降格されれば対価型。同じ発言が続いて仕事が手につかなくなれば環境型。どちらに当たるかを決めているのは言動の激しさではなく、労働条件が動いたのか、それとも就業環境が害されたのかという結果の違いである。

制裁型・妄想型という呼び名は、指針に出てこない

呼び名は多い。解説記事では、対価型と環境型のほかに制裁型、妄想型、デジタルハラスメントといった名前が並ぶことがある。どれも指針の文言にない。事業主の措置義務も、都道府県労働局が扱う紛争も、法令のうえでは2類型の枠で動く。

呼び名が増えること自体は、受けた言動を言葉にしやすくする。ただ社内の窓口に出すときは、呼び名よりも、何をされて何が起きたかのほうが先に効く。

言動の形で分けると、発言と行動の2つ

指針2(4)は「性的な内容の発言」と「性的な行動」を分けて例示している。発言のほうに入るのは、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等。行動のほうは、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等。

分け目は1つ。言葉だけで完結するかどうかで、メールやチャットの文面は発言の側に入る。

誰とのあいだで起きたかで分けることもできる

指針2(4)が挙げる行為者は、事業主(法人の場合はその役員)、上司、同僚に限らない。取引先等の他の事業主またはその雇用する労働者、顧客、患者またはその家族、学校における生徒等も行為者になり得る。

労働者の側にも線引きがない。指針2(3)は、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する労働者の全てと定めている。派遣で働いている場合は、労働者派遣法47条の2により派遣先も雇用する事業主とみなされる。

同性間も対象に入る。被害を受けた者の性的指向またはジェンダーアイデンティティにかかわらず、その者に対するセクハラも指針の対象となる、というなお書きが2(1)に置かれている。

顧客や患者から受けた性的な言動については、2026年10月1日からカスハラの措置義務とも重なった。重なり方はカスハラとは、3つの要素で決まるのほうに書いてある。

どう測るか

公表されている測り方は、受けた言動の内容を本人に尋ねる形。厚生労働省の委託調査(2023年12月〜2024年1月実施)で、過去3年間にセクハラを受けたと回答した人(n=503)に内容を複数回答で尋ねた結果が、次の並びになる。

受けたセクハラの内容 割合(n=503、複数回答)
性的な冗談やからかい 49.7%
不必要な身体への接触 26.2%
食事やデートへの執拗な誘い 22.3%
性的な事実関係に関する質問 15.7%
性的な内容の情報の流布 10.1%
性的な言動に対して拒否・抵抗したことによる不利益な取扱い(解雇・降格・減給・不利益な配置転換など) 8.7%
性的な関係の強要 7.8%
その他 8.5%

8つの選択肢のうち、対価型に当たるのは「拒否・抵抗したことによる不利益な取扱い」の1つで8.7%。残りは環境型の側に並ぶ。実際に起きている分布は、法令の2類型に均等には割れていない。

前回調査(令和2年度、n=814)との比較でも動きが出ている。性的な事実関係に関する質問が20.0%から15.7%へ、拒否・抵抗による不利益な取扱いが13.9%から8.7%へ下がった。食事やデートへの執拗な誘いは17.6%から22.3%に上がっている。

男女で向きが変わる項目もある。性的な冗談やからかい、不必要な身体への接触、食事やデートへの執拗な誘いは女性のほうが割合が高い。拒否・抵抗したことによる不利益な取扱いと、性的な内容の情報の流布は、男性のほうが高かった(図表141、n=503)。

隣接する言動は、別の枠で扱われる

性別役割分担意識に基づく言動は、指針4(1)イでセクハラの発生の原因や背景として位置づけられている。類型の1つという扱いにはなっていない。置かれているのは、周知・啓発の対象の側。

妊娠・出産等に関するハラスメントは、均等法11条の3に基づく別の措置義務で、指針も別に出ている。顧客等からの言動なら、2026年10月1日に適用が始まったカスハラの指針。ハラスメントという語全体の内訳はハラスメントとは、定義は5つあるに整理した。

自分の職場で確かめられること

見る場所は2つ。就業規則にセクハラの禁止が書かれていても、対価型と環境型のどちらまで書き分けているかは会社ごとに違い、行為者の範囲に取引先や顧客が入っているかどうかも、同じ文書を読めばその場で分かる。

記録を残すときは、類型の名前で分けなくていい。発言か行動か。誰から受けたか。拒否や抗議のあとに何が続いたか。この3つが残っていれば、対価型と環境型のどちらに当たるかは後から判定できる。

出典

  1. 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号、令和8年10月1日適用。2(1) 内容と2類型、2(3) 労働者、2(4) 性的な言動と行為者、4(1) 方針の明確化)
  2. 令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書(厚生労働省委託事業、2023年12月〜2024年1月実施、セクハラを受けたと回答した労働者 n=503。図表138 受けたセクハラの内容、図表141 男女別)
  3. 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省 雇用環境・均等局。各ハラスメントの指針の一覧と適用時期)