セクハラの判断基準は、受け手の主観を出発点に置いたうえで、一定の客観性を要求する形になっている。厚生労働省の通達は「労働者の意に反する性的な言動」と「就業環境を害される」の判断について、「労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である」と書いている。不快だと感じたかどうかだけで決まるわけではなく、感じ方を無視して外から決まるわけでもない。
ハラスメント全体で基準がどう分かれているかはハラスメントの基準は場ごとに違うに整理した。
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セクハラの判断基準は、受け手の主観を出発点に置いたうえで、一定の客観性を要求する形になっている。厚生労働省の通達は「労働者の意に反する性的な言動」と「就業環境を害される」の判断について、「労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である」と書いている。不快だと感じたかどうかだけで決まるわけではなく、感じ方を無視して外から決まるわけでもない。
ハラスメント全体で基準がどう分かれているかはハラスメントの基準は場ごとに違うに整理した。
通達は客観性の尺度を具体的に示している。セクハラが男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮して、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当、という書き方。
基準が性別で分かれている理由は、認識の違いがあるという前提のほう。被害を受けた本人がどちらの基準で見られるかは、本人の性別で決まる。
同じ箇所に、ただし書きがある。労働者が明確に意に反することを示しているにもかかわらず、さらに行われる性的言動は、職場におけるセクシュアルハラスメントと解され得る。
「平均的な感じ方」の判定を経ないで足りる、と読める部分。やめてほしいと伝えたかどうかが、基準の適用を分ける。伝えた記録が残っていれば、その後の言動は別の尺度で見られる。
環境型について通達が置いている前提は、単に性的言動があっただけでは就業環境が害されたことにはならず、一定の客観的要件が必要、というもの。そのうえで3つの場合を挙げている。
| 場合 | 通達の扱い |
|---|---|
| 意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る | 一回でも就業環境を害することとなり得る |
| 継続性または繰り返しが要件となるもので、明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態 | 就業環境が害されていると解し得る |
| 継続性または繰り返しが要件となるもので、心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合 | 就業環境が害されていると解し得る |
身体的接触は回数の問題から外れる。言葉のほうは、抗議したのに放置されたか、心身への影響が明らかかで見られる。抗議の有無がここでも効いてくる。
対価型の判断で通達が説明しているのは「対応により」の意味。労働者の拒否や抵抗等の対応が、解雇、降格、減給等の不利益を受けることと因果関係があることを指す。
不利益の範囲も広げて示されている。「解雇、降格、減給等」の「等」には、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換が含まれる。契約が更新されなかった、昇格候補から外された、担当を変えられた。どれも対価型の不利益として挙がっている。
「性的な言動」に当たるには、その言動が性的性質を有することが必要。通達はここで例を1つ出していて、女性労働者のみに「お茶くみ」等を行わせること自体は性的な言動には該当しない、としている。
ただし、問題として消えるわけではない。固定的な性別役割分担意識に係る問題、あるいは配置に係る女性差別の問題としてとらえることが適当、と続く。セクハラの基準で測れないものが、別の基準で測られる。
場所の判断にも基準がある。通達によれば、業務を遂行する場所であれば通常就業している場所以外も「職場」に含まれ、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅(保険外交員等)、取材先(記者)、出張先、業務で使用する車中等が例に挙がる。
勤務時間外の「懇親の場」、社員寮、通勤中も、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当する。その判断は、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意か等を考慮して個別に行うもの。
任意参加の集まりだから対象外、と一律には決まらない。考慮要素の1つとして扱われる。
通達は3か所で同じことを断っている。対価型の典型例は限定列挙ではないこと。環境型の典型例も限定列挙ではないこと。措置の方法として示された具体例についても、同じ断り書きが付く。
さらに、セクハラ防止指針の解釈の冒頭には、法と指針は「職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否かを問題とするものではない」とある。該当性を確定させることが目的の文書ではない、という前提。だから、挙げられている例に自分の経験が無いことは、範囲外の根拠にならない。
基準は3つの問いに割れる。意に反することを明確に示したか。身体的接触があったか。抗議したあと放置されたか、または心身への影響が明らかか。この3つは、どれも本人が記録できる。
記録の単位は、日時、場所、言動の内容、こちらが示した反応、その後に起きたこと。抗議の日付と、その後に同じ言動が続いた日付。この2つが並んでいると、通達のただし書きに当てはまるかどうかが見える。
公表されている測り方のうち、本人に尋ねる形のものもある。厚生労働省の委託調査(2023年12月〜2024年1月実施、労働者 n=8,000)は、過去3年間に勤務先で受けたハラスメントを単一回答で尋ねる形で、過去3年間にセクハラを一度以上経験した割合は6.3%。この調査は基準の当てはめをしておらず、本人が経験したと答えたかどうかを数えている。基準による判定と、経験の自己申告は別のもの。
措置の10項目について、通達は「企業の規模や職場の状況の如何を問わず講じなければならない」と書いている。規模による免除はない。方法のほうは、企業の規模や職場の状況に応じて事業主が選択できるよう具体例が示されたもので、こちらは限定列挙ではない。
だから、自分の職場に置かれている形は会社ごとに違っても、置かれていること自体は共通の義務。相談窓口の場所、就業規則の懲戒規定、方針の周知。どれが自分に届いているかを数えると、職場の条件が1つ記録として残る。
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