セクハラの例は、出所が3つある。指針が挙げる典型例、厚生労働省の調査が使っている7つの区分、そして求職者等への言動についての指針の例。このうち数の裏付けがあるのは2つ目で、実際に受けた人が何を挙げたかが割合で分かる。
セクハラの例、多いのは冗談と接触
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実際に多いのは「性的な冗談やからかい」で49.7%
厚生労働省の委託調査(2023年12月〜2024年1月実施、労働者 n=8,000)では、過去3年間にセクハラを一度以上経験した人の割合が6.3%。その人たちが受けた内容として最も多く挙げたのが「性的な冗談やからかい」の49.7%だった。次が「不必要な身体への接触」の26.2%(複数回答)。
身体に触る行為よりも、言葉のほうが多い。相談しにくさは、ここに一因がある。触られたのなら事実を1つ示せるのに対し、冗談やからかいは1回ごとの重さが小さく、積み重ねを説明する言葉が要る。
男女で順位が入れ替わる区分もある。同じ調査では、「性的な言動に対して拒否・抵抗したことによる不利益な取扱い(解雇・降格・減給・不利益な配置転換など)」と「性的な内容の情報の流布」は男性のほうが割合が高く、「食事やデートへの執拗な誘い」と「不必要な身体への接触」は女性のほうが高かった。
調査が使っている7つの区分を、そのまま枠として使える
この調査が選択肢として並べているのは7つ。
- 性的な冗談やからかい
- 性的な事実関係に関する質問
- 性的な内容の情報の流布
- 食事やデートへの執拗な誘い
- 不必要な身体への接触
- 性的な関係の強要
- 性的な言動に対して拒否・抵抗したことによる不利益な取扱い(解雇・降格・減給・不利益な配置転換など)
複数回答なので、1つの出来事が2つ以上に当たることもある。食事に執拗に誘われ、断ったあとに担当を外されたなら、4番目と7番目の両方。自分の経験を言葉にするとき、この7つのどこに入るかを先に決めると、相談窓口で話す順番が決まる。
指針の例示は、発言と行動に分かれている
指針(平成18年厚生労働省告示第615号、令和8年10月1日適用)は、「性的な言動」を性的な内容の発言と性的な行動に分け、それぞれの例を挙げている。
発言のほうは、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等。行動のほうは、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等。
どちらにも「等」が付いている。限定列挙ではない、という意味。挙げられている例に当てはまらないから範囲外、という読み方はできない。
拒否や抵抗のあとに起きたことは、別の型の例になる
指針は、性的な言動への対応によって労働条件の不利益を受けるものを対価型、言動によって就業環境が害されるものを環境型と分けている。
対価型の例として指針が挙げるのは、要求を拒否されたため解雇した、抵抗されたため不利益な配置転換をした、抗議されたため降格した、という形。いずれも、断ったという事実のあとに人事上の扱いが変わっている。
環境型の例は、度々身体に触られて就業意欲が低下した、性的な内容の情報を取引先で流布されて仕事が手につかない、抗議してもヌードポスターが掲示されていて業務に専念できない、というもの。こちらは人事上の扱いが変わらなくても成り立つ。
「職場」の例に、取引先の事務所や打合せの飲食店が入る
指針2(2)は「職場」を、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所と定めている。通常就業している場所以外でも、業務を遂行する場所であれば含まれる。
挙げられている例は、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等。社外だから対象外、という線は引かれていない。
行為者の例には、顧客や患者や生徒も入る
指針2(4)によれば、行為者になり得るのは事業主(法人の場合はその役員)、上司、同僚に限らない。取引先等の他の事業主またはその雇用する労働者、顧客、患者またはその家族、学校における生徒等も含まれる。
顧客や利用者から受けた性的な言動は、2026年10月1日からはカスハラの措置義務の対象とも重なる。要求の内容と手段という2つの軸で分ける見方はカスハラの例は、内容と手段で分かれるに書いた。
求職活動や実習の場での例も、指針に書かれた
2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になった。厚生労働省のリーフレットが挙げる例は2つ。
インターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、その求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。もう1つは、求職者等が労働者への訪問を行った際に性的な関係を求められ、苦痛に感じて求職活動等の意欲が低下していること。
就活等セクハラを受けたと回答した人の集計では、内容の順位が少し違う。「性的な冗談やからかい」38.2%、「食事やデートへの執拗な誘い」35.1%、「不必要な身体への接触」27.2%。食事やデートへの誘いが2位に上がる。
実習生や内定者の受け入れを担当する立場なら、この2つの例が基準になる。面談の時間と場所、やり取りに使うSNSの種類。これらが担当者の判断に任されていないかどうか。
例に当てはめるときに、どこまで測れるか
例の一覧でできるのは、自分の経験に名前を付けるところまで。どこからが違法かという線は、例の一覧からは出てこない。言動の内容、頻度、関係性、就業環境への影響をどう見るかという別の問題になる。
測れるのは、7つの区分のどれに当たるか、何回あったか、いつどこで誰からだったか。日時と場所と言動の内容を書き留めておくと、相談の場で事実関係の確認が進みやすい。指針4(3)は、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認することを事業主の措置に含めていて、その材料になるのは相談者と行為者の双方からの聴取と、第三者からの聴取。
自分の職場の条件は、別に記録しておく
受けた言動の記録と、職場の条件の記録は分けておくほうが見比べやすい。相談窓口がどこにあり、受け付ける相談にセクハラが明示されているか。人と接する量や、顧客と直接やり取りする頻度が、同じ会社の中でどれくらい違うか。
経験した割合は業種によって2倍近く開く。自分の置かれている条件を事実として残しておけば、合わない条件が何かを後から言葉にできる。





