セクハラとは、対価型と環境型

セクハラは、職場で行われる性的な言動に対する労働者の対応によってその労働者が労働条件につき不利益を受けること、または性的な言動によって就業環境が害されること。男女雇用機会均等法11条1項から3項までがこれを前提に事業主の措置義務を定め、中身は指針(平成18年厚生労働省告示第615号、令和8年10月1日適用)が決めている。日常語の「性的な嫌がらせ」より、法令の範囲は狭く、そのかわり具体的。場所も相手も、指針が文言で区切っている。

ハラスメントという語全体の内訳はハラスメントとは、定義は5つあるに整理した。

定義は、対価型と環境型の2つに分かれる

指針2(1)は、セクハラを2つに分けている。性的な言動に対する労働者の対応により労働条件につき不利益を受けるものが対価型。性的な言動により就業環境が害されるものが環境型。

対価型の典型例として指針が挙げるのは3つ。事務所内で事業主が性的な関係を要求し、拒否されたため解雇すること。出張中の車中で上司が腰や胸等に触り、抵抗されたため不利益な配置転換をすること。営業所内で事業主が日頃から性的な事柄について公然と発言し、抗議されたため労働者を降格した、という例も挙がる。

環境型の典型例も3つ。事務所内で上司が腰や胸等に度々触り、苦痛に感じて就業意欲が低下していること。同僚が取引先で性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布し、苦痛に感じて仕事が手につかないこと。抗議をしているにもかかわらずヌードポスターが事務所内に掲示され、苦痛に感じて業務に専念できないこと。

この2つの違いは、何が失われたかにある。対価型は解雇、降格、減給といった労働条件上の不利益。環境型は、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、就業する上で看過できない程度の支障。

同性に対するものも、指針の対象に入る

指針2(1)には、なお書きで2つ書かれている。職場におけるセクハラには同性に対するものも含まれる。そして、被害を受けた者の性的指向またはジェンダーアイデンティティにかかわらず、その者に対するセクハラも指針の対象となる。

男性から女性へ、という組み合わせだけを指す語ではない。指針の文言のうえで、組み合わせによる限定はどこにも置かれていない。

「職場」は、ふだん働いている場所に限らない

指針2(2)の定義では、「職場」は事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指す。通常就業している場所以外でも、業務を遂行する場所であればここに含まれる。

指針が例として挙げるのは、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等。打合せの席で受けた言動も、取引先の事務所で受けた言動も、「職場」の外ではない。

「労働者」に、雇用形態の線引きはない

指針2(3)は、労働者をいわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する労働者の全てと定めている。

派遣労働者の扱いが、もう一段ある。労働者派遣法47条の2により、労働者派遣の役務の提供を受ける者も、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者を雇用する事業主とみなされる。均等法11条1項と12条2項が適用されるため、派遣先も派遣労働者について配慮と措置を講ずることが必要。

相談したことを理由とする不利益な取扱いの禁止も、派遣労働者が対象に入る。派遣元だけでなく派遣先も、派遣労働者がセクハラの相談を行ったこと等を理由に、その派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むなどの不利益な取扱いを行ってはならない。

行為者は、上司や同僚に限らない

指針2(4)が挙げる行為者の範囲は広い。労働者を雇用する事業主(法人の場合はその役員)、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主またはその雇用する労働者、顧客、患者またはその家族、学校における生徒等も行為者になり得る。

顧客や患者から受けた性的な言動は、ここでセクハラの範囲に入る。同時に、2026年10月1日からは顧客等の言動そのものがカスハラの措置義務の対象にもなった。重なり方はカスハラとは、3つの要素で決まるを見ると分かりやすい。

「性的な言動」は、発言と行動の2つに分けて例示されている

指針2(4)は、性的な内容の発言と性的な行動を分けている。発言のほうに入るのは、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等。行動のほうは、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等。

実際に受けた内容として多く挙がるものは、この例示とは並びが違う。厚生労働省の委託調査(2023年12月〜2024年1月実施、労働者 n=8,000)で過去3年間にセクハラを受けたと回答した人のうち、内容として最も多かったのは「性的な冗談やからかい」の49.7%。次に「不必要な身体への接触」の26.2%(複数回答)。

どう測るか

セクハラに当たるかを自分で見るときの手順は、指針の定義をそのまま3つに割ると出てくる。業務を遂行する場所で起きたか。性的な言動だったか。その言動への対応で労働条件の不利益を受けたか、または就業環境が害されたか。3つ目で対価型と環境型が分かれる。

公表されている測り方のもう一つは、経験の有無を本人に尋ねる形。厚生労働省の委託調査では、過去3年間に勤務先で受けたハラスメントを単一回答で尋ね、受けた人にその内容を複数回答で尋ねている。過去3年間にセクハラを一度以上経験した割合は6.3%(n=8,000)。女性8.9%、男性3.9%。

業種によって差がある。最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の12.3%、次が「複合サービス業」の11.3%、「宿泊業、飲食サービス業」の10.5%。同じ調査の業種別の集計で、区分ごとの回答数は全体より小さくなる。

勤務先の取組の有無で見ると、差はほとんど無かった。セクハラの予防・解決の取組を実施していると回答した人で6.2%(n=2,712)、実施していないと回答した人で6.4%(n=5,288)。取組の有無とセクハラを受けた経験のあいだに、この調査では大きな差が出ていない。

自分の職場で確かめられること

相談窓口が1つにまとまっているかどうかは、指針が望ましい取組として挙げている点。指針6(1)は、パワハラ等の相談窓口と一体的にセクハラの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制の整備を望ましいとしている。受け付ける相談の種類としてセクハラが明示されているか、社内ホームページや配布資料で確かめられる。

もう一つは、方針の周知の中身。指針4(1)イは、性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの発生の原因や背景となり得ることまで含めて周知・啓発することを措置の例に挙げている。就業規則にセクハラの禁止が書かれているだけで、この背景の説明が付いていない職場もある。

経験率は業種で2倍近く違い、窓口の形は会社ごとに違う。自分が置かれている職場の条件は、評価の言葉で言い切る前に、事実として残しておくと後から見比べられる。

出典

  1. 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号、令和8年10月1日適用。2 内容、4 措置、6 望ましい取組)
  2. 令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書(概要版)(厚生労働省委託事業、2023年12月〜2024年1月実施、労働者 n=8,000。図表17・図表18、受けたセクハラの内容)
  3. 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省 雇用環境・均等局。指針の一覧と適用時期)