セクハラ対策として事業主に義務づけられているのは10の措置。根拠は男女雇用機会均等法11条1項で、中身は指針(平成18年厚生労働省告示第615号)が決めている。骨格は5種類のハラスメントで共通していて、共通部分の並びはハラスメント対策、法が決めた10項目にある。セクハラ固有なのは3つ。周知の中身に背景の説明が入ること、行為者が社外にいるとき相手の会社に協力を求めること、そして事実が確認できなかったときにも再発防止の措置を講ずること。
セクハラ対策の10項目、どこが固有か
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10項目は4つのまとまりに分かれる
| まとまり | 指針が挙げる措置 |
|---|---|
| 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発 | 1 セクハラの内容と行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する/2 行為者を厳正に対処する旨の方針と対処の内容を就業規則その他の服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する |
| 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 | 3 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する/4 相談窓口の担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにする |
| 事後の迅速かつ適切な対応 | 5 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する/6 被害者に対する配慮のための措置を適正に行う/7 行為者に対する措置を適正に行う/8 再発防止に向けた措置を講ずる |
| 併せて講ずべき措置 | 9 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する/10 相談等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する |
通達は、この10項目について「企業の規模や職場の状況の如何を問わず」講じなければならないと書いている。規模による免除はない。措置の方法のほうは、規模や状況に応じて事業主が選べるよう具体例が示されたもので、限定列挙ではない。
周知する中身に、背景の説明が含まれる
1つ目の措置で、指針はセクハラの内容と禁止方針だけでなく、発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要だとしている。そのうえで、原因や背景には性別役割分担意識に基づく言動もあると考えられ、こうした言動をなくしていくことが防止の効果を高めると書いている。
通達はこの「発生の原因や背景」をもう一段分解する。企業の雇用管理の問題として、労働者の活用や能力発揮を考えていない雇用管理の在り方。労働者の意識の問題として、同僚である労働者を職場における対等なパートナーとして見ず、性的な関心の対象として見る意識の在り方。両者が相互に関連して、セクハラを起こす職場環境を形成すると考えられる、という説明。
就業規則に禁止の一文があるだけでは、この部分が届かない。背景の説明まで含めて周知することが措置の内容。
該当するか微妙な段階でも、相談に応じることが措置
4つ目の措置について、指針は相談窓口の担当者が対応すべき範囲を広く取っている。セクハラが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合、該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うこと。
理由も書かれている。被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあることを踏まえ、相談者の心身の状況や、言動が行われた際の受け止めなどの認識にも配慮しながら対応する。
放置すれば就業環境を害するおそれがある場合、性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクハラが生じるおそれがある場合。この2つが、おそれの段階の例として挙がっている。これがセクハラかどうか自分で決めてから持っていく、という順番は求められていない。
事実が確認できなかった場合も、再発防止の措置を講ずる
8つ目の措置に、短いなお書きがある。職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
方針の再周知や研修の実施が、確認できなかった事案のあとにも求められる。相談が「無かったこと」にならない仕組みが、措置の側に置かれている。
事実関係の確認が困難なときの経路も示されている。均等法24条に基づく調停の申請、その他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。社内で主張が食い違って確認が進まない状態が、終点ではない。
被害者への配慮と行為者への措置に、具体例が並ぶ
6つ目の措置として指針が挙げる例は、被害者と行為者の関係改善に向けての援助、両者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応。
7つ目は行為者への措置で、就業規則等のセクハラに関する規定に基づく懲戒その他の措置。どちらにも、均等法24条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を講ずることが例として入っている。
配置転換は被害者を動かすものとは限らない。指針の文言は「被害者と行為者を引き離すための配置転換」で、どちらを動かすかは書かれていない。
不利益取扱いの禁止は、労働局への相談まで守る
10番目の措置が守る行為の範囲は、社内の相談にとどまらない。指針は均等法11条2項、23条2項、24条2項を踏まえて、次のことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発するよう求めている。
守られるのは4つの行為。セクハラに関し相談をしたこと、事実関係の確認等の事業主の措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談や紛争解決の援助の求め、調停の申請を行ったこと、そして調停の出頭の求めに応じたこと。
社外に持っていったことも、守られる側に入っている。相談先ごとの実際の内訳はハラスメントを誰に相談するか、数値で見るに並べた。
行為者が社外にいるときは、相手の会社に協力を求める
均等法11条3項により、自社の労働者や役員が他社の労働者にセクハラを行った場合、他の事業主から事実関係の確認等の協力を求められた事業主は、応ずるよう努めなければならない。努力義務。
指針は続けて、協力を求められたことを理由に契約を解除するなどの不利益な取扱いを行うことは望ましくないとしている。取引先の担当者から受けた言動を自社の窓口に出したとき、話が相手の会社に渡る経路は、ここに根拠がある。
事実確認の措置にも、必要に応じて他の事業主に協力を求めることが含まれる。再発防止の措置も同じ。
望ましい取組は、義務の側に入っていない
指針6が挙げるのは、義務ではなく望ましい取組。パワハラ等の相談窓口と一体的にセクハラの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制の整備。労働者や労働組合等の参画を得てアンケート調査や意見交換を行い、運用状況を把握して見直しを検討すること。方法として、労働安全衛生法18条1項の衛生委員会の活用も挙がっている。
指針7はもう一段外側で、雇用する労働者以外の者に対する言動。個人事業主などのフリーランス、インターンシップを行っている者、教育実習生等。これらの人への言動についても同様の方針を併せて示すことが望ましい、という水準。
窓口が一元化されていないことは、義務違反には直結しない。10項目のほうに穴があるかを先に見る。
2026年10月1日に、義務の範囲が広がった
同じ日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になった。求人に応募する者、採用に資する活動に参加する者、教育実習や看護実習その他の実習を受ける者が対象で、措置は11項目。
11項目のうち3番目が、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者及び求職者等に周知・啓発すること。面談時間と場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定といった規則が例に挙がる。面接や実習の受け入れを担当する立場なら、ここが自分の仕事に直接かかる。
どう測るか
措置が講じられているかは、文書と周知の2つで確かめられる。10項目のうち6項目が「周知する」または「周知・啓発する」を含むため、受け取った覚えがあるかどうかが観測点になる。
文書は就業規則だけではない。通達は「その他の職場における服務規律等を定めた文書」の例として、従業員心得、必携、行動マニュアル等、就業規則の本則ではないが就業規則の一部を成すものを挙げている。就業規則に見つからないことは、規定が無いことの証明にならない。
研修の実施方法にも通達の説明がある。定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する。こうした方法が効果的と考えられる、という書き方で、実施そのものは1つ目の措置の例の側。
自分の職場で確かめられること
相談窓口の場所と担当者が決まっていて、それが自分に伝わっているか。懲戒規定にセクハラが含まれているか。相談したことを理由に不利益な取扱いをされない旨の規定があるか。この3つは、文書を見れば分かる。
残りは事案が起きてから動く部分で、起きていない時点では外から見えない。見えるところまでを数えて、人と接する量や顧客とやり取りする頻度と並べて記録しておくと、自分の職場の条件が形になる。
出典
- 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号、令和8年10月1日適用。4 講ずべき措置の内容、5 他の事業主への協力、6・7 望ましい取組)
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(厚生労働省通達、令和8年10月1日適用。措置10項目の解釈と服務規律等を定めた文書の例)
- 令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!(厚生労働省リーフレット簡易版。求職者等に対するセクシュアルハラスメントの11項目の措置)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省 雇用環境・均等局。指針の一覧と適用時期)





