平均年収と中央値、月4.4万円の差

令和7年(2025年)の賃金構造基本統計調査で、一般労働者の所定内給与額の中位数は296.6千円。平均は340.6千円だった。真ん中の人は、平均より44.0千円下にいる。

この調査が中位数として出しているのは月額で、年収の中位数は公表されていない。検索して出てくる「年収の中央値は◯◯万円」という数字の多くは、給与階級ごとの人数から真ん中の人がどの階級に入るかを推計した計算値で、統計表のどこかに載っている公表値ではない。確かめ方が違う。どちらを見ているのかは、先に分けておきたい。

平均が中位数より上に来る形

給与の分布は左右対称にならない。下は0で止まる。上は止まらない。月100万円を超える人の額はそのまま合計に乗ってきて平均を引き上げるのに、真ん中から同じだけ下に離れた位置にはそもそも人が存在しないので、平均は中位数より上へずれる。

令和7年の分位点を並べると、ずれの形が見える(産業計、企業規模10人以上、男女計・学歴計)。

位置 所定内給与額(月額)
第1・十分位数(下から10%) 199.9千円
第1・四分位数(下から25%) 238.2千円
中位数 296.6千円
第3・四分位数(上から25%) 389.8千円
第9・十分位数(上から10%) 527.3千円

中位数から第1・四分位数までは58.4千円、第3・四分位数までは93.2千円。上側が1.6倍ほど広い。この非対称が、平均と中位数の44.0千円の差を作っている。十分位分散係数は0.55、四分位分散係数は0.26。

集計された労働者数は2,892万人。調査の客体は79,321事業所で、都道府県・産業・事業所規模ごとの復元倍率を使って全体に広げた推計値。

年齢で中位数は108.1千円動く

年齢階級 中位数 十分位分散係数
〜19歳 205.6千円 0.18
20〜24歳 238.4千円 0.23
25〜29歳 267.9千円 0.30
30〜34歳 291.4千円 0.38
35〜39歳 310.1千円 0.45
40〜44歳 325.5千円 0.51
45〜49歳 334.8千円 0.55
50〜54歳 345.9千円 0.59
55〜59歳 346.5千円 0.63
60〜64歳 278.2千円 0.59
65〜69歳 239.5千円 0.54
70歳〜 218.5千円 0.48

20〜24歳の238.4千円から55〜59歳の346.5千円まで、108.1千円。60〜64歳で278.2千円まで落ちる。

右の列も一緒に見てほしい。十分位分散係数は上位10%と下位10%の開きを中位数で割ったばらつきの指標で、20〜24歳の0.18から55〜59歳の0.63まで3倍以上に広がり、入った時点では近い額をもらっていた人たちが20年、30年かけて上にも下にも離れていったことを示している。年齢ごとに分布の幅そのものが違う。

男女差は中位数にすると65.5千円

男性の中位数は325.8千円、女性は260.3千円。差は65.5千円。

平均で比べたときの差は、男性373.4千円と女性285.9千円で87.5千円ある。中位数に替えると22.0千円縮む。男性側の上の裾が長く、そこが平均の差を押し広げていた。

学歴別では大学院と高校で197.0千円

学歴 中位数
中学 269.6千円
高校 270.4千円
専門学校 291.3千円
高専・短大 288.8千円
大学 335.0千円
大学院 467.4千円

大学院467.4千円と高校270.4千円の差が197.0千円。中学269.6千円と高校270.4千円は0.8千円しか離れていない。専門学校291.3千円が高専・短大288.8千円を上回っている点も、順番どおりにはならない例。

12倍しても年収の中央値にはならない

296.6千円を12か月ぶん足すと3,559.2千円、355.9万円になる。この数字を年収の中央値と呼ぶには、足りないものがある。賞与。

賞与は年間賞与その他特別給与額として別に集計されていて、そちらは平均しか公表されていない。分位点が出ていない以上、月額の中位数と賞与の平均を足した額は、どの人の位置も指さない。年収で真ん中を知りたいなら、給与階級別の人数から推計するしかなく、その推計値は元の統計表には載っていない。

自分の位置を読むとき

給与明細の、基本給と諸手当を足した額。そこから残業代と通勤手当を抜いた額が、この表でいう所定内給与額に近い。賞与は入れない。

その額を分位点の表に当てはめると、全体の中でどのあたりかが分かる。238.2千円なら下から4分の1、389.8千円なら上から4分の1。年齢階級の表と突き合わせれば、同年代の中での位置も見える。

ただし、位置が分かることと、条件が自分に合っているかは別の話。同じ額でも、通勤に片道90分かかる職場と15分の職場では、時間あたりで見たときの意味が変わる。

この数字で言えないこと

6月分の所定内給与額を集計した値で、残業代は入っていない。超過労働給与額は別の欄で調べられている。

一般労働者の集計なので、短時間労働者は入っていない。パートやアルバイトで働く人の分布は、別の表に分かれている。

事業所規模10人以上(5〜9人は別集計)。小さい事業所で働く人の分布は、この表の外。

業種別・都道府県別・雇用形態別の中位数は、同じ調査の別の統計表にある。1つの表を1つの切り口で読む方針なので、ここでは扱わない。

業種を絞った年収の数字は、ITの平均年収659万円、半数は600万円以下で国税庁の調査を、コンサルの平均年収、近い職種で752万円で同じ賃金構造基本統計調査の職種別の表をそれぞれ整理している。

出典

  1. 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類 第3表 学歴、年齢階級、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値(厚生労働省、2025年)
  2. 令和7年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省、2025年)