賞与に関わる期間は1本ではなく、4つある。どの期間に在籍していた人に払うかを決める算定対象期間、勤務成績を評価する査定期間、在籍を問う基準日、そして社会保険の上限を数える年度。この4つはずれていて、ずれ方は職場ごとに違う。厚生労働省のモデル就業規則が、賞与を支給するなら就業規則に明確にしておくべきものとして「支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法等」を挙げているのも、ここが分かれているから。
賞与の期間は4つに分かれている
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4つの期間が、それぞれ何を決めているか
モデル就業規則(令和7年12月版)の第50条は、賞与の条文例をこう置いている。
賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。
条文の下には表があり、「 月 日から 月 日まで」と支給日の欄が空欄になっている。各社がここを埋める。
| 期間の名前 | 何を決めるか | どこに書かれているか |
|---|---|---|
| 算定対象期間 | 誰が支給の対象になるか、何か月分として計算するか | 就業規則の賞与の条項 |
| 査定期間 | 勤務成績や業績をどの期間で見るか | 賞与の条項、または評価制度の規程 |
| 在籍を問う基準日 | いつ在籍していた人に払うか | 賞与の条項の支給対象者の定め |
| 社会保険の年度 | 標準賞与額の上限を数える区切り | 健康保険法・厚生年金保険法の定め |
名前は職場によって入れ替わる。「算定期間」と書いて評価の対象期間を指している規程もあるので、言葉より中身を読む。
算定対象期間と査定期間は、前後にずれる
夏の賞与でよく使われる組み方は、算定対象期間を前年10月から3月までの6か月に置くもの。これに対して査定期間は、9月から2月のように1か月前倒しされていることがある。評価の集計と決裁に時間がかかるため、支給日に近い月を査定から外す運用になっている(推定)。
ずれが効くのは、期間の端にいる人だ。3月に入社した人は算定対象期間に1か月だけ在籍していて、査定期間には入っていない。逆に、査定期間の最後の月に大きな仕事を終えた人は、その分が次回の査定に回ることがある。
確かめ方は2つ。賞与の条項に査定期間が書かれているかを見る。書かれていなければ、評価のフィードバックを受けた月から逆算する。評価面談が5月なら、査定はその前に締まっている。
期間の途中で休んだ分は、どう数えられるか
算定対象期間に欠勤や休職があると、その分を日割りで減らす定めを置いている職場がある。減らし方は規程にしか書かれていないので、額の予想は条項を読まないと立たない。
ひとつだけ、法律が線を引いているところがある。年次有給休暇を取得した日を欠勤として扱い、賞与の額の算定で不利益に扱うことは、労働基準法附則第136条で禁じられている。有給を使った月の賞与が下がっていたなら、算定式を確かめる根拠になる。
休職期間中の賞与の扱いは、賃金の条項と休職の条項の両方にまたがる。賃金が支給されない期間の扱いは休職中の給料で整理した。
そして在籍の基準日。モデル就業規則の解説は、支給対象者を一定の日(例えば6月1日や12月1日、または賞与支給日)に在籍した者とする規定を置くことも可能だとしている。この基準日が算定対象期間の終わりより後にあると、期間の勤務を終えていても支給の対象から外れることがある。
社会保険と税では、期間の数え方が変わる
同じ賞与について、社会保険と税がそれぞれ別の期間を見ている。
社会保険で賞与として扱われるのは、年3回以下の支給。日本年金機構は、実際に支払われた賞与額から1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額とし、上限を健康保険では年度の累計額573万円(年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで)、厚生年金保険では1か月あたり150万円としている。同じ月に2回以上支給されたときは合算した額に上限がかかる。年4回以上の支給は毎月の報酬の側に入るので、この年度の累計には乗らない。
税のほうは「賞与の計算期間」という別の言葉を使う。国税庁の説明では、前月中に給与の支払がない場合や、賞与が前月の給与の10倍を超える場合に、賞与から社会保険料等を差し引いた金額を6で割って月額表に当てはめる方法をとる。そして注記がこう付く。賞与の計算期間が6か月を超える場合には、算式の「12」を使って計算する。
年1回しか賞与がない職場では、この計算期間が12か月になりうる。割る数が変わると税額の出方も変わるので、明細の控除額を前回と比べるときは、計算期間が何か月だったかを合わせて見る。
支給されなかったとき、遡れる期間
就業規則に支給の定めがあり、その要件を満たしているなら、賞与は賃金として請求できる。賃金の請求権の時効は労働基準法第115条で5年とされ、同法附則第143条第3項により当分の間は3年とされている。
ただし第50条の条文例には、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により支給時期を延期し、又は支給しないことがある、というただし書きが置かれている。同じ文言を採っている職場なら、支給そのものが条項の中で条件付きになる。前回より減っていた場合に原資・配分・自分の査定のどこで差がついたのかを切り分ける手順は、賞与が減った基準はどこにあるかに書いた。
自分の期間を1枚に書き出す
読む場所は3つで足りる。
- 就業規則の賞与の条項。算定対象期間、支給日、支給対象者の基準日、延期と不支給の定め
- 直近の賞与明細。標準賞与額の記載があるか、控除額がいくらか
- 評価のフィードバックを受けた月。そこから逆算すると査定期間の締めが見える
支給日そのものの決まり方は賞与はいつ出るか、法定の日は無い、額を決める基準の読み方は賞与の基準はどこに書かれているかで扱っている。
期間が分かると、次の賞与までに何を残しておけばいいかが決まる。担当した仕事と、面談で伝えた内容と、休んだ日数。このサイトの診断は職場の環境を12の軸で記録するもので、賞与の額そのものを動かす仕組みではないが、査定期間の中で何が変わったかを後から読み返せる形にはなる。





