ベースアップで動くのは基本給の行だけで終わらない。残業の単価、賞与、退職金、社会保険料の控除額が、それぞれ別のタイミングで一緒に動く。基本給が月1万円上がった場合をたどると、効き方の違いがはっきりする。
賃金表の改定という中身そのものはベースアップとは、賃金表の書き換えに書いた。ここで追うのは、その改定が明細のどこに波及するかである。
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ベースアップで動くのは基本給の行だけで終わらない。残業の単価、賞与、退職金、社会保険料の控除額が、それぞれ別のタイミングで一緒に動く。基本給が月1万円上がった場合をたどると、効き方の違いがはっきりする。
賃金表の改定という中身そのものはベースアップとは、賃金表の書き換えに書いた。ここで追うのは、その改定が明細のどこに波及するかである。
割増賃金は、基本給を含む賃金を月平均所定労働時間で割った時間単価から計算する。労働基準法施行規則第21条が算定基礎から除外できる賃金を挙げていて、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つ。基本給はこの列挙に入っていない。
月平均所定労働時間160時間の職場で基本給が30万円なら、時間単価は30万円÷160時間で1,875円。時間外の割増率1.25を掛けて2,344円になる。基本給が31万円に上がると、31万円÷160時間で1,938円、割増して2,422円。差は78円。20時間の残業なら1,560円が乗る。残業の多い職場では、基本給の増額そのものより、この単価の上がり方のほうが月の支給額を押し上げることもあるので、増えた1万円だけを見ていると変化の幅を読み違える。
ここが手当との分かれ目になる。住宅手当として1万円足された場合、その手当は算定基礎から除外できるので、残業の単価は動かない。 同じ1万円でも、基本給に入ったかどうかで翌月の残業代が変わる。
賞与を基本給の何か月分で決めている職場なら、基本給の増額がそのまま倍数で効く。夏と冬で合計4か月分なら、1万円の増で年4万円。
算定式が業績や評価の係数だけで組まれている場合は、基本給の増額が賞与に入らない。同じ1万円で結果が割れる。どちらなのかは就業規則か賃金規程の算定式に書いてある。賞与の基準は就業規則の中にあるに探す場所をまとめた。
退職金を退職時の基本給に勤続年数の係数を掛けて計算する制度なら、基本給の1万円は係数の倍数で効く。係数が20なら20万円。いま受け取る額ではなく、辞めるときの額が動く形になる。
ポイント制や定額の制度では、基本給の改定と退職金が切り離されている。規程に「退職時の基本給」という語があるかどうかが分かれ目。そこを確かめないまま基本給の増額を年額に直して足し上げると、受け取る時期が20年先になるぶんまで、いまの手取りの話に混ざることになる。
健康保険料と厚生年金保険料は、標準報酬月額という区分で決まる。昇給で区分が変わる条件は3つそろったときだけ。昇給または降給等により固定的賃金に変動があったこと、変動月以後引き続く3か月の報酬の平均額から算出した標準報酬月額が従前と2等級以上の差になったこと、その3か月の報酬の支払基礎日数が17日以上あること。
この3つがそろうと、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目の標準報酬月額から改定される。4月に支払われる給与で上がったなら、7月から。
だから手取りの増え方には段差が出る。最初の3か月は控除額が前のままなので、増えた額から所得税が引かれるだけ。4か月目に保険料の区分が上がると、そこから控除が増えて、手取りの伸びは縮む。2等級の差に届かなければ、その年の定時決定を待つことになる。基本給が上がった月の手取りの増え方を見て「これが毎月続く」と受け取ると、夏をまたいだところで計算が合わなくなるのは、この3か月の猶予があるからである。
全員の基本給に同じ額を足す方式と、各人の基本給に同じ率をかける方式がある。
基本給20万円の人と40万円の人に一律1万円を足すなら、率は5%と2.5%。率を3%で揃えるなら、額は6,000円と12,000円。同じ「ベア3%相当」という言い方でも、職場のなかの差は広がる方向と縮む方向のどちらにも動く。
自分の明細では、額と率の両方を出しておく。ニュースで聞く数字は率。残業代や賞与に効くのは額のほうである。
去年の同じ月と今年の明細を並べ、基本給の行だけを先に比べる。総支給額では分からない。残業時間の違いが混ざる。
次に諸手当の行を見る。基本給が上がった月に、手当の行が減っていることがある。手当の組み替えと同時に賃金表を改定した場合で、総額が動かないまま内訳だけが入れ替わる。この形だと、その月の手取りは変わらないのに、残業の単価と賞与の算定基礎だけが上がっているので、残業の多い月と賞与の月になってから差が出てくる。
3つめは控除の欄。健康保険と厚生年金の額が変わった月を記録しておけば、随時改定が入ったかどうかが分かる。
昇給額そのものが小さいときの切り分けは昇給が少ない理由は3つに分かれる、決まり方を聞く手順は給与の決まり方の聞き方と、聞く前に読む書類にある。
基本給が上がっても、何を評価されてその額になったのかは明細に出てこない。評価の基準がどこまで開示されているか、決定の経路が誰を通っているか。そこは別の軸。
自分の側で先に決まるのは、どの条件なら続けられるかという線になる。評価の頻度、基準の見え方、裁量の幅。記録が4週ぶん貯まると、昇給額の話とは別に、自分の条件との距離が並べられる。
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