情報通信業で1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は、659万円(6,595千円)。国税庁の民間給与実態統計調査、令和6年分(2024年分)の数字で、集計対象は2,033,561人。全業種の平均478万円を181万円上回る。
ただし、同じ表の給与階級別の人数を足していくと、600万円以下に52.3%が入る。平均の659万円は、分布の真ん中にいる人の年収ではない。ここを混同したまま自分の年収と引き比べると、自分の位置を実際より下に見積もることになり、給与の話をする前提そのものがずれる。
この記事で使うのは、この1調査だけ。職種別や年代別の数字は同じ表から取れないので、混ぜていない。
659万円は、どの範囲の人の平均か
国税庁が業種として集計しているのは、日本標準産業分類でいう情報通信業。通信業、放送業、情報サービス業、インターネット附随サービス業、映像・音声・文字情報制作業の5つが入る。開発や運用の会社だけを指す言葉として「IT」を使っているなら、通信の会社の社員も、放送局の社員も、映像制作の会社の社員も同じ1人として数えられた集団の平均を見ていることになる。
対象は、1年を通じて勤務した給与所得者。年の途中で入社した人と退職した人は、この平均に入っていない。2,033,561人の平均年齢は41.9歳、平均勤続年数は12.0年。
同じ調査でも、勤務期間を問わず全員を数えた第1表では、情報通信業の平均給与は611万円(6,110千円、年間月平均2,232,568人)。48万円下がる。転職サイトや記事で見かける業界平均がどちらの母集団の数字なのかを確かめないまま並べると、この48万円の差がそのまま誤差として乗ってくる。
半数は600万円以下
給与階級別の人数は、次のように分かれている。
| 給与階級 |
人数 |
割合 |
| 100万円以下 |
21,853 |
1.1% |
| 100万円超 200万円以下 |
66,665 |
3.3% |
| 200万円超 300万円以下 |
121,013 |
6.0% |
| 300万円超 400万円以下 |
244,152 |
12.0% |
| 400万円超 500万円以下 |
303,085 |
14.9% |
| 500万円超 600万円以下 |
307,637 |
15.1% |
| 600万円超 700万円以下 |
239,106 |
11.8% |
| 700万円超 800万円以下 |
207,761 |
10.2% |
| 800万円超 900万円以下 |
136,373 |
6.7% |
| 900万円超 1,000万円以下 |
118,243 |
5.8% |
| 1,000万円超 1,500万円以下 |
211,852 |
10.4% |
| 1,500万円超 2,000万円以下 |
38,841 |
1.9% |
| 2,000万円超 2,500万円以下 |
9,285 |
0.5% |
| 2,500万円超 |
7,695 |
0.4% |
| 計 |
2,033,561 |
— |
割合は四捨五入した値。
600万円以下の人数を足すと1,064,405人。2,033,561人で割ると52.3%になる。いちばん人数が多い階級は500万円超600万円以下で、その1つ下の400万円超500万円以下がほぼ並ぶ。人数の山が400万円台と500万円台に寄っているのに対して、平均値を引き上げているのは1,000万円を超える階級に入る人たちで、この形のずれが、平均をそのまま自分の基準に使えない理由になる。
1,000万円を超えている人は267,673人で、13.2%。7人か8人に1人。
男女で228万円の差
男性は728万円(7,287千円、1,417,360人)、女性は500万円(5,003千円、616,201人)。差は228万円。
男性が集計対象の69.7%を占めるので、全体の659万円は男性側の水準に引かれている。平均年齢と勤続年数にも差があり、男性は42.8歳・13.1年、女性は39.9歳・9.4年。この調査は年齢と勤続年数と給与を同じ表に並べているだけなので、228万円の差のうちどれだけが勤続年数の違いから来ていて、どれだけがそれ以外の要因なのかまでは分けられない。
給与の18.6%が賞与
情報通信業の平均給与659万円(6,595千円)のうち、給料・手当が536万円(5,369千円)、賞与が122万円(1,226千円)。1,226千円を6,595千円で割ると0.186。
毎月の給与明細から年収を見積もるときに使える係数。月給の12か月ぶんだけを足して業界平均と比べると、賞与がこの比率で出ている職場にいる人でも2割ほど低く出るので、平均から離れて見える原因がそこに紛れ込む。賞与の比率は会社ごとに違う。自分の明細で確かめる値。
この数字で言えないこと
職種別の内訳は、この調査に無い。開発も運用も企画も営業も、同じ「情報通信業」に入る。放送局や映像制作の会社も同じ枠。
企業規模別と地域別も、業種と掛け合わせた表が用意されていない。資本金階級別の平均給与は全業種の合計でしか出ないので、情報通信業の中で規模によってどれだけ差がつくのかは、この調査からは答えられない。
給与だけを並べても、働き方の条件までは見えない。時間と休みの側はITの残業時間、平均は15.8時間とITの有給取得率は66.9%、平均と同じに、別の調査の数字でまとめてある。
最後に、業種間の位置も押さえておく。同じ調査で最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の832万円、次いで金融業,保険業の702万円で、最も低いのは宿泊業,飲食サービス業の279万円。情報通信業の659万円は、2番目の金融業,保険業から43万円下にある。