令和7年(2025年)の賃金構造基本統計調査で職種を大分類11区分に割り、月額と賞与から年収を組み立てると、最も高い管理的職業従事者が966.8万円、最も低い農林漁業従事者が360.8万円。開きは606.0万円。
この調査は厚生労働省が企業規模10人以上の事業所を抽出して行っていて、集計対象は一般労働者(短時間労働者を除く)。大分類11区分の労働者数を足すと約2,892万人になる。求人票に書かれた想定年収や、転職サービスの登録者を集計した数字とは母集団が違う。同じ「職種別の平均年収」という見出しでも、出どころによって額がそろわないのはそのため。
職種大分類11区分の推計年収
表の年収は、きまって支給する現金給与額を12倍して年間賞与その他特別給与額を足した値。この調査に「年収」という欄は無い。月額と賞与から組み立てた推計。
| 職種(大分類) |
きまって支給する現金給与額 |
年間賞与その他特別給与額 |
推計年収 |
労働者数 |
| 管理的職業従事者 |
599.7千円 |
2,471.2千円 |
966.8万円 |
175.8万人 |
| 専門的・技術的職業従事者 |
412.4千円 |
1,178.3千円 |
612.7万円 |
689.4万人 |
| 事務従事者 |
359.8千円 |
1,096.8千円 |
541.4万円 |
600.9万人 |
| 販売従事者 |
363.2千円 |
998.6千円 |
535.7万円 |
309.5万人 |
| 建設・採掘従事者 |
360.2千円 |
743.8千円 |
506.6万円 |
75.6万人 |
| 輸送・機械運転従事者 |
361.8千円 |
493.9千円 |
483.6万円 |
162.9万人 |
| 生産工程従事者 |
324.3千円 |
824.2千円 |
471.6万円 |
463.7万人 |
| 運搬・清掃・包装等従事者 |
282.9千円 |
464.7千円 |
386.0万円 |
113.7万人 |
| サービス職業従事者 |
280.3千円 |
458.4千円 |
382.2万円 |
266.8万人 |
| 保安職業従事者 |
284.0千円 |
315.4千円 |
372.3万円 |
29.6万人 |
| 農林漁業従事者 |
267.7千円 |
395.1千円 |
360.8万円 |
4.3万人 |
月額だけを並べると、販売従事者の363.2千円が輸送・機械運転従事者の361.8千円をわずかに上回るだけ。賞与を足すと535.7万円と483.6万円になり、52.1万円の差がつく。どこまでを年収に入れるかで順位が動く。
農林漁業従事者の4.3万人は、他の区分と桁が2つ違う。人数の小さい区分は、年ごとの振れ幅も大きくなる。
年収の高い職種ほど、残業代の比率が小さい
きまって支給する現金給与額から所定内給与額を引くと、残業と休日・深夜の割増ぶん(超過労働給与額)が残る。
| 職種 |
超過実労働時間数 |
超過労働給与額 |
年収に占める比率 |
| 管理的職業従事者 |
2時間 |
8.7千円 |
1.1% |
| 事務従事者 |
10時間 |
25.7千円 |
5.7% |
| 専門的・技術的職業従事者 |
10時間 |
32.6千円 |
6.4% |
| 生産工程従事者 |
15時間 |
39.3千円 |
10.0% |
| 保安職業従事者 |
20時間 |
42.8千円 |
13.8% |
| 輸送・機械運転従事者 |
26時間 |
59.5千円 |
14.8% |
輸送・機械運転従事者の483.6万円のうち、71.4万円は月26時間の超過労働に対する支給。これを外した412.2万円が、所定内の労働に対応する部分。管理的職業従事者の966.8万円から同じように10.4万円を外しても、956.4万円が残る。
平均年収の表を自分の額と引き比べるとき、この列は分けて見ておける。同じ500万円でも、月26時間の残業で届いた人と月2時間で届いた人は、1時間あたりの単価がまるで違う。
賞与の比率は8.5%から25.6%まで開く
年収のうち年間賞与その他特別給与額が占める割合は、管理的職業従事者が25.6%で最も大きく、保安職業従事者の8.5%が最も小さい。事務従事者20.3%、専門的・技術的職業従事者19.2%、販売従事者18.6%、生産工程従事者17.5%、建設・採掘従事者14.7%、運搬・清掃・包装等従事者とサービス職業従事者がともに12.0%、農林漁業従事者11.0%、輸送・機械運転従事者10.2%。
管理的職業従事者は966.8万円のうち247.1万円が賞与。保安職業従事者は372.3万円のうち31.5万円。
賞与は額の決め方が法律で定まっていない部分で、支給するかどうかも就業規則や労使の取り決めに委ねられている(賞与とは、額が確定していない賃金)。比率が大きい職種では、年収の見通しが業績でぶれる幅もそのぶん大きい。
同じ職種でも、企業規模で457.9万円動く
| 職種 |
1,000人以上 |
100〜999人 |
10〜99人 |
| 管理的職業従事者 |
1,181.6万円 |
885.9万円 |
723.7万円 |
| 専門的・技術的職業従事者 |
726.5万円 |
575.8万円 |
514.0万円 |
| 事務従事者 |
624.9万円 |
507.8万円 |
441.4万円 |
| 販売従事者 |
561.0万円 |
529.3万円 |
487.2万円 |
管理的職業従事者の幅は457.9万円。これは職種のあいだの差より大きい。専門的・技術的職業従事者の612.7万円と運搬・清掃・包装等従事者の386.0万円の開きが226.7万円だから、その2倍ある。
販売従事者だけは幅が73.8万円で狭い。職種を言い当てても年収の位置は決まらず、どの規模の職場でその職種についているかまで見ないと、平均との距離が読めない。
男女差は職種ごとに幅が違う
同じ表の男女の欄で推計年収を出すと、差が大きいのは販売従事者の208.8万円(男616.0万円、女407.2万円)と事務従事者の207.9万円(男660.3万円、女452.4万円)。
専門的・技術的職業従事者は189.5万円、生産工程従事者は181.6万円。管理的職業従事者では117.1万円まで縮み、サービス職業従事者の70.2万円が最も小さい。
この表は役職や雇用形態で分けた集計をしていないので、差のうちどれだけが職位の構成によるものかは取り出せない。勤続年数の欄を見ると、管理的職業従事者が男22.9年に対して女20.2年、事務従事者が男15.7年に対して女11.5年。年収差と同じ向きには並んでいない。
この数字で言えないこと
中央値が無い。第2表が持っているのは平均だけで、真ん中の人の額を知るには同じ調査の第17表(職種小分類別の所定内給与額の分位数)に当たることになる。
年齢構成の違いも調整されていない。管理的職業従事者の平均年齢は51.5歳、専門的・技術的職業従事者は41.8歳、サービス職業従事者は44.4歳。職種間の差には、年齢の差がそのまま乗っている。年齢で切った数字は年代別の平均年収、ピークは55〜59歳で別の調査から整理した。
職種の区分は、事業所が調査票にどの職種を書いたかで決まる。社内の呼び名が大分類のどこに入るかは、調査票を書いた人の判断を通っている。
産業計の数字なので、業種は分けていない。同じ職種でも業種によって水準は動く。業種を絞った額はITの平均年収659万円、半数は600万円以下で別の調査を使って出してある。
短時間労働者は入っていない。週の所定労働時間が短い働き方を含めた平均ではない。