ベースアップとは、賃金表の書き換え

ベースアップは、賃金表の改定によって賃金水準を引き上げることを指す。厚生労働省の賃金引上げ等の実態に関する調査が置いている定義で、表そのものを書き換えるところが要。表の中で号が1つ上がるだけの昇給は、ベースアップに入らない。

賃金表というのは、学歴・年齢・勤続年数・職務・職能などによって賃金がどう決まるかを表にしたもの。この表を全体として上に動かすのがベースアップで、略してベア。逆に下に動かせばベースダウンと呼ばれる。

定期昇給は、表の中を動く

定期昇給は、あらかじめ労働協約や就業規則で定められた制度に従って行われる昇給で、一定の時期に毎年増額するもの。年齢や勤続年数による自動昇給のほか、能力や業績の評価に基づく昇給も含む。

つまり同じ表の上を、自分の位置が移動するのが定期昇給。表そのものが上に動くのがベースアップ。前者は毎年の決まりごととして起き、後者は改定しないという判断もありうる。

そして賃上げは、この両方をまとめた言い方。同じ調査では「賃金の改定」という語を使い、定期昇給、ベースアップ、諸手当の改定などを含めたうえで、賃金表を変えずに一定期間だけ賃金を減らす賃金カットや、表そのものを下げるベースダウンによる減額まで、同じ枠の中に入れている。ニュースの「賃上げ率」が定期昇給分を含んでいるかどうかで、同じ年の数字が2通り出るのはこのため。

何に対する何%か

改定率は、1人平均賃金の改定額を改定前の1人平均賃金で割った割合。分母になる1人平均賃金は所定内賃金の1か月1人当たりの平均額で、諸手当は含むが、時間外・休日・深夜の割増手当や慶弔手当のような特別手当は含まない。

令和7年(2025年)の調査では、1人平均賃金の改定額が13,601円、改定率が4.4%。前年は11,961円と4.1%だった。この4.4%は、残業代を除いた部分に対する4.4%。

ベースアップの実施の仕方は2つに分かれる。全員の基本給に同じ額を足す方法と、各人の基本給に同じ率をかける方法。同じ「ベア3%相当」でも、前者なら元の基本給が低い人のほうが上がり幅の率が大きく出るし、後者なら元の額が大きい人の増えた額がそのまま大きくなるので、職場のなかでの差は逆向きに動く。どちらを選んだかは、賃金表の改定の中身を見ないと分からない。

集計では、ベア分と定昇分が分けて出る

連合の2026春季生活闘争の第1回回答集計(2026年3月23日午前10時時点)は、平均賃金方式で、定期昇給相当分を含んだ賃上げ額が加重平均17,687円、率で5.26%。集計は1,100組合、142万7,068人ぶん。

このうちベースアップなどの「賃上げ分」が明確に分かる960組合(142万5,702人)では、13,013円、3.85%だった。5.26%から3.85%を引いた1.41ポイントが、定期昇給相当分にあたる。

300人未満の中小組合は14,300円、5.05%。全体との差は0.22ポイントで、前年の0.38ポイントより縮まった。

ニュースで見る率と自分の明細が合わないとき、この分解がまず効く。5%台という数字の中で、表そのものが動いた部分は4%に届いていない。

定昇制度が無い職場が17.7%ある

ベースアップと定期昇給の区別は、賃金表と定期昇給制度があって初めて成り立つ。令和7年調査では「定昇制度あり」が81.2%、「定昇制度なし」が17.7%。

定期昇給制度がある企業のうち、令和7年中に定昇を行った・行うと答えたのは76.8%(定昇制度ありを分母にすると94.6%)。同じ範囲でベアを行った・行うは57.8%で、行わなかった・行わないが15.1%。

労働組合の有無で分かれる。

区分 ベアを行った・行う 定昇を行った・行う 改定率
労働組合あり 82.1% 90.0% 4.8%
労働組合なし 49.4% 72.9% 4.0%

ベアの実施率の差は32.7ポイント。改定額でも15,229円と11,980円で、3,249円の開きがある。賃金表を書き換えるという判断が、交渉の窓口を持っている職場では8割を超えて起きているのに対して、窓口のない職場では半分に届いていない、という形になっている。

なお、この調査の対象は常用労働者100人以上の会社組織の民営企業で、令和7年調査は3,643社に聞いて1,847社から回答があった。有効回答率50.7%。100人未満の企業は入っていない。

何を重視して決められたか

賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素として挙がった1位は「企業の業績」で41.7%。前年の35.2%から6.5ポイント上がっている。2位が「労働力の確保・定着」の17.0%、3位が「雇用の維持」の11.9%。

同じ調査の令和7年8月1日現在で、業況が「良い」と答えた企業は35.3%、「さほど良くない」が51.2%、「悪い」が13.1%。原材料費・経費が増加したと答えた企業はすべての規模で7割を超えた。業績を最も重視する企業が4割強という結果は、この状況の上に出ている。

自分の明細でどちらが動いたか見る

平均や春闘の率は、自分の基本給の話ではない。手元で確かめる順番は3つ。

  1. 去年の同じ月と今年の基本給の額を並べる(賞与や手当は別に置く)
  2. 差額が出たら、その内訳を人事または上司に聞く。聞く言い方は「今回の昇給のうち、賃金表の改定によるぶんはいくらですか」
  3. 就業規則か賃金規程で、定期昇給の時期と、賃金表があるかどうかを確かめる

3で賃金表が見つからないなら、その職場ではベースアップという言葉が指すものが最初から存在しない。差額が出る仕組みは、評価と諸手当の側にある。

基本給が動くと、影響はその月の手取りだけで終わらない。割増賃金の算定基礎に基本給が入っているので時間外の単価が変わり、賞与を基本給の何か月分で決めている職場では賞与も、退職金を基本給から計算している職場では退職金も一緒に動く。だから諸手当を足すやり方とベースアップは、同じ額でも先の効き方が違う。

給与が上がらない理由を先に切り分けたいなら昇給が少ない理由は3つに分かれる、決まり方そのものを聞く手順は給与の決まり方の聞き方と、聞く前に読む書類にまとめた。

出典

  1. 令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況(厚生労働省、2025年、調査対象3,643社・有効回答1,847社・有効回答率50.7%)
  2. 同調査 結果の概要のページ(厚生労働省、統計表一覧)
  3. 連合の2026春季生活闘争 第1回回答集計の紹介(労働政策研究・研修機構、2026年3月27日、集計時点2026年3月23日10時)
  4. 春季生活闘争 2026年春闘(日本労働組合総連合会)