上司に相談できないとき、止まっている場所は3つのうちのどれか。相談できる相手が1人もいない段か、相手はいるのに切り出していない段か、誰かには相談したが上司ではない段か。厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査(実態調査、労働者8,596人が回答)は、この3つを分けて数えている。
数字で見ると、仕事の不安や悩み、ストレスについて相談できる人がいる労働者は94.6%で、そのうち実際に相談したことがある人は74.7%にとどまり、残りの25.3%は相手を挙げられるのに相談していない。相手の不在より、相手がいるのに動いていない側のほうが多い。
相手はいる。でも4人に1人は相談していない
94.6%という割合は、前の年の94.9%とほぼ変わらない。ほとんどの人が、頭の中では誰かの名前を挙げられる。問題はその先。相談できる相手がいると答えた労働者のうち、実際にその相手へ持っていったことがあるのは74.7%で、4人に1人は名前を挙げたまま止まっている。
全労働者に直すと、94.6%の74.7%で70.7%。3割近くが、相談していない側に残る。自分だけが切り出せずにいるわけではない、という事実がここにある。
上司を挙げた62.2%、上司に相談した41.6%
相談できる人を複数回答で聞くと、「家族・友人」68.6%、「上司」65.7%の順。相談できる人がいる労働者を100としたときの割合なので、全労働者に直すと上司を挙げた人は94.6%の65.7%で62.2%になる。
いっぽう、実際に相談した相手は「家族・友人」62.1%、「上司」58.9%。こちらは実際に相談した人を100とした割合だから、全労働者に直すと94.6%×74.7%×58.9%で41.6%。上司を相談先として挙げた62.2%と、上司に実際に相談した41.6%のあいだには、20.6ポイントの落差がある。
相談できる相手として上司の名前が挙がることと、その相手に実際に持っていくことは、別の事象として数えられている。
男性の1位は上司、女性の1位は家族・友人
男女で並び順が入れ替わる。男性は「上司」70.6%が最も多く、「家族・友人」66.2%が続く。女性は「家族・友人」71.1%が最も多く、2番目は「同僚」の63.2%。
実際に相談した相手でも同じ形で、男性は上司62.5%、家族・友人59.1%。女性は家族・友人64.9%、同僚58.9%。相談先として上司がどれくらいの重みを持つかは男女で違っていて、女性では職場の中の相手として同僚のほうが先に来る。調査はその理由を聞いていないため、ここから先は分からない。
どの段で止まっているかで、打つ手が変わる
相手が1人もいない段にいるなら、まず相手の数を増やすほうが先になる。上司ではない選択肢が、職場の中にもいくつかある。同じ調査では、職場の相談先として人事労務担当者、産業医、衛生管理者、保健師・看護師、カウンセラー、「こころの耳電話相談等」の窓口が区分として並ぶ。
相手はいるのに切り出せていない段なら、見るのは相手の属性ではなく、自分が止まっている理由のほう。時間を取らせる負い目なのか、評価に響くという不安なのか、それとも話したい中身がまだ自分の中で言葉になっていないだけなのかで、次にやることがまるきり変わってくる。3つは混ざる。1つずつ潰す。
誰かには相談したが上司ではない段なら、それは失敗ではない。家族や友人に話した内容のうち、職場の条件に関わる部分だけを抜き出せば、上司に持っていく議題になる。上司と話す場そのものが無い場合の数え方は、上司と話す機会がないとき何を数えるかに書いた。
4週間、相談しなかった回数を数える
抱え込んでいるかどうかは、気分では測りにくい。かわりに回数を数える。相談しようと思ったのに言わなかった場面を、日付と相手と中身の3列で4週間ぶん記録する。
月に5回も出てくるなら、それは性格の問題として片づけられる量ではない。1回なら、たまたま。数が出たあとで相手別に割ってみると、上司のところだけ回数が多いのか、誰に対しても言えていないのかが分かれて、同じ「相談できない」に見えていた状態が2つに割れる。
相談した側の記録も残す。言った日、返事が返ってきた日、そのあと何か変わったか。返事が返ってこない回が続くなら、次の相談を止めているのは自分の遠慮ではない。
ハラスメントが絡むときは、相談先の性質が変わる
内容がハラスメントに関わる場合、相談先の選び方の基準が変わる。勤務先に話が渡るかどうかで経路が分かれ、相談したあとの対応にも調査結果がある。そちらはハラスメントを誰に相談するか、数値で見るに数値を置いた。
条件として記録しておく
4週間ぶんの回数は、自分の職場の条件そのもの。誰に、どれだけの頻度で、何を言えたか。印象のままにせず回数で持っておくと、異動や転職を考える場面になったときに、前の職場と次の職場を同じものさしで並べられる。平均と比べて多いか少ないかより、自分の数が先。