やり直しが多いとき、原因の置き場所は2つしかない。着手する前に決まっていなかったことと、着手した後に変わったこと。手元では混ざって見えるけれど、やり直し1件ごとに工程・指示の出どころ・何回目か・かけ直した時間の4つを書き留めていくと、2週間ほどでどちらに寄っているかが数で出てくるので、そこからやっと打つ手が決まる。前者に寄るなら着手前の一手で減る余地が大きく、後者に寄るなら進め方をどれだけ整えても残る。
やり直しが多い仕事の原因を分ける
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やり直しは「決まっていなかった」と「変わった」に割れる
着手前の未確定とは、完成物の形、判断の基準、参照する元データのどれかが決まらないまま手を動かした状態を指す。「とりあえず作ってみて」で始まった仕事が丸ごと戻ってくる場面は、ここに入る。作った側の作業品質とは別の話。
着手後の変更は、前提そのものが動く場合。依頼の途中で判断する人が1人増える、参照する数字が更新される、上位の方針が入れ替わる。前提が動いた分のやり直しは、着手前の確認をいくら丁寧にしても消えないし、消せると思って自分の手順だけを細かくしていくと、確認の手間が増えた上に戻りの回数は変わらないという結果になりやすい。方針が変わる頻度そのものを数える話は会社の方針が変わるときの対処に、体制が変わる周期は体制が変わるのは何年ごとかに分けて書いた。
切り分けると、次の行動が変わる。着手前の未確定が多いなら、足す一手は確認の型。着手後の変更が多いなら、自分の時間がどこに消えたかを数字にして面談に持ち込む材料にする。同じ「やり直しが多い」でも、打つ手は反対側にある。
記録するのは4列
やり直しが起きた日に、その場で1行足す。
| 日付 | 工程 | 指示の出どころ | 何回目 | かけ直した時間 |
|---|---|---|---|---|
| 9/8 | 構成案 | 直属の上司 | 1回目 | 1.5h |
| 9/10 | 数値の集計 | 上司の上司 | 2回目 | 3h |
| 9/12 | 構成案 | 他部署の担当 | 3回目 | 2h |
工程の列は、自分の仕事を3〜5段に割っておくと書きやすい。構成を決める、材料を集める、形にする、確認を通す。この粒度で足りる。
合計時間はさほど効かない。見たいのは偏り。同じ工程に集まっていればその工程の入口で決まっていないことがあり、指示の出どころが行ごとに違っていれば決定の経路が1本になっておらず、2回目より後のやり直しが半分を超えるなら1回目の直しの時点で前提が確定していない、と読める。
10日から2週間で十数件貯まる。それだけあれば、どこが厚いかは平均を出さずに目で見える。
着手前に確認するのは、完成物と判断する人
着手前の未確定を減らす一手は2つある。ひとつは完成物の形を先に見せること。文章なら見出しだけ、資料なら白紙のページ構成、集計なら列の名前だけ。全部作ってから見せるより、戻ってくる量が小さい。
もうひとつは、判断する人の数と順番を先に聞くこと。「これは誰が見て決まりますか」「先に誰に見せておけばいいですか」の2問で済む。ここが曖昧なまま提出すると、1回目で直した内容が2回目の相手の基準と合わず、同じ工程を3周する。
確認したことは、口頭で終わらせずに1行返す。「構成案は見出しまでで9/9にお見せします。数値はA表を使います」くらいの短文でいい。あとで前提が動いたとき、動いたのが事実として残る。記録は責任の押しつけに使うものではない。自分の時間の行き先を追うための控え。
指示の粒度は、職場の側の条件でもある
依頼が毎回粗い、担当の境界が書かれていない、判断の基準が人によって変わる。この3つが揃っている職場では、やり直しの回数は進め方の上手さとあまり関係しなくなる。役割の境界が定義されていない状態を、研究では役割の曖昧さと呼ぶ。
どれくらい曖昧かは、指示を受けた回数のうち完成物の条件が言葉で示された回数の比で見当がつく。10件のうち2件なら、確認の一手は毎回自分から出す前提で組む。この頻度を上げる交渉のしかたはフィードバックのもらい方と1on1で上司と何を話すかにまとめた。
落ち込むのは、回数を評語に読み替えたとき
やり直しが3回続くと、3という回数が「向いていない」という評語に変わる。変換が起きた時点で、記録できるものが消える。回数、工程、出どころ。数えられる形に戻すだけで、扱えるものに戻る。
厚生労働省の令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)の個人調査では、現在の仕事で強い不安や悩み、ストレスとなっている事柄があると答えた労働者は68.3%だった。その内容(主なもの3つ以内)を見ると「仕事の量」が43.2%で最も多く、次が「仕事の失敗、責任の発生等」の36.2%、「仕事の質」が26.4%。有効回答は8,596人。失敗や責任の発生を挙げた人は3人に1人を超える。
この数字は、落ち込まなくていいという話ではない。同じ事柄が3分の1以上の人のストレス源に並んでいるという事実であって、自分の記録の代わりにはならない。使えるのは並び方だけで、「仕事の量」のほうが7ポイント近く高いということは、やり直しがきついと感じている手前で、そもそも抱えている件数が多いという別の原因が重なっている可能性を見ておいたほうがいい。
4週間の記録でできる判断
4週間ぶん貯まったら、2つの割合を出す。着手前の未確定が原因だった件数の割合と、着手後に前提が変わった件数の割合。片方に2倍以上の差がつくことが多く、その差がそのまま打つ手を決める。
前者が多ければ、着手前の確認を型にする。完成物の形を先に見せる、判断する人を先に聞く、合意を1行で返す。3つとも自分の側で始められる。
後者が多い場合は、手元の工夫では届かない。決定の経路が何本あるか、前提の変更が月に何回あるか、そのたびに何時間かけ直したか。この3つを持って面談に出すほうが早い。数字が並んでいれば、進め方の話ではなく仕事の渡され方の話として扱える。
そして、異動や転職を考える段になったとき。同じ記録が、次の職場で聞くべきことの一覧に変わる。決定者の数、依頼のときに示される条件、前提が動いたときの知らせ方。自分がどの条件だと手戻りが増えるのかを、印象抜きで、回数で言えるようになっている。





