残業時間の計算、2つの線を分けて数える

残業時間の計算は、2つの線を別々に数える作業だ。会社が決めた所定労働時間を超えた分(所定外労働時間)と、労働基準法の1日8時間・1週40時間を超えた分(法定外労働時間)。割増賃金が付くのは後者で、上限規制の月45時間も後者で数える。

所定労働時間が7時間30分の職場で9時間働いた日を考えると、残業は1時間30分。そのうち8時間までの30分は法定内残業、残りの1時間が法定外残業になる。給与明細の残業時間が自分の記憶と合わないときは、この2本の線のどちらで書かれているかを先に見たい。

同じ日の残業が、2種類に割れる

区分 範囲 割増
法定内残業 所定労働時間を超えて、1日8時間・1週40時間までの部分 法律上の割増は不要
法定外残業 1日8時間・1週40時間を超えた部分 25%以上(月60時間超は50%以上)

法定内残業に割増が付くかどうかは就業規則の決め方によるもので、法律が支払いを義務づけているのは1日8時間・1週40時間を超えた法定外の部分だけだ。

所定労働時間が8時間の職場なら、2つの線は重なる。所定が7時間や7時間30分の職場では、毎日30分から1時間ぶんの差が出続ける。

1日ぶんの計算は、引き算3つで終わる

終業時刻から始業時刻を引き、休憩時間を引く。これがその日の実労働時間で、そこから所定労働時間を引いた残りが、その日の残業時間になる。引き算の順番を変えると結果が変わるので、休憩を先に抜いてから所定を引く。

遅刻や早退をした日は、実労働時間そのものが減るので、その日の労働時間から差し引いて計算する。休憩を取れずに電話に出ていた時間、朝礼、着替えが指示されている時間は労働時間として数える余地があり、手元の記録と給与明細がずれる原因は、たいていこの3つのどこかに潜んでいる。

1分単位で数える。切り捨ては違反

日ごとの労働時間は1分単位で把握する。厚生労働省のリーフレットは、勤怠管理システムの端数処理機能で1日の時間外労働のうち15分に満たない時間を一律に切り捨てる扱いや、30分単位でしか残業申請を認めない運用を、労働基準法違反として挙げている。

例外は1か所だけ。1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数があるとき、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる処理は、事務簡便を目的としたものとして認められる。日ごとの切り捨ては駄目で、月の合計の端数だけが対象。ここを混同した運用が、15分単位の切り捨てを正当化する理屈として使われることがある。

週40時間の線は、日ごとの8時間と別に数える

1日7時間の所定で、月曜から土曜まで6日働いた週。どの日も8時間を超えていないので日ごとの計算では法定外残業が0になるが、週の合計は42時間あって40時間を2時間超えている。この2時間が法定外労働時間だ。

休日に出た週、代休を取らなかった週は、日ごとの数字を足すだけでは足りない。週単位で合計を出す手間が、どうしても1回必要になる。

月で合計すると、割増率が3段になる

労働の種類 割増率
時間外労働(月60時間以下) 25%
時間外労働(月60時間超) 50%
法定休日労働 35%
深夜労働(22:00〜5:00) 25%

月60時間を超える時間外労働を深夜の時間帯に行った場合は、深夜25%と時間外50%を足して75%。この60時間超の50%という率は2010年4月から大企業に適用されていたもので、2023年4月1日からは中小企業にも適用されている。

60時間を数えるときの注意が1つ。法定休日に行った労働時間は、月60時間の算定に含めない。法定休日以外の休日(週休2日の職場の土曜など)に働いた時間は含める。どの曜日が法定休日かは就業規則に書いてあり、1か月の起算日も同じ場所で決まる。毎月1日が起算日なら、月末の残業が翌月の60時間に繰り越されることはない。

フレックスタイム制は、清算期間で数える

フレックスタイム制では、日ごとに8時間を超えたかどうかを見ない。清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働になる。

総枠は「清算期間の暦日数 ÷ 7 × 40時間」で出す。暦日数31日の月なら177.1時間、30日なら171.4時間。10時間働いた日があっても、月の実労働時間が総枠の中なら時間外労働は発生しない。逆に、毎日8時間ぴったりでも総枠を超えれば時間外になる。

自分で数えるときの手順

最初に就業規則を見る。 所定労働時間、法定休日の曜日、1か月の起算日、法定内残業に割増を付ける規定があるか。この4つが分からないと、計算の前提が決まらない。

次に、始業・終業・休憩を毎日1分単位で記録する。ここが起点。手元に記録が無いと、明細の数字を検算する足場が作れない。

出した数字は3段で見る。線は3本。日ごとに8時間超、週ごとに40時間超、月の合計で60時間。そして月の法定外労働時間を、上限規制の月45時間と比べる(上限の仕組みは36協定とは、残業の上限を決める書面に書いた)。

毎月の残業代が固定の手当で支払われている場合は、その手当が何時間ぶんに対応しているかを先に確かめる。超えた分の計算が、そこから始まる。固定残業代とは、何を見れば分かるかで整理した。

計算した数字を、何と比べるか

自分で出した月の残業時間は、平均と比べると位置が分かる。2025年の所定外労働時間は1人あたり月9.8時間、一般労働者で13.2時間だった(残業時間の平均は月9.8時間)。

ただし平均との距離は、自分に合う時間を教えてはくれない。計算した数字を4週ぶん並べて、何時間を超えた週に翌朝の疲れが残ったか。そこまで持っていくと、1on1や面談で時間数を根拠にして話せるようになる。計算は、その材料を作る作業だ。

出典

  1. 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(厚生労働省、2019年4月施行)/法定労働時間と法定外労働時間の定め
  2. 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます(厚生労働省、2023年4月1日から中小企業に適用)
  3. 労働時間は毎日適正に把握し、それに基づいて賃金を計算し、支払うことが必要です(厚生労働省 都道府県労働局・労働基準監督署)
  4. フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き(厚生労働省、2019年4月施行の改正対応)