ITの残業時間、平均は15.8時間

情報通信業で働く人の所定外労働時間は、2025年の年平均で月15.8時間だった。16大産業を並べたときの3番目に長い位置で、調査産業計の9.8時間より6.0時間多い。厚生労働省の毎月勤労統計調査2025年分結果確報が、事業所規模5人以上の事業所について集計した1人あたりの月平均値である。

15.8時間は、全体より6.0時間長い

区分 所定外労働時間 前年比 出勤日数
情報通信業 15.8時間 0.0% 18.5日
調査産業計 9.8時間 −2.5% 17.4日

情報通信業より長いのは運輸業,郵便業の20.6時間と電気・ガス業の16.3時間だけ。16産業のなかでの位置は業種別の残業時間、最長20.6時間に一覧で並べてある。全体の9.8時間がどう作られているかは残業時間の平均は月9.8時間のほうに書いた。

前年比は0.0%。2024年も15.8時間だったということで、同じ年に調査産業計のほうは2.5%下がっているから、全体が短くなる方向へ動いたぶんだけ情報通信業との差が開いた年だった、という読み方になる。

6年ならべると、下がっていない産業だと分かる

年 情報通信業 調査産業計 差
2020年 14.8時間 9.2時間 5.6時間
2021年 15.5時間 9.7時間 5.8時間
2022年 15.7時間 10.1時間 5.6時間
2023年 15.5時間 10.0時間 5.5時間
2024年 15.8時間 10.0時間 5.8時間
2025年 15.8時間 9.8時間 6.0時間

情報通信業は2020年の14.8時間から1.0時間ふえた。2020年は感染症の影響で全体が大きく落ちた年で、調査産業計は前年比13.2%減の9.2時間まで下がっている。情報通信業の落ち込みはそれほど深くなく、2021年には15.5時間へ戻った。

そのあとの4年は15.5時間から15.8時間のあいだにおさまっていて、0.3時間の幅しか動いていない。全体が2022年の10.1時間をピークに9.8時間まで戻すあいだ、情報通信業の側はほぼ水平のまま。結果として、差は5.6時間から6.0時間へ広がった。

年ごとの振れ幅が小さいことを、量がならされて安定していると読むか、働き方の見直しが所定外労働時間という指標には現れていないと読むかは、この表の数字だけからは決められない。決められるのは、6年のあいだに大きく減った年が無かったという事実まで。そこで止める。

15.8時間はパートタイムを含んだ値

就業形態 所定外労働時間 総実労働時間 出勤日数
就業形態計 15.8時間 156.9時間 18.5日
一般労働者 16.5時間 160.5時間 18.8日
パートタイム労働者 3.0時間 89.2時間 13.7日

フルタイムで働いているなら、見るのは一般労働者の16.5時間のほうだ。就業形態計との差は0.7時間。飲食サービス業等のようにパートタイム労働者の比率が高い産業では、その人たちの短い所定外が平均を強く引き下げるので就業形態計と一般労働者の差が10時間を超えることもあり、それと比べると情報通信業の0.7時間は小さい。パートタイムの人数が少ない。

なお、パートタイム労働者の3.0時間は前年から39.9%減っている。区分ごとの人数が小さいと、こうした大きな振れが出やすい。

1日あたりに直すと51分

月の時間数は、出勤日数とセットで見ないと重さが分からない。情報通信業の15.8時間を18.5日で割ると、出勤した1日あたり0.85時間。分にすると51分。一般労働者の16.5時間を18.8日で割っても0.88時間で、53分になる。

調査産業計は9.8時間を17.4日で割って0.56時間、34分。差は17分。月で6.0時間と聞いたときの大きさと、1日にならして17分と聞いたときの大きさはかなり違って感じられるはずで、どちらが自分の実感に近いかは、残業が月末や納期前の特定の週に寄っているかどうかで変わってくる。

「IT」と情報通信業は、同じ範囲ではない

この表の産業区分は、働く人の職種ではなく、勤め先の事業所が主としている事業で決まる。日本標準産業分類の情報通信業には、ソフトウェア業や情報処理・提供サービス業のほかに、通信業、放送業、新聞・出版などの映像・音声・文字情報制作業が入る。

だから、製造業の会社の情報システム部門で開発をしている人は、この15.8時間の集計には入らない。逆に、情報通信業の会社で経理を担当している人は入る。職種としてのエンジニアの残業時間を探してこの数字にたどり着いたなら、見ているものが一段ずれている。

職業別の所定外労働時間を、毎月勤労統計調査は集計していない。同じ産業の休暇の取り方はITの有給取得率は66.9%、平均と同じにまとめた。

この数字が答えないこと

所定外労働時間は、事業所が記録して報告した時間である。記録に乗らなかった時間は、どの産業の平均にも入らない。15.8時間という値が働いた時間そのものなのか、記録の仕方をいくらか含んでいるのかは、この集計から切り分けられない。何が労働時間に数えられるかの線引きは実労働時間とは何を数えた時間かに整理してある。

平均であって、分布ではない。15.8時間の内側に、月45時間の人と月0時間の人が同時にいても矛盾しない。情報通信業で月45時間を超えた人が何割いたかは、この表からは出てこない。

事業所規模5人未満は対象外。企業規模別の内訳も、この第2表には無い。受託開発と自社サービス、元請と下請といった業態の違いも、すべて同じ15.8時間のなかでならされている。

15.8時間と、自分の先月

給与明細の時間外の欄と、先月の出勤日数を並べる。フルタイムなら16.5時間のほうを使い、自分の時間数を自分の出勤日数で割って、1日あたりの分数でそろえて比べる。それで、産業の真ん中からどちらへどれだけ離れているかが出る。

産業の平均が答えないことが、そこから先に3つ残る。残業が月末や特定の週に寄っているかどうか。頼まれた残業のうち、前日までに分かっていた割合。定時で終わった日の数。面談や面接でこのあたりを確かめる聞き方は上司のことを面接で聞く質問にまとめた。

15.8時間は、同じ産業で働く人をならした1つの値。自分の月がそこからどれだけ離れているかは、手元の記録が4週ぶん貯まったところで形になる。

出典

  1. 毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報/厚生労働省/事業所規模5人以上・産業別・就業形態別
  2. 同 第2表 月間実労働時間及び出勤日数(情報通信業15.8時間・調査産業計9.8時間)/厚生労働省/2025年
  3. 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第2表(情報通信業15.8時間)/厚生労働省/2024年
  4. 毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報 第2表(情報通信業15.5時間)/厚生労働省/2023年
  5. 毎月勤労統計調査 令和4年分結果確報 第2表(情報通信業15.7時間)/厚生労働省/2022年
  6. 毎月勤労統計調査 令和3年分結果確報 第2表(情報通信業15.5時間)/厚生労働省/2021年
  7. 毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報 第2表(情報通信業14.8時間)/厚生労働省/2020年